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在宅医療のニーズ・整備量把握のため、国保データベース(KDB)を十分に活用せよ―在宅医療ワーキング

2019.9.10.(火)

 在宅医療・介護ニーズの増加を的確に把握し、これを具体的な在宅医療・介護サービス整備に結び付けていくために、国保データベース(KDB)の活用が不可欠である。2019年度中に国(厚生労働省)が都道府県に対し利用しやすいデータを提示し、これに基づき都道府県ごとに「在宅医療をどの程度整備する必要があるか」「介護サービスの整備をどの程度進めていくか」などを検討していくことが求められる。ただし、国保データベースには「在宅療養を行う医療的ケア児(小児)のデータが格納されていない」こともあり、国でこうしたデータ提供も検討していく必要がある―。

 9月5日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下ワーキング)で、こういった点が議論されました。

9月5日に開催された、「第9回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」

 

在宅医療の整備、「高齢者」と「小児」の2本立てで進めていく必要がある

 2025年には、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが急増していきます。こうしたニーズに効率的・効果的に対応するためには、「病院・病床の機能分化、強化および連携の強化」「地域包括ケアシステムの構築」を進める必要があり、その一環として全都道府県で「地域医療構想」が策定され、現在、その実現に向けた議論が各地域医療構想調整会議で進められています。

 地域医療構想では、地域の一般・療養病床を▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―に再編していくことに加え、在宅医療提供体制の充実も重要テーマの1つとなります。高齢化の進展によって在宅医療ニーズが増加することはもちろんですが、厚労省は、例えば「療養病床に入院する医療区分1患者の7割は在宅や介護施設へ移行する」という目安を示しており、さらに「追加的」な在宅医療ニーズが発生します。

2025年度における在宅医療ニーズは、前者(高齢化の進行)で約100万人、後者(追加的ニーズ)で約30万人と見込まれています。こうした人の行き場がなくならない、つまり「入院もできず、在宅医療体制も整っていない」という事態が生じないよう、在宅医療・介護提供体制を整備していく必要があるのです。

 
在宅医療の整備計画そのものは医療計画に定めます(5疾病5事業及び在宅医療の推進)が、在宅医療・介護連携は市町村が実施すべき事業となっています(市町村の実施する総合事業の1つ)。また市町村ではマンパワー等が限られ、在宅医療推進に必須となる地域医師会との連携関係が必ずしも十分でないことなどを踏まえ、厚労省は今年(2019年)1月に「都道府県が管内市町村をサポートする」ことを求め、具体的に(1)第7次医療計画の改善(2)都道府県全体の体制整備(3)在宅医療の取り組み状況の見える化(データ分析)(4)在宅医療に関する各種ルールの整備(5)在宅医療に関する人材の確保・育成(6)住民への普及・啓発―を実施することを都道府県に依頼しました(ワーキングで2018年末に取りまとめた内容を通知、関連記事はこちら)。

このうち(3)の在宅医療の見える化は、上述の在宅医療のニーズ把握・現在の在宅医療の整備状況把握において不可欠な要素です。在宅医療・介護のニーズ把握には、地域住民(国民健康保険、介護保険の被保険者)の健診・医療・介護データを格納したKDB(国保データベース)のデータを活用することが求められます。具体的には、地域において増加する在宅医療・介護ニーズ(高齢化進行による増加分+地域医療構想実現に伴う追加増分)を把握し、このニーズを「在宅医療」と「介護サービス」とでどう按分して対応するかをKDBを活用して分析するものです(関連記事はこちらこちらこちら)。

しかし、KDBを活用して在宅医療・介護ニーズを把握している自治体は、13(サービス按分への活用は北海道・栃木・千葉・滋賀・京都・大阪・熊本の6自治体、データ収集のみは北海道・岩手・岡山・徳島・愛媛・福岡・沖縄の7自治体)にとどまっています。

 
 こうした状況を放置することはできないことから、国(厚労省)は、KDBデータから在宅医療・介護ニーズの把握等に必要なデータを抽出・集計等し、都道府県に提供することになっています。例えば、在宅医療提供体制については▼在宅医療を実施している医療機関数等▼各医療機関における在宅医療の実施状況―などを、在宅医療ニーズについては▼在宅医療を受けている患者数(要介護度別、居住形態、重症度別等)▼市町村別の患者流出入―などのデータです。今年(2019年)中に在宅医療提供体制データを、今年度(2019年度、つまり2020年3月)中に追加的需要(地域医療構想の実現)の整備目標の設定に係るデータなどが提供される予定です。

 
この点に関して池端幸彦構成員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「現在、在宅医療を1件でも実施していれば『在宅医療を提供する医療機関』とカウントされ、その積み上げが『地域の在宅医療提供体制』となるが、これでは実態と乖離してしまっている。各医療機関における在宅医療の実施状況を詳細に把握し、分析する必要がある」と要望。

また吉川久美子構成員(日本看護協会常任理事)や松本吉郎構成員(日本医師会常任理事)、池端委員らは、「KDBでは在宅療養の医療的ケア児(小児慢性特定疾患児など)を把握できない。在宅医療提供体制は▼高齢者▼小児―の2本立てで考えなければならない。在宅療養する医療的ケア児の情報なども国から都道府県へ提供する必要がある」と提言しました(関連記事はこちら)。

