病院経営支援への「重点支援地方交付金」積極的活用を都道府県に強く訴える、看護師確保に向けた総合対策が必要—日病・相澤会長
2024.12.17.(火)
病院経営支援に「重点支援地方交付金」が活用されるが、その取り扱いには都道府県で差がある。日病本部・支部・会員病院から各都道府県に対して「病院経営の窮状」を数値を用いて示し、「経営支援の必要性」を強く訴えていく—。
病院における「看護師確保」が非常に困難になっており、「教育体制の充実」「働いてもらいかた改革」「医療DX」などを推進していく必要がある旨を提言する—。
日本病院会の相澤孝夫会長が12月17日に定例記者会見を開き、こうした考えを述べました。また、医師偏在対策については、改めて「地域でどの程度の医師が必要なのか」を正確に把握する必要があるとの個人的見解も明らかにしています。
「医師偏在対策」に向け、改めて「地域における医師の必要数」などの正確な把握を
Gem Medで繰り返し報じているとおり「病院経営の厳しさ」が増しています。日病・全日本病院協会・日本医療法人協会による病院経営定期調査では「医業収益は増加しているものの、費用増(材料費など)がそれを上回り、さらに補助金減なども手伝って、赤字病院が大きく増加し、赤字幅も大きくなっている」状況が明らかにされました。
また全国自治体病院協議会の経営状況調査では、2023年度には「10.3%の赤字」であったところ、2024年度には「14.5%の赤字」に悪化し、危機的な状況にあることが示されています。
こうした状況を放置すれば、医療機関の倒産・閉院が相次ぎ、地域の医療提供体制が崩壊してしまいます。そこで石破茂内閣は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策—全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす—」を閣議決定し、その中では「重点支援地方交付金を医療機関経営支援」(物価高騰等対策)に活用する考えが明確にされています(関連記事はこちら)。
この点について日病幹部の間では、「交付金の取り扱いが都道府県によって異なることはコロナ感染症での経験で明らかになった」とし、▼日本病院会として各都道府県に「病院経営支援を行ってほしい」と要望していく▼日本病院会の都道府県支部や会員病院からも、所属地の都道府県に対し「病院経営支援を行ってほしい」と要望してもらう—方針を固めています。
さらに相澤会長は「単なる要望にとどまらず、具体的な数値をもって病院経営の窮状を訴え、支援の必要性を論理的に示していく」ことも強調しています。
(病院経営定期調査)
▽医業利益率は、2023年6月:7.5%の赤字→2024年6月:9.8%の赤字へと悪化している(
▽経常利益率は、2022年度は4.9%の黒字であったが、23年度には1.3%の赤字に転落し、さらに2023年6月:2.3%の赤字→2024年6月:5.5%の赤字へと悪化しちえる
また、日病では、医師に限らず「看護師の確保が非常に難しい」状況にある点を踏まえ、「今後の看護師確保」に向けて、次のような内容を盛り込んだ提言も取りまとめました。
▽地域(とりわけ地方)では看護師養成校が定員割れとなっている。少子化が進む中では、この傾向はますます続くため、看護師・看護助手を含めて「外国人」にも助力をお願いするなど、柔軟な対応方針を国が明確に示すべきである
▽病院における「教育」体制の充実を図る
▽次のような「働いてもらい方」改革を図る必要がある
・例えば「日勤の看護師と夜勤の看護師でユニフォームの色を変える」ことにより、交代時に医師が「退勤する日勤看護師でなく、夜勤の看護師に適切に指示を出せる」環境を整え、時間外労働を削減する
・医療DXを推進し、看護師が「看護師でなければ実施できない業務」に集中する環境を整える
▽このまま看護師をはじめとする医療従事者の確保ができない状況が続けば、これまでのような医療提供体制が継続できなくなることを、広く国民にも理解してもらう(丁寧な情報提供を行っていく)
相澤会長は、こうした内容の提言を厚労省にも示していく考えです。
なお、「新たな地域医療構想等に関する検討会」で大筋了承された「医師偏在対策」に関して相澤会長は、「個人的な見解である」と前置きしたうえで、▼「地方にいってほしい」と要望しても、度重なる説得をして、ようやく1-2割の医師が応じてくれるのが実態である。そうした点を考慮すれば、経済的インセンティブや支え合いの仕組みなどは十分とは言えず、60点程度ではないか(赤点ではないが、高評価は難しい)▼医学部教育の時点から「地域医療に従事することの重要性」を説いていく必要がある▼様々な手段が講じられている点は好ましいが、改めて「どの地域にどの程度の医師が必要なのか、不足しているのか」を正確に把握する方法を検討するべきではないか。日病幹部の間でも、現在の「人口10万対医師数をベースにしている医師偏在指標」に対して、「肌感覚との乖離が大きい」との声が出ている。医療提供体制改革と医師確保とはセットで考えていくことが必要である—などの考えが示されています。
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