療養病床入院患者の在宅移行促進に伴い、在宅医療や介護サービスの整合的な整備を―厚労省
2017.8.18.(金)
2018年度から新たな医療計画(第7次医療計画)と新たな介護保険事業(支援)計画(第7期介護保険事業(支援)計画)がスタートするが、在宅医療や介護サービスの整備量を見込む際には、両計画の整合性を図る必要がある—。
厚生労働省は10日に発出した通知「第7次医療計画及び第7期介護保険事業(支援)計画における整備目標及びサービスの量の見込みに係る整合性の確保について」の中で、こうした点を改めて強調するとともに、整合性を保つための基本的な考え方を整理しています。7月31日に発出された第7次医療計画作成のための通知(改正通知)を補完するものと言えます。
療養病床入院患者のうち医療区分1の70%相当は在宅への移行を促進
第7次医療計画に包含される地域医療構想では、▼一般病床に入院する医療資源投入量が少ない患者(C3未満の患者)▼医療療養病床に入院する医療区分1の患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―を「在宅医療や介護施設などで対応する」こととされています。高齢化の進行で在宅医療や介護施設などの需要が増加しますが、こうした「新たな需要増」も考慮して、医療計画・介護保険事業(支援)計画の中で在宅医療・介護施設などの整備量を見込む必要があるのです。医療計画の見直し等に関する検討会での議論を経て、今般、考え方が整理されました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
今般の通知では、まず「新たな需要増」として、次の点を考慮することを改めて指示しています。具体的には下記(1)から(3)について、将来推計人口を用いて▼2020年度末(第7期介護保険事業(支援)計画の終了時点)▼2023年度末(第7次医療計画の終了時点)―における「新たな需要増」を推計します(市町村間での調整は可能)。
(1)慢性期入院患者(療養病棟入院基本料、療養病棟特別入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料、有床診療所療養病床特別入院基本料を算定する入院患者)のうち、構想区域に住所を有し、医療区分1である患者の数の70%相当
(2)慢性期入院患者のうち、構想区域に住所を有し、入院受療率の地域差を解消していくことで介護施設・在宅医療などの需要として推計する患者の数((1)を除く)
(3)一般病床入院患者(回復期リハビリ病棟入院料の算定患者を除く)のうち、医療資源投入量で、構想区域に住所を有する者の数から、「在宅復帰に向けて調整を要する者(医療資源投入量175点以上225点未満)」「リハビリを受ける入院患者でリハビリ料を加えた医療資源投入量が175点以上となる者」の数を控除して得た数
療養病床から介護医療院への転換や、退院患者の動向データなどを勘案
次に、推計した「新たな需要増」に対応するために必要となる在宅医療・介護保険施設などの整備量を推計することになります。具体的に「在宅医療でどの程度対応するのか、介護保険施設などでどれだけ対応するのか」は、都道府県(医療計画、介護保険事業支援計画を作成)と市町村(介護保険事業計画を作成)との「協議の場」で調整・協議することになりますが、厚労省は以下のような基本的な方針を示しています。
まず(3)の「一般病床における医療資源投入量の少ない入院患者」の多くは、退院後に外来医療を受診することが分かっており、「新たな需要増」のほとんどは、「療養病床の入院患者が在宅移行する」ために生じるものと言えます((1)と(2))。一方、2018年度からは「療養病床から介護医療院への転換」も進められます。そこで、厚労省は別途お伝えする転換意向調査を行い、▼医療療養については2020年度末・2023年度末の見込み量を「追加的需要の下限」として設定する▼介護療養については意向調査により把握した2020年度末の見込み量を「追加的需要の下限」として設定する(2023年度末に介護療養の全数相当を追加的需要として設定する)―よう求めています。
また、介護医療院で対応する分を除く部分については、▼現在の療養病床数▼これまでの在宅医療・介護サービス基盤の整備状況▼病床機能の分化・連携、地域包括ケアシステムの深化・推進を踏まえた将来の在宅医療・介護サービス基盤の在り方―などを踏まえて、在宅医療と介護保険施設などとの間で対応分を按分して、それぞれの整備目標に反映させることになります(前述のように、具体的には都道府県と市町村との協議の場で設定)。
さらに、在宅医療・介護保険施設など整備量を考えるに当たっては、次のような資料も参考にすることが求められます。
▼患者調査や病床機能報告における「療養病床を退院した患者の退院先別のデータ」などを参考にする
▼各市町村において国保データベースを活用し「療養病床を退院した者の訪問診療や介護サービスの利用状況」などを把握する
▼各市町村における独自のアンケート調査、現状における足下の統計データなどを活用する
ところで、第7次医療計画は2018-23年の6年計画ですが、2020年度に中間見直しを行います。また介護保険事業(支援)計画としては、2018-20年度の第7期計画と2021-23年度の第8期計画があり、▼2020年度▼2023年度―の2つの節目があると言えます。このため、在宅医療の整備目標についても▼2020年度末の整備目標▼2023年度末の整備目標―の2点を設定することが求められます(介護保険施設などの整備目標は、当然、第7期・第8期計画のそれぞれで設定することになる)。
また厚労省では、「第7期に必要な整備が行われない場合には、第8期に繰り越して対応しなければならない」点に言及し、「計画的な整備」の必要性を強調しています。例えば、介護保険施設などの整備は介護保険料の上昇につながるため、「とりあえず、当面の介護保険料を抑えよう」と考えてしまえば、後の第8期計画で「急激な整備→介護保険料の急激な上昇」となってしまう恐れがあるためです。
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