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特許期間中は薬価を維持する仕組みを構築することで、日本国内での新薬開発が活性化―中医協・薬価専門部会

2021.5.18.(火)

「特許期間中は薬価を維持し、特許が切れた後には後発品に市場を譲る仕組み」を構築することで、日本国内での新薬開発が活性化する―。

また「薬価収載後に認められた革新性・有用性」に基づき、新薬創出等加算の適否を改めて判断する仕組みを検討すべきである―。

5月12日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、こういった提言が製薬メーカーサイドからなされました。2022年度の薬価改定に向けて、議論が今後、活発になっていきます。

2022年度の次期薬価制度改革に向けて、製薬メーカー等から意見聴取

2022年度には、診療報酬改定とセットで実施される、いわゆる「通常の薬価改定」が行われます。4月21日の中医協で「検討の進め方」が整理され、5月12日には業界団体からのヒアリングが行われました。

業界団体からの意見は次のように多岐にわたりますが、そのポイントは「特許期間中は薬価を維持し、特許が切れた後には後発品に市場を譲る仕組みを構築すべき」と求めています。これにより本邦メーカーはもちろん、外国メーカーでも「コスト回収の予見可能性が高まり、日本国内で新薬開発を進めることができる」といものです。また、保険適用後に得られた知見に基づいた「プラスの評価」を求めている点にも注目が集まります。

特許期間中は薬価を維持する仕組みを構築すべき(中医協・薬価専門部会1 210512)



▽薬価改定については、「実勢価格が調整幅の範囲に収まらない限り、必然的に薬価は下落する」という現行制度の構造を踏まえた検討が必要である

▽中間年改定については、2021年度改定の延長線上ではなく、薬価制度抜本改革で示された「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」という趣旨に立ち戻り、イノベーションの推進や医薬品の安定供給への影響も十分に考慮した検討が必要である

▽(1)特許期間中の新薬を中間年改定の対象としない(2)新薬創出適応外薬解消等促進加算の対象範囲見直し(3)市場拡大再算定のルール見直し―などを検討すべき

▽「薬価収載後に認められた革新性・有用性」に基づき、新薬創出等加算の適否を改めて判断する仕組みを検討すべき

保険適用後に追加された効能効果を踏まえたプラス評価を検討すべき(中医協・薬価専門部会2 210512)



▽「医薬品を安全かつ安定的に流通させるためのコスト」について、どのようなルールで負担すべきなのかを検討し、今後の医薬品流通、 ひいては医薬品の安定供給に支障が生じないようにすべき

▽再生医療等製品について、保険収載時には製品の特性上、限定的な評価しか得られなかった場合、「保険収載後に追加エビデンスが得られた段階で再度評価できる」ような新たな仕組みを導入すべき

▽ウルトラオーファン(超希少疾患)への効能・効果を持つ医薬品について、特別の加算(ウルトラオーファン加算、加算率30-50%)を新設すべき



このうち「中間年改定」については、欧州製薬団体連合会(efpia)から「2021年度改定では、特許期間中の品目も対象になったことを製薬メーカー本社は警戒している。他国とは全く違うもので、日本での開発が難しくなってきている」と警鐘を鳴らしています。



こうした意見に対し、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)や幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、次のように指摘し、今後の議論に期待を寄せています。

▼ここ最近は、毎年度の薬価改定を行っている。改定のために薬価調査を行うが、市場実勢価格と薬価との乖離率は収束していかない。我が国の「市場実勢価格を重視する」仕組みの下では、当然、薬価を市場実勢価格に近付けていく(薬価を引き下げる)ことになるが、どう考えているのか

▼市場実勢価格と薬価との間の乖離が小さければ(調整幅の範囲内であれば)、薬価は維持される。調整幅の範囲を超えた安価な価格で販売をすれば、我が国の「市場実勢価格を重視する」仕組みの下では、当然、薬価を市場実勢価格に近付けていく(薬価を引き下げる)ことになるが、どう考えているのか

▼医薬品の「保険給付範囲の見直し」により、新薬の評価を高めることが可能になると考えられるが、どう考えるか

「医療保険制度の根幹に関連する論点」もあり、これらの議論は、2022年度薬価改定はもちろん、その後も含めた「薬価制度の在り方」を考える上で極めて重要です。ただし中村洋部会長(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)は「時間も限られており、別の機会に議論する」こととしました。



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