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地域住民同士の互助を進め、医療・介護等の専門家の知恵も借りて「地域づくり」進めよ―厚労省・大島老健局長

2019.3.19.(火)

 未曾有の少子高齢化を迎える我が国においては、今後、介護をはじめとする「地域づくり」を、市町村が地域住民を巻き込んで進め、これを国や都道府県がバックアップしていくことが必要となる。このためには、地域の高齢者に「通いの場」などに集ってもらうこと、地域住民同士の助け合い(互助)を進めていくこと、医療・介護・福祉の専門家に知恵を出し合ってもらうことが重要となる―。

 厚生労働省老健局の大島一博局長は、3月19日の「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」で、このような内容を盛り込んだ「これからの地域づくり戦略 3部策―集い・互い・知恵を出し合い―」(1.0版)を詳説しました(関連記事はこちら)。

 市長村や都道府県との協議を通じて、逐次、バージョンアップ(版を改める)していくことになります。

3月19日の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議の冒頭、「これからの地域づくり戦略」3部策について詳説する厚生労働省老健局の大島一博局長

3月19日の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議の冒頭、「これからの地域づくり戦略」3部策について詳説する厚生労働省老健局の大島一博局長

 

まず、地域の高齢者などに「通いの場」に集ってもらう

2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。その後、2040年にかけて、高齢化のスピードは鈍化するものの、社会保障の支え手となる現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。減少する若人(現役世代)で、増加する高齢者を支えなければならず、介護保険制度をはじめとする社会保障制度の基盤は極めて脆くなっていきます。

このため、介護保険制度における給付と負担の見直しを進めると同時に、「介護予防も含めた健康づくり」「認知症高齢者対策」「質の高い介護サービス提供」などを進めることが重要となりますが、厚労省では「介護も生活の一部であり、自治体が生活の課題を広く把握し、解決することが今後、極めて重要になってくる」と捉え、介護分野にとどまらない「地域づくり3部策」を作成したものです。

 3部策は、名称どおり(1)集い(2)互い(3)知恵を出し合い―の3つのパートで構成されています。

まず(1)「集い」の部では、体操などの「通いの場」を数多く設置することを提案しています。歩いて5-10分程度の身近な場所で、軽い体操をしたり、お茶を飲みながらお喋りをする場を設置し、そこに住民がお客さんだけでなく、ホストとして主体的に参加するものです。
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 すでに各地でさまざまな「通いの場」が設けられていますが、日本医療研究開発機構(AMED)の研究によれば、「通いの場への参加者」のほうが、そうでない方に比べて虚弱の割合が低いことが明らかになっています。虚弱が進めば、要支援、要介護状態となり、併せて医療の必要性も高まるため、医療費・介護費が高まる(保険料の上昇につながる)ことはもちろん、住民のQOLが大きく低下してしまいます。健康づくりのためには、まず「通いの場」により多くの高齢者に来てもらうことが重要です。
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こうした「通いの場」の整備費用は、2018年度から実施されているインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)の対象にもなるため、各地でより多く設置することが求められます。

もっとも、「通いの場」が地域の高齢者に知れ渡り、「行ってみよう」と思うようになるまでには時間がかかります。「脳の健康教室」(タブレット端末を使用して指先を動かすトレーニングを実施)や「もの作り教室」(木工作品作りを実施)などを展開する熊本県長洲市でも、2009年の事業実施から3年間は参加人数が低迷していましたが、粘り強く事業を継続し、2017年には参加者は当初の10倍に急増しています。
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また「通いの場」の先行事例から学べるポイントして、▼手軽・気軽・身軽(自治体や住民の負担が大きくならないように)▼住民参加型―の2点があげられそうです。後者については、茨城県で実施している「シルバーリハビリ体操指導士養成講座」が参考になるでしょう。専門家の研修を受けた住民を「指導士」として茨城県知事が認定し、地域住民に対応の普及を図る仕組みで、指導士は▼1級:講習会の講師を務める▼2級:地域活動のリーダーを務める▼3級:地域活動の実践に当たる―の3区分あり、例えば「3級の人は地域住民に体操を教えるとともに、2級や1級を目指す」ことで地域の活性化が図られているといいます。

さらに東京都西東京市では、医師会・歯科医師会・薬剤師会と協働で「フレイルチェック」等を「通いの場」においてセットで実施。虚弱高齢者の早期発見につなげると同時に、一般に「地域参画が難しい」と考えられている男性高齢者が「フレイルサポーター」として地域活動に積極的に参加するという大きな成果が得られています。

また、山口県防府市のように、「通いの場」を、例えば商業施設(スーパーマーケットやショッピングモールなど)に併設することで、「買い物支援」サービスなどを実施することも重要でしょう。「買い物のついでに体操教室にも寄っていこう」と感じ、より通いやすくなることが期待できる(通ってもらうことが重要)とともに、第2部の「互助」の基盤づくりにもつながります。

