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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

がん化学療法の外来移行を推進するためには【外来腫瘍化学療法診療料】の点数引き上げなどが必要—日病協

2023.7.28.(金)

がん化学療法について「外来移行を進める」方針が示されている。大学病院などでは手厚い人員配置・アメニティの充実などを行ったうえで外来でのがん化学療法を実施しているが、その点から見ると【外来腫瘍化学療法診療料】の点数は低すぎる。外来移行推進に向け点数の引き上げなどを検討する必要がある—。

7月28の日本病院団体協議会・代表者会議後の記者会見で、山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長)はこういった考えを強調しました。

7月28日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見に臨んだ山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長、向かって左)と仲井培雄副議長(地域包括ケア病棟協会会長、向かって右)

病院薬剤師が「医師働き方改革」の重要な鍵となるが、病院は薬剤師確保に難病

働き盛りの時期にがんに罹患する患者が増え、医学医療の進展により予後が良好になる中で、「働きながらがん治療を行う」ケースが増加しています。そうした中では「化学療法を外来で受けられる」環境の整備が非常に重要となります。

このため、2022年度の前回診療報酬改定では、▼【外来腫瘍化学療法診療料】を新設し、「抗がん剤投与を外来で実施する」場合のみならず、様々な副作用への相談体制充実、抗がん剤投与日以外の診療・指導管理等などを評価する▼外来栄養食事指導料に新加算を設け、化学療法を継続のための栄養指導充実を図る▼療養・就労両立支援指導料を充実させ、「働きながら化学療法を含めたがん治療を継続するための支援充実」を図る—などの対応が行われています。

7月20日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(入院・外来医療分科会)では、「がん化学療法の外来移行推進」状況が報告され、例えば次のような状況が明らかになりました。

▽【外来腫瘍化学療法診療料1】について(外来化学療法の専用ベッドを置いた治療室の設置、化学療法経験5年以上の専任常勤医師配置、化学療法経験5年以上の専任看護師の常時配置、化学療法調剤経験5年以上の専任常勤薬剤師配置、専任医療従事者による24時間の患者相談体制整備、急変時等入院体制確保(連携医療機関対応でも可)、レジメン評価委員会開催など)
▼届け出医療機関数(2022年7月)は、外来化学療法加算1の届け出医療機関数(2021年7月)の94%となっている(ほとんどの医療機関が外来化学療法加算1→外来腫瘍化学療法診療料1へ移行している)

▼算定回数(2022年7月のイ(抗がん剤投与日)+ロ(抗がん剤投与日以外))は、外来化学療法加算A(2021年7月)と比べて増加している

▽【外来腫瘍化学療法診療料2】について(外来化学療法の専用ベッドを置いた治療室の設置、化学療法経験のある専任看護師の常時配置、専任常勤薬剤師配置、専任医療従事者による24時間の患者相談体制整備、急変時等入院体制確保(連携医療機関対応でも可)など)
▼届け出医療機関数(2022年7月)は、外来化学療法加算2の届け出医療機関数(2021年7月)の37%にとどまっている(外来化学療法加算2→外来腫瘍化学療法診療料2への移行が必ずしも十分に進んでいない)

▼算定回数(2022年7月のイ(抗がん剤投与日)+ロ(抗がん剤投与日以外))は、外来化学療法加算A(2021年7月)と比べて減少している

外来腫瘍化学療法診療料の取得状況(入院・外来医療分科会(1)1 230730)



▽入院料別の【外来腫瘍化学療法診療料】取得状況を見ると、急性期一般1、7対1専門病院、特定機能(一般病棟7対1)で高くなっている(順に82%、100%、100%)

入院料ごとの外来腫瘍化学療法診療料の状況(入院・外来医療分科会(1)2 230730)



▽少なからぬ医療機関で【外来腫瘍化学療法診療料】を届け出ながら、「すべてのがん化学療法を入院で実施」している(総合入院体制加算、急性期充実体制加算取得病院でも同様)

「すべて入院で化学療法を実施する病院」がある(入院・外来医療分科会(1)3 230730)

急性期充実体制加算・総合入院体制加算取得病院でも「すべて入院で化学療法を実施する病院」がある(入院・外来医療分科会(1)4 230730)



こうした状況について、入院・外来医療分科会の分科会長代理も務める山本議長は「がん化学療法が相当、外来に移行している」と評価したうえで、「さらに外来移行を進めるために、どういった方策が考えられるかを入院・外来医療分科会で議論していくことになる」とコメント。

