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医療費助成対象となる小児慢性特定疾病に、シア・ギブス症候群や先天性食道閉鎖症など13疾患追加―指定難病検討委員会・小慢検討委員会(1)

2024.2.7.(水)

医療費助成の対象となる小児慢性特定疾病に、(1)シャーフ・ヤング(Schaaf-Yang)症候群(2)ロスムンド・トムソン(Rothmund-Thomson)症候群(3)第144番染色体父親性ダイソミー症候群(鏡-緒方症候群)(4)トリーチャーコリンズ(Treacher Collins)症候群(5)シア・ギブス(Xia-Gibbs)症候群(6)乳児発症性STING関連血管炎(7)遺伝性高カリウム性周期性四肢麻痺(8)遺伝性低カリウム性周期性四肢麻痺(9)非ジストロフィー性ミオトニー症候群(10)限局性皮質異形成(11)脊髄空洞症(12)先天性食道閉鎖症(13)特発性後天性全身性無汗症—の13疾患を追加する—。

2月6日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」と社会保障審議会・小児慢性特定疾病対策部会「小児慢性特定疾病検討委員会」との合同会議で、こういった内容が了承されました。

なお「指定難病の追加」も議論が続いており、そちらは別稿で報じます。

慢性・生命を脅かす・長期のQOL低下・長期の高額医療費となる疾患に医療費助成

小児慢性特定疾患は、いわば「小児の指定難病」という位置づけで、該当疾患に罹患した小児は医療費助成の対象となります。これまでに845疾患が指定されており(2022年4月1日時点)、順次対象疾患が拡大されていきます。

小児慢性特定疾患に指定されるには、(1)慢性に経過する疾病である(2)生命を長期にわたって脅かす疾病である(3)症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾患である(4)長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾患である―という4要件をすべて満たすことが求められます。日本小児科学会の「小児慢性疾病委員会」において、4要件を満たすであろう疾患を「候補」として選定し、小児慢性特定疾病検討委員会で4要件をすべて満たすか否かを確認したうえで、所要の手続きを経て対象疾患に追加されます。

2月6日の小児慢性特定疾病検討委員会では、次の13疾患と対象に追加することを了承しました。

●追加13疾患の一覧はこちら
●追加13疾患の個票はこちら



【染色体または遺伝子に変化を伴う症候群神経・筋疾患】(5疾患)
▽シャーフ・ヤング(Schaaf-Yang)症候群
→精神運動発達遅滞、新生児期の筋緊張低下、乳児期の哺乳不良、遠位側優位の関節拘縮などを特徴とする先天異常症候群
→インプリンティング遺伝子であるMAGEL2の短縮型変異が原因
→2022年の全国調査では約30例が報告されている
→哺乳不良、呼吸障害などのために早期から生涯にわたって医療管理を必要とする
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間50万円、入院では年間100万円程度

▽ロスムンド・トムソン(Rothmund-Thomson)症候群(RTS)
→type1とtype2が存在し、多形皮膚萎縮症、骨の変形を特徴とする
→type2では高確率に骨肉腫を合併し、白内障はtype1に認められる
→type2はRECQL4が、type1の一部はANAPC1が病因遺伝子である
→RECQL4異常により、ほかにBaller-Gerold症候群(バレー・ジェロルド症候群、BGS)、RAPADILINO症候群(ラパデリノ症候群)の2つのRTS類縁疾患が発症する。BGSとラパデリノ症候群はRTSと表現型が極めて類似しており、RECQL4遺伝子に病的バリアント(遺伝子変異)が認められた場合はRTSと同様に扱う
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間30万円、入院では年間700万円程度

▽第144番染色体父親性ダイソミー症候群(鏡-緒方症候群)
→羊水過多、胎盤過形成、小胸郭による呼吸障害、腹壁異常、特徴的な顔貌を示す
→14番染色体長腕遠位部(14q32.2)に存在するインプリンティング遺伝子の発現異常により生じる
→治療法は未確立で、対症療法が中心となる
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間60万円、入院では年間780万円程度

▽トリーチャーコリンズ(Treacher Collins)症候群
→外耳道閉鎖あるいは中耳の耳小骨の形態異常、頬骨弓低形成による眼瞼裂斜下、下眼瞼外側の部分欠損、顔面骨低形成による小下顎などを特徴とする
→頬骨や下顎の低形成は摂食障害や呼吸障害を引き起こすことがあり、耳小骨の形態異常や中耳腔の低形成により伝音性難聴を来す。口蓋裂や後鼻腔閉鎖・狭窄を伴うこともある
→顎顔面多領域にわたる症状は小児期以降も軽快せず、成人期以降も持続する
→多くの場合、常染色体顕性遺伝形式(TCOF1、POLR1B、POLR1D)をとるが、常染色体潜性遺伝形式(POLR1C、POLR1Dの一部)のこともある
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間60万円、入院では年間100万円程度

▽シア・ギブス(Xia-Gibbs)症候群
→運動発達遅滞、中等度から重度の知的障害、言語障害、筋緊張低下、脳構造異常、てんかんを来す症候群である
→睡眠時無呼吸や不随意運動、自閉、行 動障害、眼科的異常、成長障害などを合併することがある。
→AHDC1遺伝子の変異もしくは微細欠失を原因とする
→常染色体顕性遺伝形式の先天異常症候群であり、多くは突然変異により発症する
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間30万円、入院では年間50万円程度



