有床診、2018年8月末で6948施設に、19年10月には6500施設割れの可能性も―医療施設動態調査(2018年8月)
2018.12.4.(火)
有床診療所の減少が止まらず、今年(2018年)7月末から8月末にかけて20施設・286床減少し、6948施設・9万5029床となった。現在の減少ペースが続けば、来年(2019年)9月にはベッド数が9万床を割り、翌10月には施設数が6500施設を割ってしまう計算となる—。
こうした状況が、厚生労働省が11月30日に公表した医療施設動態調査(2018年8月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診、2018年8月末には6948施設に、2019年10月には6500施設を割る可能性も
厚生労働省は、毎月末の病院・診療所数を「医療施設動態調査」として集計・公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら(ただし再集計前の数値で記事を作成)、さらにその前の月末の状況はこちら(同))。
今年(2018年)8月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万8977施設で、前月末から76施設増加しています。病院の施設数は、前月末から2施設減少し、8376施設となりました。病院の種類別に見ると、▼一般病院:7318施設(前月から4施設減)▼精神科病院:1058施設(同2施設増加)—などとなりました。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3742施設で前月末から4施設減少、「地域医療支援病院」は568施設で前月末から変わっていません。
一方、医科診療所は10万2011施設で、前月から109施設の大幅増となりました。ただし、このうち有床診療所は、前月から20施設減少し、6948施設となりました。また歯科診療所も前月から31施設増加し、一方で無床の医科診療所は前月から129施設も増加しています。
有床診療所は、2年前(2016年8月末)には7656施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年8月末)には7342施設(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年8月末から17年8月末までの1年間で314施設、さらに今年(2018年)8月末までの1年間で394施設減少しています。有床診療所の施設数は、2017年8月末以降、次のように推移しています。
▼2017年8月末:7342施設
↓(25施設減)
▼2017年9月末:7317施設
↓(56施設減)
▼2017年10月末:7261施設
↓(25施設減)
▼2017年11月末:7236施設
↓(18施設減)
▼2017年12月末:7218施設
↓(24施設減)
▼2018年1月末:7194施設
↓(28施設減)
▼2018年2月末:7166施設
↓(21施設減)
▼2018年3月末:7145施設
↓(50施設減)
▼2018年4月末:7095施設
↓(21施設減)
▼2018年5月末:7074施設
↓(78施設減、再集計後)
▼2018年6月末:6996施設(再集計後)
↓(28施設減)
▼2018年7月末:6968施設
↓(20施設減)
▼2018年8月末:6948施設
再集計を行っているため中間の数値には若干の不安もありますが、この1年間は、1か月当たり33施設弱のペースで減少が続いています。仮のこのペースが続くとすれば、来年(2019年)10月には6500施設を割ってしまう計算です。
有床診のベッド数、このままでのペースでは2019年9月に9万床割れも
次に医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。
医療施設全体のベッド数は、今年(2018年)8月末には164万3084床で、前月末から1916床の大幅減となりました。うち病院の病床数は154万7994床で、前月末から1630床の大幅減少となっています。病床種類別に見ると、▼一般病床:89万1245床(前月末から344床減)▼療養病床:32万182床(同1327床減)▼精神病床:32万9909床(同47床増)—などという状況です。療養病床減少の背景には、2018年度から新設された「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換なども関係していると考えられます。
また、有床診療所の病床数は前月末から286床減少し、9万5029床となりました。2年前(2016年8月末)には10万3786床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年8月末)には9万9737床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年8月末から2017年8月末までの1年間で4049床、さらに今年(2018年)8月末までの1年間で4708床減少しています。2017年8月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2017年8月末:9万9737床
↓(206床減)
▼2017年9月末:9万9531床
↓(688床減)
▼2017年10月末:9万8843床
↓(306床減)
▼2017年11月末:9万8537床
↓(149床減)
▼2017年12月末:9万8388床
↓(277床減)
▼2018年1月末:9万8111床
↓(380床減)
▼2018年2月末:9万7731床
↓(217床減)
▼2018年3月末:9万7514床
↓(658床減)
▼2018年4月末:9万6856床
↓(276床減)
▼2018年5月末:9万6580床
↓(969床減、再集計後)
▼2018年6月末:9万5611床(再集計後)
↓(296床減)
▼2018年7月末:9万5315床
↓(286床減)
▼2018年8月末:9万5029床
やはり中間の数字は再集計されているため不安がありますが、この1年間で、1か月当たり392床強のペースで減少が続いています。仮にこのペースが継続したと考えれば、来年(2019年)9月末には9万床を割ってしまう計算です。
厚労省は、有床診療所を大きく(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、とくに(2)の「地域包括ケア型」については「過疎地などで入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」という課題に直面していることを重く見ています。
このため2018年度の診療報酬・介護報酬改定では、(2)地域包括ケア型・有床診の課題を解決し、経営を下支えするために、次のようの見直しが行われました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▽診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診療所では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに、要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
▽介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているとみなす
今般のデータからも、こうした見直しの効果はまだ現れていないようです。2020年度の次期改定でも一定の手当てが必要になってくると考えられます。
なお、有床診の維持が難しいもう一つの理由として、「後継者不足」問題があります。この点については、報酬改定での対応が難しく、別の角度(承継税制など)からのさらなる分析と対応策の構築が必要になってくるでしょう。
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