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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

「総合診療医」の育成進め、高齢患者の機能が落ち切る前の全身管理・リハビリにより「寝たきり防止」目指せ—日慢協・橋本会長

2022.7.22.(金)

高齢化が進展する中では「シームレスな医療・介護連携」が重要課題とされるが、「急性期医療→慢性期医療のシームレス化」も実現できていないのが実際である。このため、多くの高齢者で筋委縮・関節拘縮・低栄養・脱水などが進み、「寝たきり患者」を生んでしまう—。

高齢患者の寝たきり防止のためには、「身体機能が落ち切る」(要介護5・FIM13点)前に適切なリハビリや栄養管理を行うことが極めて重要で、そこでは「高齢者の全身的な治療ケアを行える総合診療医」の関与が必要不可欠である—。

専門研修の中に「総合診療機能研修」を織り込んで、「すべての医師が、一定程度、高齢患者の全身管理を行える」能力を身に着けるとともに、キャリア転換期を迎える医師に「総合診療医としてのリトレーニングを行う」ことが必要である—。

日本慢性期医療協会の橋本康子新会長が7月21日に定例記者会見を開き、こうした考えを強調しました。

日本慢性期医療協会の、橋本康子会長(橋本病院:香川県三豊市、向かって右)と池端幸彦副会長(池端病院:福井県越前市、向かって左)

日本慢性期医療協会の矢野諭副会長(多摩川病院:東京都調布市、向かって右)と安藤高夫副会長(永生病院:東京都八王子市、向かって左)

日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長(豊中平成病院:大阪府豊中市、向かって右)と富家隆樹事務局長(富家病院:埼玉県ふじみ野市、向かって左)

高齢患者を寝かせ切りにすれば、1週間で筋委縮・関節拘縮が始まる

今年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。高齢化の波は入院医療現場にも到来しており、2020年の患者調査では「入院患者の75%が65歳以上の高齢者であり、55%が75歳以上の後期高齢者」となっています。

このように高齢化が進展する中で「医療介護連携を強化し、医療→介護のシームレス化を実現する」ことが重視されていますが、橋本会長は「急性期医療→慢性期医療のシームレス化もほとんど実現できていないのが実際である」と強調します。例えば脳梗塞などの急性期疾患患者では、抗血栓療法などの急性期治療と同時に「全身管理・リハビリが」を早期に行うことが求められます。「適切な全身管理・リハビリがなされず、身体機能が落ち切ってしまい改善が困難な状況に陥る」(=寝たきりになる)ケースが少なくありません。

橋本会長は「急性期段階で、適切な全身管理・リハビリを行わずに『寝かせ切り』にしておくだけで、筋肉量は1週間に10-15%程度の割合で低下し、関節は1週間程度で拘縮が始まる」点を強調。

筋委縮・関節拘縮は早期に生じる(日慢協会見1 220721)



あわせて自院(千里リハビリテーション病院:大阪府)での研究結果をもとに、▼最重度の要介護5になると「寝たきり状態」の改善は困難だが、要介護4であれば適切なリハビリで要介護1にまで改善可能である▼FIM(Functional Independence Measure、運動ADLと認知ADLの2軸で対象者のADLを評価する指標。点数が高いほど「自立」し、点数が低いほど「要介助」となる)のADL得点が「13点」(最低点数、事実上の寝たきり)にまで落ちると「寝たきり状態」の改善は困難だが、「30点程度」(座位の保持可能)であれば4割の患者が、「50点程度」(つかまり立ち可能)であれば9割の患者が、適切なリハビリにより「歩いて退院できる」状態にまで改善可能である—点を紹介し、「機能が落ち切るまえに(早期に)、適切な全身管理・リハビリを提供することが極めて重要である」と強く訴えました。

要介護5・FIM13点に落ち切るまえの介入で、高齢者でも十分な身体能力改善が可能である(日慢協会見2 220721)



さらに「早期の全身管理・リハビリ提供」を可能とするためには、「患者の全身的な治療・ケアを行える総合診療医」の育成・配置が不可欠となります。このため、次の2点の取り組みを橋本会長は提言しています。

(1)臨床研修(医師免許取得後、2年間以上の臨床研修を修了しなければ臨床に携われない)後、2年間程度の「総合診療機能研修」を必修化する(専門医取得を目指す専門研修の中に組み込むなど)

新人医師は、すべて一定程度の総合診療能力獲得を目指す(日慢協会見3 220721)



(2)専門医終了後や開業・高刑事などの「キャリア転換期」を迎える医師向けに、「総合診療医としてのリトレーニング」を行う

キャリア医師の総合診療能力向上を目指す(日慢協会見4 220721)



このうち(1)は、将来的に「すべての医師が、高齢者の全身管理・リハビリについて一定程度の知識・技術を持つ」ことを目指すものです。今後、日本専門医機構や関連学会などに積極的に働きかけていくことが予想されます。

後者(2)のリトレーニングについては、日慢協がすでに「総合診療医認定講座」(6日間の講義+症例検討)を行い、300名以上の医師が参加しています。橋本会長は、これをグレードアップし「日慢協会員病院での実習」を行う考えを明らかにしています。例えば総合診療医としての能力獲得を目指す高度急性期・急性期の医師らが、地域多機能病院において「実臨床の場で高齢患者の全身管理・リハビリなどを学ぶ」イメージです(もちろん、すでに地域多機能病院で勤務する医師が、さらなる総合診療能力向上を目指すことも想定)。実習プログラムプの作成などの詳細は今後詰めていくことになりますが、例えば「実習当初は、週に数日程度の集中的な濃密な実習を受け、経験を一定程度積んできた後は、週に1日から月に1日程度のペースで実習を受け、知識・スキルを磨いていく」ことなどが考えられそうです。今後の動きに注目が集まります。

【更新履歴】図表を追加しました



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