MECP2重複症候群、線毛機能不全症候群、TRPV4異常症の指定難病追加等を正式決定、既存診断基準のアップデートも―疾病対策部会
2023.6.27.(火)
MECP2重複症候群、線毛機能不全症候群、TRPV4異常症の3疾患について、医療費助成の対象となる指定難病に追加する—。
既に指定難病となっている「遺伝性ジストニア」と「神経フェリチン症」について、含まれる疾患を一部移管し、「遺伝性ジストニア」と「脳内鉄沈着神経変性症」に整理し直す―。
既存の189疾患について、最新の研究成果などを踏まえて診断基準や病名などのアップデートを行う—。
厚生科学審議会・疾病対策部会が6月15-20日に持ち回り開催され、こうした点が了承されました。今年度(2023年度)中に、より広い難病患者に医療費助成が行われることになります。
最新の研究成果などを踏まえ、既存189疾患の診断基準・病名などをアップデート
以下の要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況(高額な医療費が継続して必要となる、就労が困難であるなど)に鑑みて、重症の場合に医療費助成が行われます。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している
「がん」など他の施策・支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しませんが、「▼髄膜▼脳▼脊髄▼脳神経▼その他の中枢神経系―に発生した腫瘍は、良性であっても『がん登録』の対象となり(がん登録推進法施行令第1条第2項)、指定難病には該当しない」「それ以外の部位に生じた腫瘍は、良性であれば『がん登録』の対象にならず、指定難病に該当する可能性がある(他の要件を満たすことが必要)」など、判断基準の明確化が随時行われてきています(関連記事はこちら)。
疾病が指定難病の要件を満たすか否かは、研究班や学会の提出した情報・推薦をもとに、専門家で構成される指定難病検討委員会で判断されます。これまでに338疾患(2015年1月実施分:110疾患、2015年7月実施分:196疾患(関連記事はこちら)、2017年4月実施分:24疾患(関連記事はこちら)、2018年4月実施分:1疾患(あわせて5疾患を他の指定難病と統合、関連記事はこちら)、2019年7月実施分:2疾患(関連記事はこちら)、2021年11月実施分:5疾患(関連記事はこちら)が指定難病に該当すると判断され、一定の重症基準を満たす患者については医療費助成が行われています(ただし1つの疾患に複数病名が含まれているケースもあり、病名ベースでは1000疾患を超過すると考えられる)。
今般、指定難病検討委員会の検討結果、それに対する国民の意見(パブリックコメント)を踏まえ、疾病対策部会において、次のような疾患の追加や診断基準等の見直しを行うことが正式決定されました。
●対象疾患の追加(厚労省サイトはこちら(一覧)とこちら(診断基準等)、関連記事はこちら)
【神経・筋疾患】(1疾患)
▽MECP2重複症候群
→乳児期早期からの筋緊張低下、重度の精神遅滞、発語発達不全、進行性痙性、反復性呼吸器感染、難治性痙攣を特徴とする
→患者数は約50人で、100%が重症度分類(Barthel Index85点以下)に該当(=医療費醸成の対象となる)
【呼吸器疾患】(1疾患)
▽線毛機能不全症候群(カルタゲナー(Kartagener)症候群を含む)
→線毛に関連する遺伝子異常で生じ、多くの症例では咳嗽を主訴とし、慢性鼻副鼻腔炎、滲出性中耳炎、気管支拡張症、不妊を発症。呼吸器感染を繰り返して、時に呼吸不全を来し、肺移植の適応となる。慢性鼻副鼻腔炎、気管支拡張症、内臓逆位の3徴候とする Kartagener 症候群を含む
→患者数は約5000人未満で、76%が重症度分類(肺機能に関する重症度分類III以上)に該当(=医療費助成の対象となる)
【骨・関節疾患】(1疾患)
▽TRPV4異常症
→カルシウムイオン透過性チャンネルであるTRPV4の遺伝子異常によって発症し、(1)変容性骨異形成症(2)脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型(3)脊椎骨幹端異形成症 Kozlowski型 (4)短体幹症(5)短指を伴う家族性指関節症などが含まれふ。いずれの疾患でも扁平椎、関節の腫大、拘縮、低身長などを共通の表現型とする
→患者数は100人未満で、60%が重症度分類(modified Rankin Scale(mRS)3点以上)に該当(=医療費助成の対象となる)
●既存の指定難病の対象範囲変更・告示病名変更(厚労省サイトはこちら(一覧)とこちら(告示病名変更)とこちら(診断基準等)、関連記事はこちら)
▽告示番号120の「遺伝性ジストニア」について、対象疾患の範囲を「「DYTシリーズ」に限定する
▽告示番号120の「遺伝性ジストニア」のうち「金属代謝に関連するNBIAシリーズ」を、後述の告示番号121の「神経フェリチン症」に含め、疾病名を「脳内鉄沈着神経変性症」に改める
●既存の指定難病の診断基準などに関するアップデート(厚労省サイトはこちら(対象指定難病一覧)とこちら(告示病名変更)とこちら(新たな診断基準等)、関連記事はこちら)
▽現「成人スチル病」(告示番号54)→変更後「成人発症スチル病」(国際的にAdult-onset Still’s diseaseが、我が国でも一般的に成人発症スチル病が使用されていることを踏まえた見直し)
▽現「禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症」(告示番号123)→変更後「HTRA1関連脳小血管病」(近年の研究で「常染色体顕性遺伝(優性遺伝)症例が一定数存在する」「全症例でHTRA1遺伝子異常が存在し、原因となっている」ことや、国際的に使用される名称であることを踏まえた見直し)
▽現「ペリー症候群」(告示番号126)→変更後「ペリー病」(近年の研究で「TDP-43タンパク質の誤局在化・凝集化」が病態であることが解明され、国際的に「ペリー病」の名称が使用されるようになったことを踏まえた見直し)
▽現「マルファン症候群」(告示番号167)→変更後「マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群」(ロイス・ディーツ症候群は「マルファン症候群の一部」と扱われてきたが、原因遺伝子や臨床経過の点で特徴的であることが判明し、併記することが一般的なことを踏まえた見直し)
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