有床診減少スピードは確実に鈍化、2018年度改定の効果か―医療施設動態調査(2018年11月)
2019.1.31.(木)
有床診療所の減少スピードは、昨年(2018年)9月分・10月分・11月分のデータを見る限り、「鈍化」が伺える。減少ペースが維持されると仮定した場合、ベッド数が9万床を割る時期(今年(2019年)12月末)、施設数が6500施設を割る時期(来年(2020年)1月末)は、前々月、前月から1か月ずつ遅くなっている—。
こうした状況が、厚生労働省が1月30日に公表した医療施設動態調査(2018年11月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の1か月当たりの施設数減少ペースはダウン
厚生労働省は、毎月末の病院・診療所数、ベッド数を「医療施設動態調査」として集計・公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。
昨年(2018年)11月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万9158施設で、前月末から16施設増加しています。うち病院の施設数は、前月末から増減なく8365施設となりました。病院の種類別に見てみると、▼一般病院:7310施設(前月から2施設増)▼精神科病院:1055施設(同2施設減)—などとなりました。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3728施設で前月末から1施設減少、「地域医療支援病院」は571施設で前月末から変わりありません。
一方、医科診療所は10万2196施設で、前月末から33施設増加しています。ただし、このうち有床診療所は、前月から16施設減少し、6893施設となりました。
有床診療所は、2年前(2016年11月末)には7575施設(厚労省のサイトは(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年11月末)には7236施設(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年11月末から17年11月末までの1年間で339施設、さらに昨年(2018年)11月末までの1年間で343施設減少しています。有床診療所の施設数は、2017年11月末以降、次のように推移しています。
▼2017年11月末:7236施設
↓(18施設減)
▼2017年12月末:7218施設
↓(24施設減)
▼2018年1月末:7194施設
↓(28施設減)
▼2018年2月末:7166施設
↓(21施設減)
▼2018年3月末:7145施設
↓(50施設減)
▼2018年4月末:7095施設
↓(21施設減)
▼2018年5月末:7074施設
↓(78施設減、再集計後)
▼2018年6月末:6996施設(再集計後)
↓(28施設減)
▼2018年7月末:6968施設
↓(20施設減)
▼2018年8月末:6948施設
↓(14施設減)
▼2018年9月末:6934施設
↓(25施設減)
▼2018年10月末:6909施設
↓(16施設減)
▼2018年11月末:6893施設
この1年間は、1か月当たり28施設強のペースで減少が続いており、減少スピードはやはり、少し落ちているようです。仮のこのペースが続くとすれば、6500施設を割るのは、来年(2020年)1月末となる計算です(先月までよりもさらに1か月延びた)。
有床診のベッド数減少スピードも確実に鈍化
次に医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。
医療施設全体のベッド数は、昨年(2018年)11月末には163万8533床で、前月末から1161床の大幅減となりました。このうち病院の病床数は154万4202床で、前月末から930床の大幅減少となっています。病床種類別に見てみると、▼一般病床:89万1092床(前月末から317床増)▼療養病床:31万7672床(同931床減)▼精神病床:32万8792床(同318床減)—などという状況です。療養病床の大幅減が続く背景には、2018年度から新設された「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換などが大きく関係していると考えられるでしょう。
また、有床診療所の病床数は前月末から231床減少し、9万4270床となりました。2年前(2016年11月末)には10万2737床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年11月末)には9万8537床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年11月末から2017年11月末までの1年間で4200床、さらに昨年(2018年)11月末までの1年間で4267床減少しています。2017年11月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2017年11月末:9万8537床
↓(149床減)
▼2017年12月末:9万8388床
↓(277床減)
▼2018年1月末:9万8111床
↓(380床減)
▼2018年2月末:9万7731床
↓(217床減)
▼2018年3月末:9万7514床
↓(658床減)
▼2018年4月末:9万6856床
↓(276床減)
▼2018年5月末:9万6580床
↓(969床減、再集計後)
▼2018年6月末:9万5611床(再集計後)
↓(296床減)
▼2018年7月末:9万5315床
↓(286床減)
▼2018年8月末:9万5029床
↓(176床減)
▼2018年9月末:9万4853床
↓(352床減)
▼2018年10月末:9万4501床
↓(231床減)
▼2018年11月末:9万4270床
この1年間で、1か月当たり355床強のペースで減少が続いており、やはり減少ペースは落ちていると考えられます。仮にこのペースが継続したと考えれば、9万床を切るのは今年(2019年)12月末となりそうです(先月に比べて、やはり1か月延びている)。
厚労省は、有床診療所を大きく(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、とくに(2)の「地域包括ケア型」については「過疎地などで入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」という課題に直面していることを重視。2018年度の診療報酬・介護報酬改定では、(2)地域包括ケア型・有床診の課題を解決し、経営を下支えするために、次のようの見直しが行われました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▽診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診療所では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに、要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
▽介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているとみなす
2018年9月分・10月分・11月分のデータからは、有床診の減少に「若干のブレーキ」がかかっていると考えられます。さらに注視を続け、「2018年度診療報酬・介護報酬の効果」を見極めていく必要があるでしょう。
なお、有床診の維持が難しい理由の1つに、「後継者不足」問題があります。この点、報酬改定での直接対応は困難であり、別の角度(承継税制など)からのさらなる分析と対応策の構築が必要になってきます。
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