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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

地域により医療体制は全く異なる、外来機能分化でも「地域性を踏まえた検討」が不可欠―全自病・小熊会長

2021.10.29.(金)

外来機能報告制度を来年度(2022年度)から稼働させ、そのデータをもとに各地域で「紹介中心型の病院」(医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関)を明確化する方向で議論が進んでいる。しかし、地域によって医療提供体制は全くことなり、例えば「地域の基幹的な公立病院が、高度医療も提供しながら、同時にかかりつけ医機能を果たしている」ところもある。そうした地域では医療機関がそもそも乏しく、基幹的な公立病院を「紹介中心型」と位置付けた場合には、地域の患者が行き場を失う可能性もある点に留意が必要だ―。

全国自治体病院協議会の定例記者会見が10月21日に開催され、小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)からこういった考えが示されました。

10月21日の定例記者会見に臨んだ全国自治体病院協議会の小熊豊会長

感染症対応では「一般医療とのバランス」「人材確保」「医療機関間連携」などが極めて重要

外来医療機能分化に向けた論議が進められています。

入院医療だけではなく、外来医療においても機能分化を進め、▼病院勤務医の負担軽減▼医療の質向上―などを目指すことが重要です。このため、「まず、『かかりつけ医』を受診し、そこから『高機能の病院外来』を紹介してもらう」という患者の流れを強化することが求められています。

このためには、「高機能の外来医療を提供する病院」はどこなのか、「かかりつけ医機能を果たす医療機関」はどこなのか、といった点が患者に明らかにされていなければなりません。そこで改正医療法では、次のような仕組みが構築されました。

(A)「一般病床・療養病床を持つ医療機関」(病院・有床診療所)に外来診療に係るデータを都道府県に報告することを義務付ける【外来機能報告制度】

(B)提出された外来診療データや病院等の意向などをもとに、各地域で紹介中心型病院となる「『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化する

(C)重点外来基幹病院へは、かかりつけ医等からの紹介受診を原則とする(紹介状を持たずに受診した場合には特別負担徴収を義務化)

特別負担徴収義務を拡大していく方向そのものに異論は出ていない(医療保険部会(1)1 201126)

特別負担額を引き上げ、初・再診料相当額を保険から控除する方向が示されている(医療保険部会 201202)



外来機能報告制度の来年(2022年)4月スタートに向け、「外来機能報告等に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織)で(A)(B)の詳細を年内に固めることとなっています((C)の詳細は主に中央社会保険医療協議会で議論する)。



この点、ワーキンググループの構成員でもある小熊会長は「地域性の考慮が極めて重要である」という点をかねてから強く訴えています。

関連して今般、200床以上の自治体病院における「地域医療支援病院の指定状況」の調査結果(373病院中153病院が回答)も明らかにされ、そこからは▼70.6%が地域医療支援病院に指定され、29.4%が指定されていない▼指定されない理由としては「紹介率・逆紹介率が足りない」(82.2%)、「設備等の共同利用体制が未整備」(26.7%)、「地域医療従事者への研修実施が困難」(26.7%)などがある―との状況が浮かび上がってきました。

さらに「紹率・逆紹介率が足りない」背景を見ると、(1)紹介元・逆紹介先の医療機関が地域に少ない(56.8%)(2)患者が紹介状を持参しないケースが多い(70.3%)(3)近隣に地域医療支援病院があり、そうした役割を担っていない(29.7%)―などが多くなっています。

このうち(1)からは、地方など医療資源が潤沢でない地域において「中核的な役割を担う公立病院が、かかりつけ医機能も同時に担っている」ことを確認できます。小熊会長は、こうした病院(基幹的な役割を担い、同時にかかりつけ医機能を持つ病院)が、国に基準値に合致し、仮に「手上げ」(「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」への手上げ)を半ば強制された際には、「患者はどこの医療機関を受診すればよいか分からなくなってしまう」と危惧します。

また全自病の会員病院(公立病院)からも、例えば▼過疎地域の特殊性に配慮する必要がある▼国民・地域住民に理解を得られるような説明・広報が必要である▼受診抑制につながらないようにする必要がある―といった声も出ていることが紹介されました(妥当な仕組みであるとの声もある)。

小熊会長はワーキンググループにデータを示し、都市部と地方部の違いが大きなこと、地方部の特殊性を考慮すべきことを根気強く説いていく考えを示しています。



なお、全自病の地域ブロック会議で新型コロナウイルス感染症対策について協議し、例えば▼一般医療とコロナ感染症対応とのバランス確保▼感染症対応を行える医療従事者の確保と教育▼医療機関間連携(例えば回復患者の転院に向けた、急性期-回復期の病院間連携)▼スタッフのモチベーション確保・維持▼コロナ感染症での経験を踏まえた地域医療構想の実現―などを各地域で検討することの重要性が確認されました。地域の医療資源や感染拡大の状況は地域地域で全く異なるため、ここでも「地域での協議」が極めて重要となることが再確認されています。



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