指定難病の要件を整理・明確化、小児慢性特定疾病と指定難病とのズレをどう考えるか―指定難病検討委員会・小慢検討委員会
2024.1.5.(金)
指定難病の要件を整理・明確化し、今後の対象対象疾患拡大や見直しに備える—。
小児慢性特定疾病における「ヒト成長ホルモン治療を行う場合の要件」(疾病の状態の程度)を廃止する—。
12月27日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」と社会保障審議会・小児慢性特定疾病対策部会「小児慢性特定疾病検討委員会」との合同会議で、こういった方針が固められました。
近く、医療費助成の対象となる「指定難病」「小児慢性特定疾病」の拡大に向けた議論も始まります。
指定難病の要件を整理・明確化
国の定めた以下の要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況に鑑みて、重症の場合に医療費助成が行われます。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している
「がん」など他の施策・支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しませんが、「▼髄膜▼脳▼脊髄▼脳神経▼その他の中枢神経系―に発生した腫瘍は、良性であっても『がん登録』の対象となり(がん登録推進法施行令第1条第2項)、指定難病には該当しない」「それ以外の部位に生じた腫瘍は、良性であれば『がん登録』の対象にならず、指定難病に該当する可能性がある(他の要件を満たすことが必要)」など、判断基準の明確化が随時行われてきています(関連記事はこちら)。
これまでに、こうした要件に該当する疾患が「指定難病」と判断され、重症者には医療費助成が行われてきています(厚労省サイトはこちら、関連記事はこちら)。
ただし、指定難病の該当性議論を積み重ねる中で、「要件のさらなる整理、明確化を図るべき」との考えが強まり、12月27日の指定難病検討委員会に次のような「要件見直し案」が示されました。
▽「治療方法が確立していない」要件について、「ただし、根治のための治療方法がなく、継続的な治療が必要な疾病であっても、一般と同等の社会生活を送ることが可能である場合には該当しないものとする」点を明確化する
▽「長期の療養が必要である」要件について、「軽症者の多い疾病は該当しないものとし、『長期の療養を必要とする』要件を満たすかどうかについて、疾病の全患者数のうち重症度分類等で医療費助成の対象となる者の割合を考慮する」旨を明確化する
▽指定難病の追加を検討する際には、次の点に留意することを明確化する
▼1疾病のうち、指定難病の要件を満たす一群を類別化して呼称した疾病(例えば、1疾病の中の重症型を類別化して呼称した疾病、1疾病の中の一部の合併症を類別化して呼称した疾病、1疾病の中のある発症時期を類別化して呼称した疾病など)は認めない
▼診断基準・重症度分類等は「研究班が整理した情報に基づき、関係学会の承認を得ている疾病のみ」を検討対象とする。また、疾病の周知の観点から、原則として日本医学会分科会の承認を得た疾病を検討対象とし、関係する学会に広く承認を得ることが望ましい
▼主に小児期に発症する疾病の診断基準・重症度分類等について、移行期医療を進める観点からも「成人の診療に関わる診療科の関連学会の承認を得る」ことが望ましい
▼過去に「指定難病の要件を満たしていない」と判断された疾病について、研究班からの申出に基づき再検討を行う際には、「過去に満たしていないとされた要件に対する新たな知見の追加報告」を必須とする
これまでに指定難病検討委員会で出された意見を踏まえたものであり、異論・反論は出ておらず、「厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会における指定難病に関する検討の基本方針」として明確化されました。
また小児慢性特定疾病検討委員会では、「小児慢性特定疾病におけるヒト成長ホルモン治療を行う場合の要件(疾病の状態の程度)を廃止する」方針が了承されました。
ヒト成長ホルモン製剤について「小児慢性特定疾病の対象疾病と関連した新規の適応症」承認が行われましたが、小児慢性特定疾病においてヒト成長ホルモン治療を行う場合の医療費助成では「対象となる基準」が定められ、この基準では「ヒト成長ホルモン製剤の新規の適応症」が対象外となっているために、上記の見直し(廃止)が行われるものです。
小児慢性特定疾病児が成人になったが、指定難病に該当しないケースをどう考えるか
さらに、同日の指定難病検討委員会・小児慢性特定疾病検討委員会では、今後の「対象疾患の拡大・見直し」に向けた議論の進め方も確認しました。近く、新たな疾病の追加や、既存疾病の診断基準見直しに向けた議論が始まります。
この点に関連して、奥山宏臣委員(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座小児成育外科教授、小児慢性特定疾病検討委員会の委員)から「小児慢性特定疾病と、指定難病とで対象疾患が異なっているため、成人になると突然医療費助成が打ち切られる事態が生じる。何らかの救済対応を検討すべき」との声が出ています。
小児慢性特定疾病には「希少疾病である、患者数が少ない」という要件がなく、比較的患者数が多い疾患も含まれています(例えば「喘息」など)。小児の健全育成を支援するという制度趣旨に基づく考え方です。このため、小児慢性特定疾病の罹患児が成人した際に、指定難病の要件(希少疾病である、患者数が少ない)に該当せず、医療費助成がなされなく成るケースが少なくないのです。
制度発足の趣旨が異なるため、両者をきっちりと整合させることは、すぐには困難です(小児慢性特定疾病の対象疾患を絞れば「健全育成」に支障が出てくる、指定難病の要件を緩和すれば、財源が限られる中で重症者支援が手薄になってしまう)が、継続する重要検討課題となります。
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