あわせて、「現在の【外来腫瘍化学療法診療料】の点数が低すぎるのではないか」との考えを山本議長は示しています。

【外来腫瘍化学療法診療料】の点数は次のように設定されています。

【外来腫瘍化学療法診療料1』(外来化学療法の専用ベッドを置いた治療室の設置、化学療法経験5年以上の専任常勤医師配置、化学療法経験5年以上の専任看護師の常時配置、化学療法調剤経験5年以上の専任常勤薬剤師配置、専任医療従事者による24時間の患者相談体制整備、急変時等入院体制確保(連携医療機関対応でも可)、レジメン評価委員会開催などの施設基準をクリアする医療機関で算定)
(イ)抗悪性腫瘍剤を投与した場合:700点(患者に抗がん剤を投与した場合、1か月に3回まで算定可能)
(ロ)抗悪性腫瘍剤の投与その他必要な治療管理を行った場合:400点((イ)を算定する日以外の日に、患者に抗がん剤投与・その他の必要な治療管理を行った場合、週1回に限り算定可能)

【外来腫瘍化学療法診療料2】(外来化学療法の専用ベッドを置いた治療室の設置、化学療法経験のある専任看護師の常時配置、専任常勤薬剤師配置、専任医療従事者による24時間の患者相談体制整備、急変時等入院体制確保(連携医療機関対応でも可)などの施設基準をクリアする医療機関で算定)
(イ)抗悪性腫瘍剤を投与した場合:570点(1か月に3回まで)
(ロ)抗悪性腫瘍剤の投与その他必要な治療管理を行った場合:270点((イ)を算定する日以外の日に、患者に抗がん剤投与・その他の必要な治療管理を行った場合、週1回に限り算定可能)

【小児加算】:200点(患者が15歳未満の小児である場合、上記所定点数に加算する)

【連携充実加算】:150点(1の(イ)を算定した患者に対し、医師または医師の指示を受けた薬剤師が、副作用の発現状況、治療計画などを文書で提供し、患者の状態を踏まえて必要な指導を行った場合、1か月に1回に限り算定可能)

2022年度改定で新設された外来腫瘍化学療法診療料の概要



この点数設定について山本議長は「大学病院などでは、医療安全を考慮し、外来対応のために自院を手厚く配置し、アメニティへの配慮なども行っている。そうしたコストを勘案したとき、外来腫瘍化学療法診療料の点数は弱い(低い)。外来移行をさらに推進するためには、より手厚い評価を行う必要がある」と強調しています。

2024年度からの第4期医療費適正計画においても「外来での化学療法実施」推進が重要ポイントの1つとなっており、また、何よりも「がん患者に生活・仕事にも配慮した治療を進める」ために、今後、入院・外来医療分科会や中央社会保険医療協議会で、どういった対応策が練られていくのか注目が集まります。



また山本議長、仲井培雄会長(地域包括ケア病棟協会会長)から、次のような議論が日病協の代表者会議で行われたことも報告されています。日病協は、地域医療機能推進機構や地域包括ケア病棟協会、日本病院会など15の病院団体で構成され、「診療報酬改定に向けて、病院団体で足並みをそろえ、統一した要望・要請・提言」を行うために組織されました。あわせて「病院が直面する諸問題」についても積極的に議論し、意見を発信しています。

7月6日の入院・外来医療分科会で、地域包括ケア病棟に「直接入棟した患者」と「一度他病棟(急性期一般1など)に入り、そこから転棟してきた患者」との間でリハビリ実施に大きな差がある(前者は後者よりもリハビリ実施が少ない)とのデータが示されたが、後者(他病棟からの転棟患者)は「回復し、リハビリ実施が可能」として選択された患者である点を十分に踏まえるべき

直接入棟患者と、他病棟を経て入棟する患者との比較7(入院・外来医療分科会(2)8 230706)



7月20日の入院・外来医療分科会で「D to P with N形態のオンライン診療(「看護師が患者と対面し、直接サービスを提供する」+「オンラインで遠方の医師から診療を受ける」)がとりわけ僻地で医療を発揮するため、拡充に向けた支援が必要である」旨の議論が行われ、中でも「特定行為研修修了者の活躍」に注目が集まったており、その方向で進めるべきである。ただし、特定行為研修修了者の養成は厚労省目標から大きく遅れており、「まず医師働き方改革をサポートするための活用」(タスクシフト先)が重視されており、そこでの充足が先になると見ることもできる(関連記事はこちらこちら

D to P with N(訪問看護+オンライン診療)が有効である(中医協総会8 230517)



後発医薬品の使用促進が求められているが、まず「安定供給」を確保することが先である

▽病院薬剤師の確保が喫緊の課題となっている。診療報酬では、これまで「医科(とりわけ入院)での評価」(病棟薬剤業務実施加算)によって病院薬剤師確保をサポートしてきているが、「調剤」「外来」も含めた「病院薬剤師確保に向けた手当て」を考えるなければ、解決に糸口が見つからない(関連記事はこちら(中医協での調剤報酬論議)こちら(日病協の要望)こちら(薬剤師偏在指標など)



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