地域の高齢者の日常生活を支援する「互助」の基盤づくりを進める

次に(2)「互い」の部では、地域の高齢者を支える「互助の基盤」づくりを提案しています。

「介護が必要となっても、可能な限り住み慣れた地域での生活を可能とする」ことを目指し、各地域で地域包括ケアシステムの構築が進められています。▼住まい▼医療▼介護▼予防▼生活支援―を一体的に提供するものですが、例えば、「ごみの分別」「電球の取り換え」「役所での諸手続き」「病院への付き添い」「買い物支援」などは、オフィシャルなサービス(公助)よりも、身近な地域住民の助け合い(互助)により馴染みがあるでしょう。

こうした互助の取り組みを自治体がサポートしていくことが、地域包括ケアシステムの構築を含めた「地域づくり」において欠かせないと厚労省は指摘しています。

例えば、▼生活支援コーディネーター(SC)の養成やSC協議体の設置▼介護ボランティアの養成▼認知症サポーター・チームオレンジ(仮称)▼認知症地域支援推進員▼住まいの確保支援・生活支援―などの「互助基盤」を作成し、展開することなどが考えられます。
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このうち「認知症サポーター・チームオレンジ(仮称)」は、厚労省が2019年度からの構築を目指している仕組みで、認知症サポーター研修を修了した人が、ステップアップ研修を受講し、チーム(チームオレンジ)を組んで、認知症の方が専門的なサービスを受けられるようになるまでの「空白期間」を支援するものです。
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また「住まいの確保支援」は、京都府京都市や福岡県福岡市で進められているもので、社会福祉協議会などの「地域の支援団体」と不動産業者等が連携し、例えば「高齢者の見守りサービスを社会福祉協議会が行うので、安心して部屋を貸せる」(大家さんにとっては独居高齢者の健康状態などを考え、部屋を貸すことをためらうケースも少なくない)環境を整えるといった取り組みなどです。

もちろん、新たな「互助の基盤」づくりには、大きな障壁があります(住民自らに「助け合おう」という意識をもってもらうところから始めなければならない)。このため大島老健局長は、「まず生活支援コーディネーターを育成し、宮城県多賀城市のように、例えばお茶のみスペースを設けた街の商店について、地域の集いの場や見守りの場として機能する『お宝』であることを再発見するなどの取り組みから進めてはどうか」と提案しています。
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こうした互助の取り組みも、前述した「インセンティブ交付金」の対象となるケースがあります。

医療・介護・福祉の専門家の知恵を借り、制度でカバーしきれない課題を解決する

 さらに(3)「知恵を出し合い」の部は、地域の医療・介護・福祉の専門家が集い、制度ではカバーしきれていない地域課題の解決を求めるものです。

この点、介護保険制度には「地域ケア会議」が位置付けられ、「個別事案を積み上げ、地域課題の解決につなげる」ことが求められていますが、「うまく地域ケア会議が機能しない」ケースも少なくないようです。厚労省はこの背景には、▼会議の目的などが共有されていない▼開催数が少なく、経験が蓄積されていない▼個別ケースの検討に終始してしまっている―という課題があると分析。

地域ケア会議の活性化に向けて、▼会議の目的を「その人(要支援者・要介護者)にとって普通の生活を取り戻すために、何ができるのか」という点に絞る(目的の明確化)▼市町村が主体的に地域ケア会議を数多く開催する(まず、やってみる)▼各種専門職の知恵とともに、介護保険サービス以外の資源(上述の生活支援コーディネーターなど)も広く活用する▼対応が欠けている施策については、市長村が制度化を行う―ことが提案されました。

例えば、愛知県豊明市や奈良県生駒市では、地域包括ケア会議の目的を可能な限りシンプルにし、明確化しています(「本人の望む自立は何か」→「自立阻害要因は何か」→「現在のサービス提供体制で解決できるか」など)。
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また埼玉県和光市や長崎県佐々町では、日常生活圏域ニーズ調査(個別高齢者を訪問するなどした、形だけではないニーズの掘り起こし調査)に基づいて、地域住民のニーズを詳細に把握し、これを介護保険事業計画に反映させることで「ニーズにマッチした介護サービス体制の構築」が可能になっています。

もっとも、こうした取り組みをすべての市町村で今すぐに実施することは難しいでしょう。大島老健局長は「まず(1)の『集い』、(2)の『互い』を全市町村で進めてもらい、(3)の『知恵を出し合い』は余力のある市町村から実施してもらう」という考えも示しています。なお(3)の「知恵を出し合い」に関しては、都道府県による市町村のバックアップも重要な要素となります。

 
 なお、こうした「地域づくり」を進めるためには、市町村の体制整備や地域の風土づくりも重要となります。大島老健局長は、例えば▼担当課長・係長に、地域づくりに「向く人」を「長く」配置し、成果評価も長い目で行う▼「地域のことは地域で解決する」という自主性・自律性の認識を地域住民にも持ってもらう▼医療・介護の専門職や職能団体との良好な関係を構築する―ことなどを提案。さらに、上述したインセンティブ交付金や地域医療介護総合確保基金を活用することで「大規模な事業実施も可能となる」ことを紹介しています。
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厚労省では、今後、市町村や都道府県と協議を行い、逐次、3部策のバージョンアップを行い、「地域づくり」の推進に役立ててもらいたいと期待を寄せています。

 
 

 

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