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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

2020年3月の医療事故は31件、消化器科で7件、内科・脳神経外科で各4件など―日本医療安全調査機構

2020.4.13.(月)

今年(2020年)3月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は31件。2015年10月の医療事故調査制度発足から累計1710件の医療事故が報告され、このうち81.3%で院内調査が完了している。一般国民へも制度が浸透してきており、対象外の死亡事故に関する問い合わせが減少していると見られ、一般国民へも「正しい理解」が浸透してきている可能性もうかがえる―。

日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が4月9日に公表した「医療事故調査制度の現況報告(3月)」から、こうした状況を明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

2020年3月の医療事故報告件数、外科で7件、内科・脳神経外科で各4件など

2015年10月より、すべての医療機関等(病院、診療所、助産所)に対し、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告する義務が課せられています【医療事故調査制度】。事故の原因や背景を調査・分析して「再発防止策」を構築。それを医療現場に広く共有することで、医療安全の確保を目指す制度です。

医療事故調査制度の大枠は、次のような流れです。

▽医療事故発生を確認した際、院長などの管理者は、速やかにセンターへ事故発生を報告する

▽事故が発生した医療機関が自ら事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▽当該医療機関は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する(調査結果報告書の提示までは義務付けられていない)

▽センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る

医療事故調査制度の概要



センターでは重大事故について詳細を分析し、再発防止策として提言を行っており、すでに下記11本の提言が公表されています。
(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―
(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析
(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析
(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析
(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析
(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析
(7)一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析
(8)救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析
(9)入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析(関連記事はこちら
(10)大腸内視鏡検査等の前処置に係る死亡事例の分析
(11)肝生検に係る死亡事例の分析



さらに我が国唯一のセンターである日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を公表しています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。今年(2020年)3月には、新たに31件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は1710件となりました。

今年(2020年)3月に新たに報告された医療事故31件の内訳は、病院から30件、診療所から1件でした。制度発足(2015年10月、以下同)からの累計では、病院から1614件(事故全体の94.4%)、診療所から96件(同5.6%)となっています。

今年(2020年)3月に新たに報告された事故を診療科別に見ると、▼外科:7件▼内科:4件▼脳神経外科:4件▼循環器内科:3件▼心臓血管外科:3件▼泌尿器科:3件―などで多くなっています。制度発足からの累計では、▼外科:282件(事故全体の16.5%)▼内科:219件(同12.8%)▼整形外科:144件(同8.4%)▼循環器内科:138件(同8.1%)▼消化器科:135件(同7.9%)―などで多くなっています。

2020年3月の医療事故報告件数(医療事故の現況(2020年3月)1 200409)

センターへの相談件数は累計8784件、一般国民への正しい制度理解が進んできた可能性

センターへの報告が義務付けられるのは、医療機関内で生じたすべての死亡・死産事例ではありません。前述のとおり、死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が、『予期せず』かつ『医療に起因し、または起因すると疑われる』もの」に限定されます。

例えば、火災に巻き込まれ極めて重度の熱傷を負った被害者が救急搬送され、適切な治療の甲斐もなく死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」されることからセンターへの報告は必要ないでしょう。ただし、そうしたケースでも明らかな処置上のミスなどがあり通常の経過とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期しなかった」医療事故としてセンターへの報告が必要となってくるでしょう。

もちろん、どこまでが「予期された」医療事故なのかの判断は難しく、医療現場では「患者が死亡したが報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」という疑問が生じることでしょう。また、医療機関には「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といったケースも生じることがあります。

一方、遺族の中には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故としていまだに報告されていないようだ。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念をもつ方もおられるでしょう。

こうした疑問・疑念に答えるために、センターでは相談対応を行っています。今年(2020年)3月には新たに137件の相談がセンターに寄せられ、制度発足からの累計では8748件となりました。今年(2020年)3月に新たに寄せられた相談の内訳は、▼医療機関から:63件▼遺族などから:71件▼その他・不明:3件―でした。

医療機関からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので40件(医療機関からの相談全体の58.8%)。次いで「院内調査に関するもの」14件(同20.6%)、「報告すべき医療事故か否かの判断」10件(同14.7%)などとなっています。医療現場に制度が正しく浸透していることが分かります。

