有床診の減少スピードさらに加速、2019年9月にも9万床を割る可能性―医療施設動態調査(2019年3月)
2019.6.4.(火)
有床診療所の減少スピードは、昨年(2018年)9-11月分のデータを見る限り「鈍化」が伺えたが、2018年12月-今年(2019年)3月分のデータを見ると、間違いなく「減少スピードが再びアップ」している—。
こうした状況が、厚生労働省が6月3日に公表した医療施設動態調査(2019年3月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の施設数減少ペース早まり、2019年末には6500施設を割る見込み
厚労省は、毎月末の病院・診療所の施設数・病床数を「医療施設動態調査」として集計し、公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。
今年(2019年)3月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万9049施設で、前月末から123施設増加しました。このうち病院の施設数は、前月末から11施設減少し、8342施設となりました。病院の種類別に見てみると、▼一般病院:7287施設(前月から12施設減)▼精神科病院:1055施設(同1施設増)—などとなっています。
一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3703施設で前月末から12施設減少、「地域医療支援病院」は575施設で前月末からの1施設増加しています。
一方、医科診療所は10万2202施設で、前月末から87施設増加しており、無床の医科診療所の増加(前月末から119施設増加)がその要因です。ただし、有床診療所は、前月末から32施設減少し、6774施設となりました。
有床診療所の施設数は、2年前(2017年3月末)には7464(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年3月末)には7145(厚労省のサイトはこちら)でしたので、2017年3月末から2018年3月末までの1年間で319施設減少、さらに今年(2019年)3月末までの1年間で371施設減少しています。有床診療所の施設数は、2018年3月末以降、次のように推移しています。
▼2018年3月末:7145施設
↓(50施設減)
▼2018年4月末:7095施設
↓(21施設減)
▼2018年5月末:7074施設
↓(78施設減、再集計後)
▼2018年6月末:6996施設(再集計後)
↓(28施設減)
▼2018年7月末:6968施設
↓(20施設減)
▼2018年8月末:6948施設
↓(14施設減)
▼2018年9月末:6934施設
↓(25施設減)
▼2018年10月末:6909施設
↓(16施設減)
▼2018年11月末:6893施設
↓(26施設減)
▼2018年12月末:6867施設
↓(31施設減)
▼2019年1月末:6836施設
↓(30施設減)
▼2019年2月末:6806施設
↓(32施設減)
▼2019年3月末:6774施設
この1年間は、1か月当たり「31施設弱」というペースで減少が続いています。2018年9-11月では減少スピードが落ちたかと思われましたが、2018年11月以降、やはり再び減少スピードが上がってきています。このペースが続くと仮定すれば、今年(2019年)12月末には6500施設を割る計算です(先月までより1か月減少ペースが速まっている)。
有床診のベッド数減少ペースも早まり、2019年9月には9万床を切る見込み
次に医療施設の病床数(ベッド数)に目を移してみましょう。
医療施設全体のベッド数は、今年(2019年)3月末には163万1746床で、前月末から2362床の大幅減少となりました。うち病院の病床数は153万9089床で、前月末から1892床の大幅減となっています。
医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:89万287床(前月末から113床増)▼療養病床:31万4087床(同1491床減)▼精神病床:32万8166床(同432床減)—などとなりました。
療養病床の大幅減が続いており、2018年度の介護報酬改定で単位数や構造設備基準・人員配置基準などが設けられた「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換なども関係していると考えられますが、今年(2019年)3月末までに医療療養から介護医療院へ転換した病床数(病院)は1555床にとどまっており、詳細な分析が待たれます(関連記事はこちら)。
一方、有床診療所の病床数は前月末から470床減少し、9万2599床となりました。2年前(2017年3月末)には10万1362床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年3月末)には9万7514床(厚労省のサイトはこちら)でしたので、2017年3月末から2018年3月末までの1年間で3848床減少、さらに今年(2019年)3月末までの1年間で4915床減少しています。2018年3月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2018年3月末:9万7514床
↓(658床減)
▼2018年4月末:9万6856床
↓(276床減)
▼2018年5月末:9万6580床
↓(969床減、再集計後)
▼2018年6月末:9万5611床(再集計後)
↓(296床減)
▼2018年7月末:9万5315床
↓(286床減)
▼2018年8月末:9万5029床
↓(176床減)
▼2018年9月末:9万4853床
↓(352床減)
▼2018年10月末:9万4501床
↓(231床減)
▼2018年11月末:9万4270床
↓(374床減)
▼2018年12月末:9万3896床
↓(379床減)
▼2019年1月末:9万3517床
↓(448床減)
▼2019年2月末:9万3069床
↓(470床減)
▼2019年3月末:9万2599床
この1年間では、1か月当たり410床弱のペースで減少が続いており、やはり減少ペースは再びアップしていると考えられます。このペースが継続すると仮定すれば、今年(2019年)9月末には9万床を切ってしまう計算です(先月までと比べて1か月早まっている)。
厚労省では、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の大きく2類型に分け、後者の「地域包括ケア型」について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」という課題に直面していることを重視しています。
2018年度の診療報酬改定・介護報酬改定では、この課題を解決し有床診の経営を下支えするために、次のような見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
▼診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診療所では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに、要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
▼介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているとみなす
2018年9-11月分のデータからは、2018年度改定の効果が現れ、有床診の減少に「若干のブレーキ」がかかったようでしたが(関連記事はこちらとこちらとこちら)、2018年12月-2019年3月分データでは「ブレーキが外れ、さらにアクセルが踏まれた」ようにも見えます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。さらに注視を続け、2020年度の次期診療報酬改定に向けて「2018年度診療報酬改定・介護報酬改定の効果」を詳しく分析すること必要があります。
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