2019年度のDPC機能評価係数II、各群トップは長崎大病院、済生会熊本病院、公立豊岡病院―厚労省
2019.4.12.(金)
2019年度のDPC機能評価係数IIの最高は、大学病院本院群(旧I群)では長崎大学病院(長崎県)の0.1188、DPC特定病院群(旧II群、大学病院本院並みの高度医療を提供する病院群)では済生会熊本病院(熊本県)の0.1501、DPC標準病院群(旧III群、その他病院群)では公立豊岡病院組合立豊岡病院(兵庫県)の0.1522である―。
厚生労働省が先ごろ告示した「厚生労働大臣が指定する病院の病棟並びに厚生労働大臣が定める病院、基礎係数、暫定調整係数、機能評価係数I及び機能評価係数IIの一部を改正する件」から、こうした状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(PDF版)とこちら(中ごろの(11)の25「厚生労働大臣が指定する病院の病棟並びに厚生労働大臣が定める病院、基礎係数、機能評価係数I、機能評価係数II及び激変緩和係数の一部を改正する件」にExcell版があります))(前年度の関連記事はこちら)。
目次
大学病院本院群、トップ3は長崎大病院・和歌山医大病院・自治医大病院
DPC制度では、全病院に共通する「DPC点数表に基づく点数」(日当点)に、医療機関ごとの係数(医療機関別係数)と入院日数を乗じて、包括範囲の収益を計算します(DPC点数×医療機関別係数×在院日数)。
医療機関別係数は、(1)基礎係数(2)機能評価係数I(3)機能評価係数II(4)激変緩和係数(診療報酬改定年度のみ、2019年度は全病院で0.0)—の和で計算されます。このうち(3)の機能評価係数IIは、いわば「各DPC病院の努力をさまざまな角度から評価する」もので、前々年の10月から前年の9月までの診療実績などをもとに、毎年度見直されます。
2019年度について見てみると、まず大学病院本院群(旧I群)のトップ5は次のようになりました。
第1位:長崎大学病院(長崎県) 0.1188
第2位:和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県) 0.1144
第3位:自治医科大学附属病院(栃木県) 0.1097
第4位:旭川医科大学病院(北海道) 0.1081
第5位:岩手医科大学附属病院(岩手県) 0.1061
逆に最も低いのは、国際医療福祉大学病院(栃木県)の0.0585で、トップの長崎大病院との差は0.0603となりました。
機能評価係数IIの増減は、DPC病院の収益増減に直結
2019年度の医療経済実態調査(医療機関等調査)によれば、特定機能病院の1施設当たり保険診療収益は267億円(厚労省のサイトはこちら)。また2019年度の社会医療診療行為別統計によれば、DPC病院における保険診療収益に占める包括部分のシェアは58.0%となっています(厚労省のサイトはこちら)。大学病院では手術の比率がより高いことなどを考慮し「保険診療部分に占める包括部分」シェアを50%と仮定すると、133億円程度と推計できます。ここに上述の差「0.0603」を掛け合わせると、8億円程度となります。ここから「長崎大病院と国際医療福祉大病院が、全く同じ規模で全く同じ診療行為を実施した場合、収益の差が8億円出る」と考えることができます。
DPCの包括部分収益は、前述のように「DPC点数×医療機関別係数(機能評価係数IIもここに含まれる)×在院日数」で計算されるため、機能評価係数IIの上昇は、ダイレクトに収益増に結びつきます。いかに「機能評価係数II」の向上がDPC病院にとって重要かを再確認できるでしょう。
もっとも機能評価係数IIは相対評価であるため、他院とのベンチマークが欠かせません(自院が10の努力をしたとしても、他院が11の努力をすれば、自院は「努力不足」と判断されてしまうことから、他院の状況をみて自院の行動を決する必要がある)。メディ・ウォッチを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは、多機能型経営分析ツール「病院ダッシュボードχ(カイ)」を開発。自院の他院の状況を細かく分析し、機能評価委係数IIの向上を含めた「改善」事項がどこにあるのかを可視化します。
特定群のトップ3は済生会熊本病院・帯広厚生病院・神戸市立医療センター中央病院
次に、大学病院本院並みの高度な医療を提供していると評価されるDPC特定病院群(旧II群)については、トップ10は次の顔ぶれです。
第1位:済生会熊本病院(熊本県) 0.1501
第2位:JA北海道厚生連帯広厚生病院(北海道) 0.1406
第3位:神戸市立医療センター中央市民病院(兵庫県) 0.1399
第4位:旭川赤十字病院(北海道) 0.1387
第5位:大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院(岡山県) 0.1372
第5位:高知県・高知市病院企業団立高知医療センター(高知県) 0.1372
第7位:武蔵野赤十字病院(東京都) 0.1340
第8位:徳島県立中央病院(徳島県) 0.1318
第9位:福井県立病院(福井県) 0.1315
第10位:徳島赤十字病院(徳島県) 0.1273
標準群のトップ3は公立豊岡病院・岩手県立中部病院・大曲厚生医療センター
さらにDPC標準病院群(旧III群)について、トップ20は次のようになりました。
第1位:公立豊岡病院組合立豊岡病院(兵庫県) 0.1522
第2位:岩手県立中部病院(岩手県) 0.1496
第3位:大曲厚生医療センター(秋田県) 0.1488
第4位:みやぎ県南中核病院(宮城県) 0.1442
第5位:岩手県立磐井病院(岩手県) 0.1435
第6位:長岡赤十字病院(新潟県) 0.1433
第7位:地域医療機能推進機構徳山中央病院(山口県) 0.1430
第8位:公立藤岡総合病院(群馬県) 0.1422
第9位:兵庫県立淡路医療センター(兵庫県) 0.1410
第10位:いわき市医療センター(福島県) 0.1401
第11位:島根県立中央病院(島根県) 0.1396
第12位:八戸市立市民病院(青森県) 0.1395
第13位:京都中部総合医療センター(京都府) 0.1383
第13位:広島県厚生農業協同組合連合会廣島総合病院(広島県) 0.1383
第15位:名寄市立総合病院(北海道) 0.1382
第15位:日本赤十字社栃木県支部足利赤十字病院(栃木県) 0.1382
第17位:松山赤十字病院(愛媛県) 0.1379
第18位:近江八幡市立総合医療センター(滋賀県) 0.1373
第19位:高山赤十字病院(岐阜県) 0.1371
第20位:北見赤十字病院(北海道) 0.1369
なお大学病院本院群(旧I群)・DPC特定病院群(旧II群)とDPC標準病院群(旧III群)では機能評価係数IIの計算方法が異なるため、また、医療機関別係数のベースとなる基礎係数も各群で異なるため、群分けせずに機能評価係数IIのみを並べて比較することに大きな意味はありません。
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