一方、遺族などからの相談内容を見てみると、「医療事故に該当するか否かの判断」が60件(遺族などからの相談全体の81.1%)と圧倒的多数を占めています。相談件数を見れば「一般国民にも制度が浸透してきている」ことが分かります。また「制度開始前の事故事例」「生存事例」など、そもそも報告対象とならないものに関する相談件数が少なくなっていると見られ、「正しい理解」が進んでいる可能性が伺えます。今後も状況を把握し続けるとともに、さまざまな場面を通じて制度への正しい理解を求めていくことが重要です。

2020年3 月のセンターへの相談件数(医療事故の現況(2020年3月)3 200409)

センターへの調査依頼は新たに遺族から2件

医療事故調査制度の目的は、犯人捜しや特定個人等への責任追及ではなく、「再発防止策構築のための調査・分析」にあります。事故が生じた医療機関等自らが事故の内容や背景を調査し、自院の体制・手続き・ルールなどに問題がなかったかを検証していく中で「自院の課題」を発見し、そこから「再発防止策構築」に繋げることが重要とされ、このため「まず事故が発生した医療機関が自ら原因究明に向けた調査【院内調査】を行う」ことが求められています。

今年(2020年)3月に新たに院内調査が完了した事例は42件で、制度発足からの累計では1391件となりました。これまでに報告された全1710件の医療事故のうち81.3%(前月から1.0ポイント増)で院内調査が完了しています。院内調査のスピードがさらに高まっている状況が伺えます。

2020年3月の院内調査件数(医療事故の現況(2020年3月)2 200409)



もっとも、遺族側には「院内調査結果に納得がいかない」「院内調査が遅い。何かを隠そうとしているのではないか」との疑念が生じることがあるかもしれません。一方で、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあります(医師会や病院団体、大学病院などが調査をサポートする体制が整えられている)。このためセンターでは「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制も敷いています。ただし、そこでは「センターが最初から調査する」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されたのか」という観点で調査を行うことになります。

今年(2020年)3月にセンターへ寄せられた調査依頼は2件あり、いずれも遺族等からのものでした。制度発足からの累計調査依頼件数は121件(遺族から99件・81.8%、医療機関から22件・18.2%)となり、またセンター調査の進捗状況を見ると38件で調査が終了しています(前月から2件増加)。



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医療事故に該当するかどうかの判断基準統一に向け、都道府県と中央に協議会を設置―厚労省
医療事故調査制度、早ければ6月にも省令改正など行い、運用を改善―社保審・医療部会

医療事故調査制度の詳細固まる、遺族の希望を踏まえた事故原因の説明を―厚労省



中心静脈穿刺は致死的合併症の生じ得る危険手技との認識を—医療安全調査機構の提言(1)
急性肺血栓塞栓症、臨床症状に注意し早期診断・早期治療で死亡の防止—医療安全調査機構の提言(2)
過去に安全に使用できた薬剤でもアナフィラキシーショックが発症する—医療安全調査機構の提言(3)
気管切開術後早期は気管切開チューブの逸脱・迷入が生じやすく、正しい再挿入は困難—医療安全調査機構の提言(4)
胆嚢摘出術、画像診断・他診療科医師と協議で「腹腔鏡手術の適応か」慎重に判断せよ—医療安全調査機構の提言(5)
胃管挿入時の位置確認、「気泡音の聴取」では不確実—医療安全調査機構の提言(6)
NPPV/TPPVの停止は、自発呼吸患者でも致命的状況に陥ると十分に認識せよ―医療安全調査機構の提言(7)
救急医療での画像診断、「確定診断」でなく「killer diseaseの鑑別診断」を念頭に―医療安全調査機構の提言(8)
転倒・転落により頭蓋内出血等が原因の死亡事例が頻発、多職種連携で防止策などの構築・実施を―医療安全調査機構の提言(9)
「医療事故再発防止に向けた提言」は医療者の裁量制限や新たな義務を課すものではない―医療安全調査機構
大腸内視鏡検査前の「腸管洗浄剤」使用による死亡事例が頻発、リスク認識し、慎重な適応検討を―医療安全調査機構の提言(10)
「肝生検に伴う出血」での死亡事例が頻発、「抗血栓薬内服」などのハイリスク患者では慎重な対応を―医療安全調査機構の提言(11)



人口100万人あたり医療事故報告件数、2017・18・19と宮崎県がトップ、地域差の分析待たれる―日本医療安全調査機構