有床診の減少スピードがアップ、7043床・9万6134床に―医療施設動態調査(2018年6月)
2018.9.26.(水)
今年(2018年)5月末から6月末にかけて、有床診療所は31施設・446床減少し7043施設・9万6134床となった。すでに現時点で7000施設を割っている可能性が高い。経営難などで閉院をしたのか、介護医療院への転換などを行ったのか、など、詳細な分析が必要である―。
こうした状況が、厚生労働省が9月21日に公表した医療施設動態調査(2018年6月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の減少続く、8月末で7000施設を割っている可能性が高い
厚生労働省は、毎月末の病院・診療所数を「医療施設動態調査」として集計・公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。
今年(2018年)6月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万9294施設で、前月末から85施設増加しています。その要因は、主に無床の医科診療所の増加によるところが大きくなっています。
病院の施設数は、前月末と変わりなく8378施設。病院の種類別に見ると、▼一般病院:7322施設(前月から1施設減)▼精神科病院:1056施設(同1施設増)—などとなりました。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3761施設で、前月末から4施設減少、「地域医療支援病院」は567施設で前月末から1施設増加しています。
一方、医科診療所は10万2129施設で、前月から72施設の増加となりました。ただし、このうち有床診療所は、前月から31施設減少し、7043施設となりました。
有床診療所は、2年前(2016年6月末)には7698施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年6月末)には7380施設(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年6月末から17年6月末までの1年間で318施設、さらに今年(2018年)6月末までの1年間で337施設減少しています。有床診療所の施設数は、2017年6月末以降、次のように推移しています。
▼2017年6月末:7380施設
↓(17施設減)
▼2017年7月末:7363施設
↓(21施設減)
▼2017年8月末:7342施設
↓(25施設減)
▼2017年9月末:7317施設
↓(56施設減)
▼2017年10月末:7261施設
↓(25施設減)
▼2017年11月末:7236施設
↓(18施設減)
▼2017年12月末:7218施設
↓(24施設減)
▼2018年1月末:7194施設
↓(28施設減)
▼2018年2月末:7166施設
↓(21施設減)
▼2018年3月末:7145施設
↓(50施設減)
▼2018年4月末:7095施設
↓(21施設減)
▼2018年5月末:7074施設
↓(31施設減)
▼2017年6月末:7043施設
この1年間は、1か月当たり28施設強のペースで減少が続いています。このペースが続くと仮定すれば、今年(2018年)8月末には7000施設を切る計算です。本稿を執筆している現時点で7000施設を割っている可能性が高いと考えられます。
有床診のベッド数減少ペースがアップ、2019年末には9万床を切る可能性
次に医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。
医療施設全体のベッド数は、今年(2018年)6月末には164万7774床で、前月末から883床の大幅減となりました。うち病院の病床数は155万1582床で、前月末から434床の減少となっています。病床種類別に見ると、▼一般病床:89万1213床(前月末から221床減)▼療養病床:32万3324床(同44床減)▼精神病床:33万350床(同119床減)—などという状況です。療養病床減少の背景には、2018年度から新設された「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換なども関係していると予想されます。
また、有床診療所の病床数は前月末から446床も減少し、9万6134床となりました。2年前(2016年6月末)には10万4398床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年6月末)には10万240床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年6月末から2017年6月末までの1年間で4158床、さらに今年(2018年)6月末までの1年間で4106床減少しています。2017年6月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2017年6月末:10万240床
↓(221床減)
▼2017年7月末:10万19床
↓(282床減)
▼2017年8月末:9万9737床
↓(206床減)
▼2017年9月末:9万9531床
↓(688床減)
▼2017年10月末:9万8843床
↓(306床減)
▼2017年11月末:9万8537床
↓(149床減)
▼2017年12月末:9万8388床
↓(277床減)
▼2018年1月末:9万8111床
↓(380床減)
▼2018年2月末:9万7731床
↓(217床減)
▼2018年3月末:9万7514床
↓(658床減)
▼2018年4月末:9万6856床
↓(276床減)
▼2018年5月末:9万6580床
↓(446床減)
▼2017年5月末:9万6134床
この1年間、1か月当たり342床強のペースで減少が続いています。仮にこのペースが継続したと考えれば、今年(2018年)10月には9万5000床を切り、来年(2019年)末には9万床を割る計算です。減少ペースが速まっているように見えます。
有床診療所には、大きく(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分けられます。うち後者については、「過疎地などで入院医療の重要な支え手であるものの、経営が厳しく、存続が困難」という課題に直面しています。有床診の減少状況からも、この課題が再確認できます。
2018年度の診療報酬・介護報酬改定では、(2)地域包括ケア型・有床診の課題を解決し、経営を下支えするために、次のようの見直しが行われました。
▽診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診療所では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに、要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する(関連記事はこちら)
▽介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているとみなす(関連記事はこちら)
今般のデータからも、こうした見直しの効果はまだ現れていないようです。今秋以降、徐々に効果が現れてくるのか、今後も医療施設動態で有床診の動向を注視していく必要があります。もっとも、新設された「介護医療院」への転換を検討している有床診療所もあると考えられ、詳細な「意向」調査も待たれます。
なお、有床診の維持が難しいもう一つの理由として、「後継者」問題があります。これには診療報酬・介護報酬での対応は困難であり、有床診経営に関するより詳細な分析と、それに基づく対応が求められることになるでしょう。
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