8番目の患者申出療養「遺伝子変異に対応した分子標的薬治療」、メキニスト小児ドライシロップを対象薬剤に追加―患者申出療養評価会議
2025.1.8.(水)
8番目の患者申出療養である「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する『マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療』」において、ノバルティスファーマ社の「メキニスト小児ドライシロップ4.7mg」を対象薬剤に追加する—。
12月27日に持ち回りで開催された患者申出療養評価会議で、こういった点が了承されました。がん患者が「最適な抗がん剤治療を受けられる」環境整備がまた一歩進んだ格好です。
がん患者が「最適な抗がん剤治療を受けられる」環境の整備進む
患者申出療養は、傷病と闘う患者による「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用してみたい」という希望・申し出を起点に、当該医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可するものです(2016年4月スタート)。
これまでに、次の18種類の患者申出療養が認められています(ただし「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「9」「10」「11」「12」「13」の技術がすでに新規患者の登録終了、対象技術の保険適用等による取り下げとなっている)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら)
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら)
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら)
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら)
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら)
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら)
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらとこちら)
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら)
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら)
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら)
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら)
(13)BRAFV600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら)
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら)
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(関連記事はこちらとこちら)
(16)筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「EPI-589再投与」の安全性に関する研究こちら)
(17)線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬投与歴のある進行固形がん患者に対するペミガチニブ経口投与療法(関連記事はこちら)
(18)小児・AYAがんに対する遺伝子パネル検査結果等に基づく複数の分子標的治療(関連記事はこちら)
12月27日の持ち回り会合では、「8」の技術に関し、実施計画の見直しを了承しました。
(8)の「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」は、「遺伝子パネル検査で有効な抗がん剤が見つったもが、当該抗がん剤が保険適応外(当該がん種への効能効果が薬事承認されていない)・未承認(本邦での使用が薬事承認されていない)であった」というケースを救済するために設けられました(保険診療と保険外診療(適応外の薬剤使用)との併用を可能とする、これが認められない場合には保険診療部分も全額自己負担となってしまう)。
▼事前に国立がん研究センターで、「患者申出療養の計画」の言わば「雛形」を準備しておく▼「多くの抗がん剤(分子標的薬)を使用可能とする」手続きを事前に踏んでおく—ことで、患者から「未承認・適応外の抗がん剤を使用したい」と要望があった際に、速やかに未承認・適応外の医薬品を患者申出療養の中で使用できるようにするものです(通常診療部分は医療保険を使って1-3割負担、未承認・適応外の医薬品費などは保険外の自己負担)。
現在、本技術で使用できる薬剤は下表の23種類あり、薬剤ごとに「50症例」を組み入れる計画となっています。
12月27日の持ち回り会合では、対象医薬品として、新たに「メキニスト小児ドライシロップ4.7mg」(一般名:トラメチニブジメチルスルホキシド付加物)を追加することが了承されました。本邦において、トラメチニブジメチルスルホキシド付加物の小児用剤型が追加で薬事承認されたことを受けたものです。
がん患者が「最適な抗がん剤治療を受けられる」環境がまた一つ整ったと言えます。
このほか、同日の持ち回り会合では「被保険者証の新規発行停止に伴って、これまで『被保険者証の写し』を添付書類として求めていた患者申出療養制度における取扱い見直した」ことが報告されています(厚労省サイトはこちら(見直し概要)とこちら(関連告示の見直し)とこちら(関連局長通知の見直し)とこちら(関連課長通知の見直し))。
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