有床診、実は2018年6月末で7000施設を割っていた―医療施設動態調査(2018年7月)
2018.11.22.(木)
全国の医療施設の状況を再整理したところ、実は、「今年(2018年)6月末に、すでに有床診療所は7000施設を割っていた」—。
こうした状況が、厚生労働省が11月20日に公表した医療施設動態調査(2018年7月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。2017年の「医療施設(静態・動態)調査」の取りまとめに伴って、前月末(2018年6月末)の数値が再集計されています。
有床診、2018年7月末には6968施設に
厚生労働省は、毎月末の病院・診療所数を「医療施設動態調査」として集計・公表しています(前月末の状況はこちら(ただし再集計前の数値で記事を作成)、前々月末の状況はこちら(同)、さらにその前の月末の状況はこちら(同))。
今年(2018年)7月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万8901施設で、前月末から3施設増加しています。病院の施設数は、前月末から1施設減少し、8378施設になりました。病院の種類別に見ると、▼一般病院:7322施設(前月から1施設減)▼精神科病院:1056施設(同増減なし)—などとなりました。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3747施設で前月末から4施設減少、「地域医療支援病院」は568施設で前月末から1施設増加しています。
一方、医科診療所は10万1902施設で、前月から12施設増加しました。ただし、このうち有床診療所は、前月から28施設減少し、6968施設となりました。再集計の結果、すでに「今年(2018年)6月」時点で7000施設を割っていたことが明らかとなっています。
有床診療所は、2年前(2016年7月末)には7671施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年7月末)には7363施設(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年7月末から17年7月末までの1年間で308施設、さらに今年(2018年)7月末までの1年間で395施設減少しています。有床診療所の施設数は、2017年7月末以降、次のように推移しています。
▼2017年7月末:7363施設
↓(21施設減)
▼2017年8月末:7342施設
↓(25施設減)
▼2017年9月末:7317施設
↓(56施設減)
▼2017年10月末:7261施設
↓(25施設減)
▼2017年11月末:7236施設
↓(18施設減)
▼2017年12月末:7218施設
↓(24施設減)
▼2018年1月末:7194施設
↓(28施設減)
▼2018年2月末:7166施設
↓(21施設減)
▼2018年3月末:7145施設
↓(50施設減)
▼2018年4月末:7095施設
↓(21施設減)
▼2018年5月末:7074施設
↓(78施設減、再集計後)
▼2017年6月末:6996施設(再集計後)
↓(28施設減)
▼2017年7月末:6968施設
再集計を行っているため中間の数値には若干の不安もありますが、この1年間は、1か月当たり33施設強のペースで減少が続いています。すでに「7000施設を割っていた」には、驚きを禁じえません。
有床診のベッド数減少ペースがアップ、2019年9月末には9万床を切る可能性
次に医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。
医療施設全体のベッド数は、今年(2018年)7月末には164万5000床で、前月末から1499床の大幅減となりました。うち病院の病床数は154万9624床で、前月末から1203床の減少となっています。病床種類別に見ると、▼一般病床:89万1589床(前月末から276床増)▼療養病床:32万1509床(同1272床減)▼精神病床:32万9862床(同187床減)—などという状況です。療養病床減少の背景には、2018年度から新設された「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換なども関係していると考えられます。
また、有床診療所の病床数は前月末から296床も減少し、9万5315床となりました。2年前(2016年7月末)には10万4015床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年7月末)には10万19床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年7月末から2017年7月末までの1年間で3996床、さらに今年(2018年)7月末までの1年間で4704床減少しています。2017年7月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2017年7月末:10万19床
↓(282床減)
▼2017年8月末:9万9737床
↓(206床減)
▼2017年9月末:9万9531床
↓(688床減)
▼2017年10月末:9万8843床
↓(306床減)
▼2017年11月末:9万8537床
↓(149床減)
▼2017年12月末:9万8388床
↓(277床減)
▼2018年1月末:9万8111床
↓(380床減)
▼2018年2月末:9万7731床
↓(217床減)
▼2018年3月末:9万7514床
↓(658床減)
▼2018年4月末:9万6856床
↓(276床減)
▼2018年5月末:9万6580床
↓(969床減、再集計後)
▼2017年6月末:9万5611床(再集計後)
↓(296床減)
▼2017年7月末:9万5315床
やはり中間の数字は再集計されているため不安がありますが、この1年間で、1か月当たり392床のペースで減少が続いています。仮にこのペースが継続したと考えれば、来年(2019年)9月末には9万床を割る計算です。減少ペースが速まっていることから、さらに早期に9万床を割る可能性もあるでしょう。
厚労省は、有床診療所を大きく(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者(2)については「過疎地などで入院医療の重要な支え手であるものの、経営が厳しく、存続が困難」という課題に直面していることを重く見ています。
このため2018年度の診療報酬・介護報酬改定では、(2)地域包括ケア型・有床診の課題を解決し、経営を下支えするために、次のようの見直しが行われました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▽診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診療所では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに、要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
▽介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているとみなす
今般のデータからも、こうした見直しの効果は現れていないように思われます。今後の動向を注意深く見守る必要があるでしょう。
なお、有床診の維持が難しいもう一つの理由として、「後継者」問題があり、この点については別の角度からの分析と対応策の構築が必要になってきます。
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