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診療報酬改定セミナー2022 診療報酬改定セミナー2022

2022年10月からの介護職員の新処遇改善加算、「2-9月の補助金」を引き継ぐ形で設計―社保審・介護給付費分科会

2022.1.13.(木)

今年(2022年)2-9月には「介護職員の処遇改善」に向けた補助金を交付し、10月以降は「介護職員の処遇改善」について介護報酬(加算)で対応する―。

その際、自治体や介護事業所・施設等の事務負担に配慮し「2-9月の補助」を基本的に引き続く形の新たな処遇改善加算を創設する―。

具体的には「介護職員処遇改善加算(I)(II)(III)のいずれかを取得し、補助金の3分の2以上を介護職員等のベースアップ等に用いている」事業所に対し加算の算定を認め、事業所でそれを財源に柔軟にスタッフの処遇改善を行ってもらい、その計画・実績を都道府県等に報告してもらう形とする―。

厚生労働省は1月12日の社会保障審議会・介護給付費分科会でこういった考えを提示。委員の意見を踏まえて具体的な加算内容を今後、練っていきます(関連記事はこちら)。

委員からは、加算の設計に向けた注文が出ると同時に、「介護報酬対応とした場合には被保険者、利用者、自治体の負担増につながる」ことを懸念する声も出ています。

2-9月の補助金の仕組み・要件を引き継ぐ形で「新たな処遇改善加算」を創設

昨年(2021年)11月19日に閣議決定された新たな「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」、12月20日に成立した2021年度補正予算で「介護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度(月額9000円)引き上げるための措置(補助金交付)を来年2月(2022年2月)から9月まで実施する」ことが正式決定しました。

あわせて12月22日の後藤茂之厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣合意で「10月以降は介護報酬で同様の処遇改善(介護職員の収入を3%程度改善できる処遇改善)を行う」方針が決定されました。

1月12日の介護給付費分科会では、厚労省から「介護報酬による処遇改善案」が示され、委員からの意見聴取が行われました。

まず「介護報酬による処遇改善」は「新たな処遇改善加算」として行われることになりました。この点、厚労省老健局老人保健課の古元重和課長は「2-9月の補助金と10月以降の報酬対応とは同じ政策目的の下で行われ、仕組み(補助要件など)を変えれば事務負担が大きくなるため、基本的に補助金の要件・仕組み等を引き継ぐ」形としてはどうかとの考えを示しました。具体的には次のような内容です。

【加算の算定対象】
(1)介護職員処遇改善加算(I)(II)(III)のいずれかを取得している(2)加算で取得した財源の3分の2以上を「介護職員等のベースアップ」などに用いる(賃上げ効果の継続を狙っている)―事業所・施設が対象となります。下図の「黄色」が新加算に相当します。

新たな処遇改善加算のイメージ(黄色部分が新加算)(介護給付費分科会3 220112)



【加算の仕組み】
「事業所・施設の介護職員(常勤換算)について、1人当たり月額平均9000円の賃金引き上げを行える」財源を事業所・施設が算定可能とします。具体的には次のように計算します。
▼各事業所の介護報酬報酬(毎月、請求する介護報酬の単位数)
×
▼サービス種類ごとの交付率
(下表)

新たな処遇改善加算の加算率(介護給付費分科会2 220112)



補助金の交付率と、新たな加算率との間には若干の差異がありますが、厚労省老健局老人保健課の担当者は「補助金の請求システムと加算の請求システムとの違いによるもの(総報酬から処遇改善加算等を除外できるか否かが異なる)にすぎない。補助金と加算とで事業所に交付される金額に変更はない」と説明しています。

【処遇改善方法】
「介護職員」のほか、事業所の判断で「他の職員」の処遇改善にも加算で取得した財源を充てることが認められます。古元老人保健課長は「制度の趣旨に鑑みて、事業所でどの職種に配分するかを考えてほしい」と説明しています。ただし「この職種の処遇改善に使ってはいけない」などの規定は設けられません。

【スケジュール】
申請を今年(2022年)8月から受け付け、要件等を満たせば、10月分から支払われます(介護事業所・施設に実際に入金されるのは12月から)。申請に当たっては「賃金改善計画書」(全体の賃金改善額を記載、個々人の改善額記載は不要)の提出が、また事後に「実績報告書」(同)の提出が求められます。

新たな処遇改善加算の概要(介護給付費分科会1 220112)

新加算の創設、利用者・被保険者・自治体などの「負担増」につながる点にも配慮を

この仕組みについて歓迎する声が多いものの、「介護報酬での対応」に懸念を示す委員も決して稀ではありません。例えば費用負担者である河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)や井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)、さらに自治体サイドは「やむを得ない」としながらも「介護報酬で対応すれば、被保険者(40歳以上)、利用者、自治体、保険者などの負担増につながる」ことを心配しています。また利用者家族の代表である鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)は「高齢の介護保険利用者の負担は限界に来ている」と訴えています。さらにサービス提供側である及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)も「処遇改善のために国民に過度な負担増が生じることは望んでいない。介護サービス利用控えつながらないように配慮する必要がある」とコメントしています。

