リハビリの包括評価、疾患別リハビリ料の点数差解消など進めよ―日慢協・武久会長、橋本副会長
2021.7.21.(水)
リハビリテーション提供体制が充実する中で、リハビリ報酬の課題が浮上してきており、包括評価の推進、疾患別リハビリテーション料の点数格差解消などを進める必要がある―。
一方、質の高いリハビリ提供を維持するためにも、医療者には高い倫理観が求められ、また効果測定・評価をより適切な手法で行う必要がある―。
日本慢性期医療協会の武久洋三会長と橋本康子副会長は、7月15日の定例記者会見でこのような考えを述べました。
2024年度改定までに疾患別リハビリ料の点数格差解消を求める
日慢協では、かねてから「リハビリ改革」の必要性を説いています。従前は「リハビリ提供体制」が必ずしも十分に整っていなかったことから、「まずは量の拡大」「対象患者の制限」などが行われていましたが、リハビリ提供体制の充実が進む中で「量から質への転換」「対象患者の拡大」が求められていると指摘しています。
これまでにも、武久会長は「リハビリ評価への包括化推進」「リハビリの効果を測定する評価指標の見直し(FIMからBIへ)」などを提案しており(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)、7月15日の定例記者会見でも、次のような提案を行っています。
(1)包括評価の推進
(2)疾患別リハビリ料の点数格差解消
(3)効果評価における「FIM評価」から「BI評価」への移行
(4)「20分1単位」という縛りの柔軟化
(5)急性期入院中の「可動性確保」に向けた取り組みの推進
まず(1)では、さまざまな点について「包括」評価を進め、現場が柔軟に利用しやすい報酬体系とすることを提案しています。
例えば、回復期リハビリテーション病棟では、疾患別リハビリ料の点数のみが出来高で、他の項目は入院料の中に包括評価されています。これに対し、地域包括ケア病棟では、リハビリも含めた多くの項目が入院料に包括評価されています。
患者状態の差もありますが、武久会長は「地域包括ケア病棟のほうが、現場の自由度が増し、使い勝手が良いのではないか。地域包括ケア病棟の届け出は猛烈な勢いで進んでいる」と指摘し、回復期リハビリ病棟でも「疾患別リハビリ料などの包括化を進める」ことを暗に提唱しました。
ただし、包括評価には「医療の質が保てるのか」という疑念も生じます。なぜなら「包括評価されている診療行為(例えばリハビリ)を、極力行わない」ことが「コストの抑制→利益の確保」につながるためです。
そこで、武久会長と橋本副会長は「適切な効果評価が不可欠である」と指摘。(3)の「BIによる効果測定への移行」に期待を寄せるとともに、「動画を撮影し、効果を客観的に検証可能とする」仕組みの導入も改めて提唱しています(関連記事はこちらとこちら)。
スマートフォンの普及などにより、容易に「高画質の動画」を撮影し、保存することが可能になっています。患者の状態を動画で撮影することで、「効果を客観的に評価」でき、何よりも「事後の検証が可能になる」と期待できるのです。ただし、例えば「排泄」や「清拭」「更衣」などは、プライバシー確保のために動画撮影などは困難と考えられ、一部にとどめなければならない点にも留意が必要でしょう。
あわせて橋本副会長は「患者1人1人に、適切な量のリハビリを、適切な方法で提供できるよう、医療者に、倫理観を含めた資質がこれまで以上に求められる」点を強調しました。「利益追求のために、不十分なリハビリ提供しかなされない」のでは、本末転倒であるためで、極めて重要な視点と言えるでしょう。
また(2)の疾患別リハビリ料は、例えば、▼心大血管疾患リハビリ料(I)(1単位): 205点▼脳血管疾患等リハビリ料(I)(1単位):245点▼廃用症候群リハビリ料(I)(1単位):180点▼運動器リハビリ料(I)(1単位):185点▼呼吸器リハビリ料(I)(1単位):175点―などと設定されており、「点数の格差」があります。
しかし、武久会長・橋本副会長は「例えば、栄養状態が悪く、腎機能も悪い患者に対し廃用症候群リハビリを提供し、自立を促していくことは、当該患者に脳血管疾患がなくとも、非常に大変である。しかし、点数は低く設定されており、現場は不満に思っている」「経営を考えれば、『点数の高い患者を選択』してしまいがちである」といった問題点のあることを指摘。遅くとも2024年度の次々回改定までに「点数の格差を解消する」ことを求めています。
あわせて(4)では、「1人のセラピストが、1人に患者に対して、20分間のリハビリを提供する」ことが1単位と定められていることが、「柔軟なリハビリ提供を阻害している」可能性があると指摘。現場の判断で、1人1人の患者状態にマッチした、より適切なリハビリ提供が可能となるよう、(1)の包括化を推進すべきと武久会長・橋本副会長は述べています。
さらにこの考えを広めることで、急性期病棟においても「柔軟なリハビリ」が可能となり、「急性期入院中の関節拘縮」を防止できると武久会長は強調しています。
なお、2020年度の前回診療報酬改定では、従前の「発症等から2か月以内に入棟すること」(正確には2か月以内の入棟患者でなければ「回復期リハビリを要する状態」と判断されず、「回復期リハビリを要する状態の患者割合が8割以上」という算定要件を満たせなくなってしまう)との要件が廃止されました。この点について日慢協で調査を行ったところ(緊急調査のため84病院の回答にとどまった)、「回復期リハビリ病棟入所者(2020年4月1日以降の新規入所者)の3.7%が、『発症等から2か月超を経過した患者』である」ことわかりました。武久会長は「いずれ1割、2割へと増加していくであろう。その際には、必ずしも『回復期の患者』のための病棟ではなくなるので、将来的には名称変更を検討する必要があるかもしれない」とコメントしています。
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