有床診療所の減少が加速、病床数は9万8843床に―医療施設動態調査(2017年10月)
2017.12.26.(火)
今年(2017年)9月末から10月末にかけて、病院の一般病床数は44床の微減、療養病床では32床の微減となった。また有床診療所の減少が加速して、56施設・688床と大幅に減少し、7261施設・9万8843床となった―。
このような状況が、厚生労働省が12月26日に公表した医療施設動態調査(2017年10月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の施設数が大幅減、1年待たずに7000施設を割る可能性も
厚生労働省は、毎月末における全国の病院・診療所数の増減を「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。
今年(2017年)10月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万9301施設で、前月末から22施設減少しました。このうち病院の施設数は、前月末よりも1施設少ない8414施設で、種類別に見ると、▼一般病院が7356施設(前月比1施設増)▼精神科病院が1058施設(同2施設減)―という状況です。一般病院のうち、「療養病床を有する病院」は3793施設で、前月末から2施設減少。一方、「地域医療支援病院」は556施設(同1施設増)で、全病院の6.6%を占めています。
一方、診療所(医科の一般診療所)は10万1969施設(前月比7施設減)で、92.9%(9万4708施設)を無床診療所が占めています。有床診療所は7261施設で、前月末から56施設と大きく減少しました。
2年前(2015年10月末)には7927施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2016年10月末)には7605施設(厚労省のサイトはこちら)だったため、一昨年(2015年)10月末から昨年(16年)10月末までの1年間で322施設、さらに今年(2017年)10月末までの1年間で344施設減少しています。有床診療所の施設数は、昨年(2016年)10月末以降、次のように推移しています。
▼2016年10月末:7605施設
↓(30施設減)
▼2016年11月末:7575施設
↓(25施設減)
▼2016年12月末:7550施設
↓(27施設減)
▼2017年1月末:7523施設
↓(38施設減)
▼2017年2月末:7485施設
↓(21施設減)
▼2017年3月末:7464施設
↓(38施設減)
▼2017年4月末:7426施設
↓(29施設減)
▼2017年5月末:7397施設
↓(17施設減)
▼2017年6月末:7380施設
↓(17施設減)
▼2017年7月末:7363施設
↓(21施設減)
▼2017年8月末:7342施設
↓(25施設減)
▼2017年9月末:7317施設
↓(56施設減)
▼2017年10月末:7261施設
この1年間は、月17-38施設のペースで減少が続いていましたが、今年(2017年)9月末から10月末にかけて、減少ペースが加速してしまいました。メディ・ウォッチでは、有床診療所の減少ペースが続けば、来年(2018年)10月に7000施設を割る計算だとお伝えしたところですが、急激なペースで7000施設を下回ってしまうのか、それとも今年(2017年)9月末から10月末にかけての減少幅が特別に大きかっただけなのかが注目されます。
有床診療所は病床数も大幅減、急速な減少ペースが今後も続くか要注目
次に、医療施設の病床数を見ると、今年(2017年)10月末で計165万5538床あり、前月末と比べて1370床減っていました。このうち、病院の病床数は155万6631床(全病床の94.0%)で、前月末から681床減少しています。病床種類別に見ると、▼一般病床は89万1300床(前月比44床減)▼療養病床は32万6179床(同32床減)▼精神病床は33万2044床(同605床減)—などという状況です。
▼2016年10月末:10万3104床
↓(367床減)
▼2016年11月末:10万2737床
↓(287床減)
▼2016年12月末:10万2450床
↓(305床減)
▼2017年1月末:10万2145床
↓(448床減)
▼2017年2月末:10万1697床
↓(335床減)
▼2017年3月末:10万1362床
↓(489床減)
▼2017年4月末:10万873床
↓(407床減)
▼2017年5月末:10万466床
↓(226床減)
▼2017年6月末:10万240床
↓(221床減)
▼2017年7月末:10万19床
↓(282床減)
▼2017年8月末:9万9737床
↓(282床減)
▼2017年8月末:9万9737床
↓(206床減)
▼2017年9月末:9万9531床
↓(688床減)
▼2017年10月末:9万8843床
今年(2017年)10月末までの1か月間では、施設数と同様に病床数も、これまで以上に大きく減少しています。11月以降もこのペースが続くのか、医療施設動態調査の続報が待たれます。
有床診療所の減少が続く要因の1つは、厳しい経営環境だと言われ、特に、入院料が主な収入源である「主に内科や外科を標榜する診療所」では、高水準の病床稼働率を維持できない限り、安定的な経営が難しいと考えられます。そこで、来年度(2018年度)の診療報酬・介護報酬の同時改定では、空床を利用して介護ニーズにも対応する「地域包括ケアモデルの有床診療所」への転換が後押しされる見通しです。
まず介護報酬では、▼食堂を持たない有床診療所でも、短期入所療養介護事業所の指定を受けられるように要件を緩和する▼利用者専用の病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしていると見なす―など、有床診療所が各サービスに新規参入する際のハードルを低く設定する方向で、社会保障審議会・介護給付費分科会での審議が進められています(関連記事はこちら)。また、介護サービスに参入する有床診療所には、診療報酬によるインセンティブが与えられる見通しです(関連記事はこちら)。
このように、内科などを標榜する有床診療所には、地域包括ケアシステムの中で重要な役割を果たすことが期待されています。一方、眼科や耳鼻咽喉科を標榜する有床診療所も、「病院よりも少ない人員体制で、手術等の専門医療を効率的に提供する」施設だと考えられます。来年度(2018年度)の診療報酬・介護報酬の同時改定後、有床診療所の無床化に歯止めがかかるかどうかも注目されます。
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