「介護職員の処遇改善」は2009年から始まり拡充されてきていますが、常に「本来は事業所・施設の経営努力、労使間の交渉で行われるべきものである」との指摘がなされています(当初は「介護事業所・施設の経営が成熟していないことから、補助金や加算で対応せざるを得ない」との判断がなされた)。また、処遇改善が保険料増につながることから「介護職員よりも賃金水準の低いパート労働者などの負担増で、より高収入の介護職員の賃金増を行うことは問題ではないか」との指摘もあります。

介護人材の確保・定着を考えたとき「介護職員の処遇改善」は極めて重要なテーマですが、永久に介護報酬などで対応していくことは困難です。今後、上記の指摘にも十分に耳を傾けた制度設計を考えることが重要でしょう。

なお、今般の処遇改善に必要な保険料引き上げを単純計算すると「1人、1か月当たり平均70円」となります(新たな処遇改善加算に必要な額を介護費で除すれば1.13%(いわば今回の改定率)となり、これを1号保険料に乗じると約70円。2号保険料でも同程度の引き上げが必要になる)。65歳以上の1号被保険者については「2021-23年度は固定」(ゆえに24年度以降の保険料に上乗せされる)、40-64歳の第2号被保険者については「保険料の引き上げ」が行われることになります。

また、2023年度以降もこの加算が継続されますが、12月22日の大臣合意では「財源については社会保障改革の中で捻出する」ことを確認しています。つまり介護サービス等の効率化・適正化(単位数引き下げなど)によって「処遇改善加算の財源を生み出す」ことが求められます。この点、井上委員は「新たな処遇改善加算の検討とセットで、適正化・効率化を検討するべき」とも付言しています。2024年度には介護報酬・診療報酬の同時改定が控えており、本格的な効率化・適正化論議は、それを待つ必要があります。

事業所・施設、自治体の双方から「制度の簡素化、事務負担軽減」を求める声

また委員からは「制度の簡素化、事務負担の軽減」を求める声も出ています。介護職員の処遇改善加算については、▼2012年度改定からの介護職員処遇改善加算▼2019年度改定からの特定処遇改善加算▼今般の新たな処遇改善加算―の3層構造となり、それぞれに要件が少しずつ異なります。当然、請求する事業所・施設サイド、支払う自治体サイドの負担も大きく煩雑になります。

このため事業所・施設サイド、自治体サイドの双方から「簡素化、負担軽減の工夫を行ってほしい」との要望が出ています。古元老人保健課長も「工夫を行う」考えを示していますが、適正な執行を行うためには一定の事務がどうしても発生してしまいます。例えば、「介護職員処遇改善加算I・II・IIIを取得する事業所について、新加算を自動的・機械的に配分してはどうか」(田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事)との提案がなされましたが、「財源の3分の2をベースアップに用いること」との新要件が加わるため自動的・機械的配分は困難です。この「3分の2をベースアップに用いる」との要件は、上述のとおり「賃金引き上げが継続的に行われる」ことを狙うために設けられており、制度の趣旨に照らして「どうしても必要な要件」と言わざるを得ません(このため事務負担がどうしてもかさんでしまう)。

この点、2024年度の次期介護報酬改定では「3層構造の処遇改善加算の再整理」(例えば1本化する)が論点の1つになると思われます。ただし、加算にはそれぞれ「制度の趣旨」があり、これを無視した「再整理や統合、一本化」などを行えば別の問題が生じてしまいかねない点に留意が必要です。例えば、2019年度に創設された特定処遇改善加算は、「介護職員の賃金が低いが、その背景の1つとして『短期に職を辞してしまい、キャリアアップがなされない』ことが挙げられる。そこで『勤続年数の長い介護福祉士の処遇改善』に重点化した処遇改善を行うことで、『雇用継続』『キャリアアップ』→『賃金水準の向上』につなげる」との考えの下で創設されました(もちろん柔軟な配分が一定程度可能)。この趣旨を忘却して、例えば「極めて広く薄く処遇改善を行ってよい」との制度改変を行えば、介護職員のキャリアアップなどがまた遠のいてしまうことになります。各加算の背景等をしっかり踏まえた検討が必要です。

訪問看護ステーションやケアマネ事業所などでも「処遇改善」を検討してほしい

一方、「対象となっていない事業所、職種についても処遇改善を行ってほしい」との声もあります。

例えば、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)などは、そもそも介護職員処遇改善加算等の対象となっておらず、結果、今般の補助金や新加算の対象にもなりません。田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)や濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)らは「対象外の事業所・施設等についても処遇改善を検討する場を設けてほしい。併設の対象外事業所・施設での柔軟配分などを工夫してほしい」と強く要望しました。

また江澤和彦委員(日本医師会常任理事)も「格差是正」の重要性を指摘しています。



介護給付費分科会では、今後も「新たな処遇改善加算」の制度設計論議を続けていきます。上述のとおり「8月(2022年8月)には事業所・施設が加算の申請を行う」こととなり、申請のための手続き(処遇改善計画書の作成など)にも一定程度の時間がかかります。こうした点を踏まえて厚労省老健局老人保健課の担当者は「なるべく早く制度を確定させたい(臨時介護報酬改定の答申を得る)」との考えを示していますが、具体的なスケジュールは固まっていません。



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