ところで、地域医療構想の実現に伴う在宅医療・介護ニーズの追加増分には、上述した「医療療養に入院する医療区分1患者の70%」のほか、「一般病床に入院する医療資源投入量175点未満の患者(いわゆるC3未満の患者)」「医療療養における入院受療率の地域差解消分」がありますが、松本構成員や新田國夫構成員(日本在宅ケアアライアンス議長)は「ニーズ把握が実態とかけ離れないような工夫・配慮を十分に行ってほしい。機械的な試算に終わってはならない」と指摘しています。

こうした意見を踏まえて、今後、国でデータ収集・分析を進め、順次、都道府県に情報・データの提供が進められます。

在宅医療の整備状況を評価する際、「在宅訪問歯科」の状況も見ていくべき

 ところで、在宅医療の整備については、▼医療計画への目標の設定→▼実績の評価→▼次期計画の改善―といったPDCAサイクルを回しながら進めます。現在、第7期医療計画(2018-2023年度の6か年計画)に沿った取り組みが進められ、2021年度に計画の中間見直しが行われます(2019年度中に国で中間見直し指針を示し、2020年度に都道府県で中間見直しを行う)。

 この点、中間見直しは「実績を評価するための項目を一部追加する」などの小幅見直しにとどめられます。実績を評価する項目を大幅に変更すれば、それまでの都道府県の取り組みが無に帰してしまう可能性もあるためです(関連記事はこちらこちら)。

現在、例えば▼退院支援を実施している診療所・病院数▼訪問診療を実施してい診療所・病院数▼在宅看取り(ターミナルケア)を実施している診療所・病院数▼24時間体制を取っている訪問看護ステーション数、従事者数―などのストラクチャー(構造・設備)評価項目、▼訪問診療を受けた患者数▼在宅ターミナルケアを受けた患者数▼訪問看護利用者数―などのプロセス評価項目が設定されています。

 
今般のワーキングでは、ここに「在宅歯科診療」に関する評価項目を加えてはどうかとの議論が行われました。

厚労省の「在宅歯科医療の提供体制等に関する検討会」(以下、検討会)では、▼在宅歯科医療に関する機能が強化されている診療所数▼【歯科訪問診療料】の【歯科訪問診療補助加算】の算定状況(歯科衛生士が帯同した訪問歯科診療の状況)▼「訪問口腔衛生指導を提供した医療機関数」または「訪問口腔衛生指導を受けた患者数」(同)▼在宅歯科医療に関する連携拠点数―などを新評価項目案としてまとめており、ワーキングでも「在宅歯科医療の充実による口腔衛生管理が極めて重要である」ことを確認しています。今後、検討会の提案を踏まえて、具体的な新評価項目案を厚労省で詰めていきます。

第8期医療計画、まず「地域で目指すべき姿」を描き、そこから目標や課題を考えよ

なお、医療計画の作成・実施・評価というPDCAサイクルを回すにあたり、医療現場等からは「医療計画では数値目標を設定し、これをいかに実現するかのみに終始してしまっている」との批判があります。例えば、上述のように「在宅医療を提供する医療機関●施設」という目標をたて、この目標をクリアするために、1件でも訪問診療や往診を行えば、在宅医療提供医療機関としてカウントし、医療現場の実態や感覚とかけ離れた内容で「目標が達成されている」と判断されることもあるといいます。

この点について川越雅弘参考人(埼玉県立大学大学院・研究開発センター教授)は「目指すべき目標」の設定がなされず、「何をするか」という施策の検討に集中してしまっているところに最大の課題があると指摘します。川越参考人は、東京都国立市における地域医療計画の策定にも参画し、医療関係者や市民とともに「目指すべき姿」を議論し、最終的に【本人の住み慣れた地域、本人の望む場所で不安なく最期まで暮らす】ことに設定。

この目標を実現するために、事例の達成状況から「課題」を抽出。その課題を解決するためにどういった施策を行うか、具体的にどういう項目・指標で課題解決状況を把握するか、とブレイクダウンしていくことの重要性を強調しました。

 
国や自治体の施策にとどまらず、医療機関・企業などあらゆる場面で通用するロジックであり、極めて重要な提言です。2024―29年度を対象とする「第8期医療計画」策定論議では、このロジックを取り入れた、新たな角度での議論が行われることが期待されます。

 

 

 

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高度急性期は3000点、急性期は600点、回復期は225点以上と厚労省が提案-地域医療構想GL検討会(速報)

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在宅医療の推進阻む課題を収集、中長期目標を設定―全国在宅医療会議ワーキンググループ
在宅医療推進に資するエビデンス構築に向け、まず「テーマ」を検討—全国在宅医療会議ワーキング
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在宅医療の推進、医療機関・医師会・行政・学会・国民が協働することが重要―全国在宅医療会議ワーキング
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在宅医療の臨床指標を構築し、国民に「在宅医療のメリット」などを周知―厚労省・全国在宅医療会議