【免疫疾患】(1疾患)
▽乳児発症性STING関連血管炎(saleVI)
→STINGの機能獲得変異によって慢性的なI型IFNシグナルの活性化を来し、炎症が持続するI型IFN異常症である
→乳児期早期から、間質性肺疾患、皮疹、発熱、関節炎などの症状を認め、特に呼吸障害によるQOLの低下を招く
→免疫抑制薬やステロイドによる治療効果は限定的であり、いまだ有効な治療法が確立されていない
→死亡率は約20%、死亡年齢の中央値は16歳であり、ほとんどが呼吸器合併症によるものとされている
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間50万円、入院では年間500万円程度



【神経・筋疾患】(5疾患)
▽遺伝性高カリウム性周期性四肢麻痺
→発作性の骨格筋の脱力・麻痺を来す遺伝性疾患で、発作時の血清カリウム値が高値を示す特徴がある
→眼瞼・手指などに軽い筋強直(ミオトニー)を有することがある
→麻痺発作は、遺伝性低カリウム性周期性四肢麻痺(次項)より程度は軽く、持続は短い事が多いが、高カリウム血症による致死性不整脈の出現の危険がある
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間12万円、入院では年間60万円程度

▽遺伝性低カリウム性周期性四肢麻痺
→発作性の骨格筋の脱力・麻痺を来す遺伝性疾患で、発作時に血清カリウム値が著明に低下する特徴がある
→発作は数時間から半日程度であるが、数日持続することもある
→思春期ごろから発作がはじまることが多い
→回数は「一生に数回」から「ほぼ連日」までさまざまであり、中年以降発作回数は減る
→永続的筋力低下を4分の1程度に認める
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間12万円、入院では年間60万円程度

▽非ジストロフィー性ミオトニー症候群
→筋線維の興奮性異常による筋強直(ミオトニー)現象を主徴とし、筋の変性(ジストロフィー変化)を伴わない遺伝性疾患である
→臨床症状や原因遺伝子から先天性ミオトニー、先天性パラミオトニー、ナトリウムチャネルミオトニーなどに分類される
→運動開始困難、易転倒性などが主な症状であるが、乳幼児期から呼吸・嚥下障害を来したり、突然死に至る例が報告されている
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間10万円、入院では年間100万円程度

▽限局性皮質異形成
→大脳皮質における局所的な発生異常(神経細胞の発生、増殖、遊走の障害)に関連した病巣により、主としててんかん発作を呈する
→限局性皮質異形成の存在部位に応じて、てんかん発作症状は多彩である
→主に乳幼児から学童期に発症するが、中学生以降あるいは成人でも発症する。乳幼児ではてんかん性脳症(てんかんが認知機能を進行性に障害する)を呈することもある
→MRIにより限局性の皮質を主体とする特徴的な異常所見で検出される一方、MRI異常を欠き病理診断で明らかになる場合もある
→大脳皮質神経細胞の配列が様々な程度に乱れる
→病理組織学的所見の特徴からタイプ分類がなされる
→てんかん重積状態になり重篤な後遺症を残すこともある
→精神発達遅滞などの他の障害を伴うこともある。
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間50万円、入院では年間300万円程度

▽脊髄空洞症
→脊髄内に空洞が形成され、小脳症状、下位脳神経症状、上下肢の筋力低下、温痛覚障害、自律神経障害、側弯症などの多彩な神経症状、全身症状を呈する疾患であり、種々の原因で発症する
→約50%はキアリ奇形を基礎疾患とし、ほか二分脊椎症や外傷、腫瘍、クモ膜炎等を基礎疾患とする
→小児期と成人期に好発し、小児期発症例では高率に側弯症を合併する
→MRIにより脊髄空洞所見を認めることで診断され、また原因疾患の鑑別がなされる
→約70%で外科手術が必要となる
→神経症状出現例では、約70%で症状の持続や間歇的な進行を呈し慢性の経過をとる
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間30万円、入院では年間150万円程度



【慢性消化器疾患】(1疾患)
▽先天性食道閉鎖症
→先天的に食道が盲端に終わり、閉鎖している疾患である
→多くは気管食道瘻を伴わず、一部は食道が閉鎖せずに気管食道瘻のみを有する
→外科的治療なくしては経口摂取・経腸栄養が困難で長期生存できない
→新生児期の根治術(食道食道吻合術)が施行されることが多いが、重症心疾患・染色体異常・long gap例などでは胃瘻などの姑息手術や多段階手術が施行される
→術後の吻合部狭窄や縫合不全、胃食道逆流症、気管軟化症、経口摂取困難などの合併症を有する症例では著明なQOL低下を認め、長期間の通院、入院加療を要する
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間30万円、入院では年間120万円程度



【皮膚疾患】(1疾患)
▽特発性後天性全身性無汗症
→運動時や暑熱環境等において汗をかくことができない疾患を無汗症と呼び、先天性と後天性に分けられる
→特発性後天性全身性無汗症は、後天的に明らかな原因無く、体の広範囲の無汗を生じ、自律神経異常および神経学的異常を伴わない疾患と定義される
→患者は体温調節に必要な汗をかくことができなくなるた め、熱中症を来しやすい
→患者自己負担を含めた医療費は、通院では年間40万円、入院では年間100万円程度



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