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有床診、2018年度改定の効果か、2018年9月末には減少スピードに若干のブレーキ―医療施設動態調査(2018年9月)

2018.12.11.(火)

 有床診療所の減少スピードは、今年(2018年)8月末から9月末にかけてやや鈍化したように見え、14施設・176床減少の「6935施設・9万4853床」となった。ただし現在の減少ペースが続けば、来年(2019年)10月にはベッド数が9万床を割り、翌11月には施設数が6500施設を割ってしまう計算である—。

 こうした状況が、厚生労働省が12月10日に公表した医療施設動態調査(2018年9月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

 

有床診、1か月当たりの減少ペースがややダウン

 厚生労働省は、毎月末の病院・診療所数、ベッド数を「医療施設動態調査」として集計・公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら(ただし再集計前の数値で記事を作成))。

 今年(2018年)9月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万9091施設で、前月末から114施設増加しています。このうち病院の施設数は、前月末から4施設減少し、8372施設となりました。病院の種類別に見てみると、▼一般病院:7314施設(前月から4施設減)▼精神科病院:1058施設(同増減なし)—などとなりました。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3736施設で前月末から6施設減少、「地域医療支援病院」は571施設で前月末から3施設増加しました。

 一方、医科診療所は10万2104施設で、前月末から93施設の大幅増となりました。ただし、このうち有床診療所は、前月から14施設減少し、6934施設となりました。
 
 有床診療所は、2年前(2016年9月末)には7629施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年9月末)には7317施設(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年8月末から17年8月末までの1年間で312施設、さらに今年(2018年)9月末までの1年間で383施設減少しています。有床診療所の施設数は、2017年9月末以降、次のように推移しています。

▼2017年9月末:7317施設

 ↓(56施設減)

▼2017年10月末:7261施設

 ↓(25施設減)

▼2017年11月末:7236施設

 ↓(18施設減)

▼2017年12月末:7218施設

 ↓(24施設減)

▼2018年1月末:7194施設

 ↓(28施設減)

▼2018年2月末:7166施設

 ↓(21施設減)

▼2018年3月末:7145施設

↓(50施設減)

▼2018年4月末:7095施設

 ↓(21施設減)

▼2018年5月末:7074施設

 ↓(78施設減、再集計後)

▼2018年6月末:6996施設(再集計後)

 ↓(28施設減)

▼2018年7月末:6968施設

 ↓(20施設減)

▼2018年8月末:6948施設

 ↓(14施設減)

▼2018年9月末:6934施設

 
 この1年間は、1か月当たり32施設弱のペースで減少が続いています。先月末までに比べ、若干、減少スピードが落ちたように見えますが、今後の状況を見なければ、適切な判断はできません。仮のこのペースが続くとすれば、来年(2019年)11月には6500施設を割ってしまう計算です(先月までよりも1か月延びた)。

有床診のベッド数、やはり減少ペースはやや鈍化、2018年度改定の効果か

 次に医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。

 医療施設全体のベッド数は、今年(2018年)9月末には164万1468床で、前月末から1616床の大幅減となりました。うち病院の病床数は154万6554床で、前月末から1440床の大幅減少となっています。病床種類別に見てみると、▼一般病床:89万712床(前月末から533床減)▼療養病床:31万9506床(同676床減)▼精神病床:32万9692床(同217床減)—などという状況です。療養病床減少の背景には、2018年度から新設された「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換なども関係していることでしょう。

 また、有床診療所の病床数は前月末から176床減少し、9万4853床となりました。2年前(2016年9月末)には10万3451床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年9月末)には9万9531床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年9月末から2017年9月末までの1年間で3920床、さらに今年(2018年)9月末までの1年間で4678床減少しています。2017年9月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。

▼2017年9月末:9万9531床

 ↓(688床減)

▼2017年10月末:9万8843床

 ↓(306床減)

▼2017年11月末:9万8537床

 ↓(149床減)

▼2017年12月末:9万8388床

 ↓(277床減)

▼2018年1月末:9万8111床

 ↓(380床減)

▼2018年2月末:9万7731床

 ↓(217床減)

▼2018年3月末:9万7514床

 ↓(658床減)

▼2018年4月末:9万6856床

 ↓(276床減)

▼2018年5月末:9万6580床

 ↓(969床減、再集計後)

▼2018年6月末:9万5611床(再集計後)

 ↓(296床減)

▼2018年7月末:9万5315床

 ↓(286床減)

▼2018年8月末:9万5029床

 ↓(176床減)

▼2018年9月末:9万4853床

 
 この1年間で、1か月当たり390床強のペースで減少が続いています。仮にこのペースが継続したと考えれば、来年(2019年)10月末には9万床を割ってしまう計算です。やはり1か月伸びましたたが、減少スピードが鈍化したかは、今後の動向を見なければ判断できません。

 
 厚労省は、有床診療所を大きく(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、とくに(2)の「地域包括ケア型」については「過疎地などで入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」という課題に直面していることを重く見ています。

 このため2018年度の診療報酬・介護報酬改定では、(2)地域包括ケア型・有床診の課題を解決し、経営を下支えするために、次のようの見直しが行われました(関連記事はこちらこちらこちら)。
 
▽診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診療所では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに、要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
 
▽介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているとみなす
 
 今般のデータのみを見れば、減少スピードに若干のブレーキがかかったようにも見え、「2018年度診療報酬・介護報酬の効果が現れてきた」可能性もあります。もちろん、来月(2018年10月)以降の動向も慎重に見ていく必要があります。

  
 なお、有床診の維持が難しいもう一つの理由として、「後継者不足」問題があります。この点については、報酬改定での対応が難しく、別の角度(承継税制など)からのさらなる分析と対応策の構築が必要になってくるでしょう。

参考(病院の病床も急激に減少している)

参考(療養病床も急激に減少している)

 
 
病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

 

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