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各都道府県に「新型コロナ感染患者の診療拠点となる公立・公的病院」を設置せよ―四病協

2020.3.26.(木)

各都道府県に「新型コロナウイルス感染患者の診療拠点となる公立・公的病院」を設定する必要がある。これにより、限りある専門医や医療機器等の効率的・効果的な活用が可能となり、また「感染患者」対応と「それ以外の患者」対応とを並行せずにすむ―。

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会の総合部会が3月25日に開かれ、こういった緊急要望を厚生労働省に宛てて近く行うことを決定しました。

3月25日の四病院団体協議会・総合部会後に記者会見に臨んだ各団体トップ(向かって左から日本病院会・相澤孝夫会長、加納繁照・日本医療法人協会会長、山崎學・日本精神科病院協会会長、猪口雄二・全日本病院協会会長)

新型コロナ患者と、限られた医療資源(専門医や人工呼吸器等)とを集約せよ

中華人民共和国武漢市で発生したとみられる新型コロナウイルスが本邦でも猛威を振るい、各地で患者クラスター(集団感染)が生じ、残念なことに死亡例も発生しています。

現在、「新型コロナウイルス感染が確認された患者については入院医療を行う」ことが原則です。この点、数多くの病院に患者が分散すれば、限りある医療資源(感染症治療の専門的知識・スキルを持つ医師や、集中治療室、人工呼吸器等の医療機器など)が効果的・効率的に活用できず、また「新型コロナウイルス感染患者」対応と「それ以外の患者」対応とを同時に行わなければなりません。後者については、「それ以外の患者」が新型コロナウイルスに感染しないような特別の対策をとることも必要であり、病院にとっては大きな負担となり、入院患者にとってはリスクの増大につながりかねません。

さらに諸外国のような爆発的患者増加(いわゆるオーバーシュート)が生じれば、地域医療体制がパンクしかねません。

そこで四病協では感染症対策の専門家との意見交換結果も踏まえて、厚生労働省に対し、爆発的患者増加(オーバーシュート)時に備えて次の2つの対策をとることを近く要請する方針を取りまとめました。

(1)各都道府県に「新型コロナウイルスの入院専門病院」を設置し、▼呼吸器・感染症等の専門医、教育された看護師などの人的資源▼人工呼吸器などの物的資源―を集中させる。あわせて「新型コロナウイルスの入院専門病院」の一般入院患者(新型コロナウイルス感染患者以外の患者)については、他の病院が全面的に受け入れる。

(2)トリアージによって「自宅待機」と判断された新型コロナウイルス感染患者(陽性患者)について、完全防止策を広く周知するとともに、感染防止策が十分に取れない場合には「適切な施設」を確保し、一時入所を求める。その際、医療面については▼DMAT(災害派遣医療チーム)▼DPAT(災害派遣精神医療チーム)▼JMAT(日本医師会災害医療チーム)▼AMAT(全日本病院協会災害時医療支援活動班)等が支援を行う



まず(1)について、日本精神科病院協会の山崎學会長や日本医療法人協会の加納繁照会長は、「新型コロナウイルス感染症対策はまさに政策医療であり、『新型コロナウイルスの入院専門病院』は公立病院(自治体病院、国立病院機構等)や公的病院(日赤病院、済生会病院等)を要塞として対応すべきである」と指摘。その際、「新型コロナウイルスの入院専門病院」に入院する一般患者(新型コロナウイルス感染症以外の患者)については、院内感染を避けるために、民間病院が全面協力して受け入れを進める仕組みも必要となります。

山崎・日精協会長は「東京や大阪などの都会では、1医療機関を『新型コロナウイルスの入院専門病院』に指定・設定しただけでは、すぐに患者数がベッド数を超えることになりかねない。そうなってから『次はどの医療機関にお願いしよう』と議論したのでは間に合わない。人口の多い地域では、あらかじめ複数の医療機関をピックアップし、指定・設定の順序付けなどを行っていく必要もある」と付言しています。

自宅待機者からの家族感染を避ける方策の実施も重要

また(2)は、患者数が今後大幅に増加し、▼重症者や重症化リスクの高い患者は医療機関に入院し▼軽症者や無症状患者は自宅療養する―というフェーズに入った際の体制整備を求めるものです(限られた病床の有効活用)。

軽症者や無症状患者も、他者に感染させる可能性があることから、「家族感染を防ぐ」ための対策を十分にとる必要があります。とはいえ、医療に関する教育・訓練を受けていない一般の患者が自身で実行可能な対策は限られており、自宅療養によって「家族感染者が増加する」事態が生じる可能性が高いと考えられます。

この点について山崎・日精協会長は「例えば国が所管する宿泊機能を持つ施設(税務大学校の寮など)や、民間のビジネスホテルを国や自治体が借り上げるなどし、軽症者・無症状感染者を一時的に収容する施設としてはどうか」との考えを示しました。言わば、臨時の「隔離施設」を設けるもので、そうした患者への医療的支援も十分に行う必要があります。



関連して四病協・総合部会では「新型コロナウイルス感染リスク等を恐れて、医療機関を受診する患者も減少している(一部病院では外来患者が1-3割減、入院患者が2割減との報告もある)。このままでは数か月後に経営破綻する病院も出てきかねない」点を危惧。急性期病院を中心に、▼国による補助▼「福祉医療機構の優遇貸付」のさらなる拡充―などの財政支援を行うことを厚労省に要請していく考えもまとめています(関連記事はこちらこちら)。

医療保険部会に「四病協代表者」を出席させ、定額負担拡大論議に参画させよ

ところで、 「全世代型社会保障検討会議」の中間報告に盛り込まれた「紹介状なし外来受診患者からの特別負担徴収義務」の拡大(▼対象病院を「200床以上の一般病院」に拡大する▼最低金額(初診5000円・再診2500円)を増額し、増額分を医療保険財政の負担軽減に充てる―など)を受け、「社会保障審議会の医療部会」と「医療計画の見直し等に関する検討会」で外来医療機能報告制度の創設論議が進められています。

しかし、四病協では「全世代型社会保障検討会議の中間報告を受けた、外来医療機能の在り方論議」という流れに強い不快感を示しています。とりわけ日本病院会の相澤孝夫会長は、例えば社会保障審議会・医療部会などで「現在の外来医療にそれほど大きな課題があるのだろうか。外来医療の在り方についての議論もしないままに、曖昧・不明瞭な基準(例えば「一般病院」など)を示して、制度設計を行うことは、国民の健康・生命を預かる立場にあるものとして許しがたい」旨を述べ、全世代型社会保障検討会議の姿勢、さらに、それを受けた厚労省による議論の進め方を強く批判しています。3月25日の四病協・総合部会でも、こうした議論が行われたことが加納・医法協会長から報告されました(関連医事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

また、医療部会による外来医療機能報告制度の中間取りまとめが行われた後には、社会保障審議会・医療保険部会で「特別負担徴収義務をどの範囲の病院に拡大していくか」「医療保険の負担軽減に、どのように特別負担を充当していくのか」という議論が始まります。この点について四病協では「医療保険部会には、当事者である四病協代表者が参画していない。委員等として議論に加われるよう、厚労省に緊急に要請する」方針もまとめています。



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