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「3月分」データでも、在院日数短縮と利用率上昇と両立できず―病院報告、2018年3月分

2018.7.6.(金)

 「10月分」「11月分」「12月分」「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とが両立できていたが、「2月分」「3月分」データでは、両立できていない―。

 こうした状況が、厚生労働省が7月5日に公表した2018年3月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2018年2月から3月にかけて、入院患者は減少、外来患者は横ばい

 厚労省は毎月、病院の(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2018年2月分の状況はこちら、2018年1月分の状況はこちら、2017年12月分の状況はこちら)。

 今年(2018年)3月における(1)の1日平均患者数は、病院全体で入院126万9911人(前月比2万5406人・2.0%減)、外来136万1499人(同4518人・0.3%増)となりました。入院は減少、外来はほぼ横ばいという状況です。

医療法上の病床種別に入院患者数の動向を見ると、▼一般病床:69万6502人(同2万3677人・3.3%減)▼療養病床:28万7601人(同1265人・0.4%減)▼精神病床:28万4168人(同406人・0.1%減)▼結核病床:1580人(同42人・2.6%減)―などという状況です。
病院報告(2018年3月)1 180705
 
 (2)の平均在院日数に目を移すと、病院全体で28.1日となり、で前月と比べて0.2日の短縮となりました。病床種別に見ると、▼一般病床:16.4日(前月と比べて0.3日短縮)▼療養病床:136.9日(同1.2日短縮)▼介護療養病床:288.9日(同9.6日短縮)▼精神病床:258.0日(同10.2日短縮)▼結核病床:62.5日(同2.4日短縮)―となり、全病床種類で短縮しています。
病院報告(2018年3月)2 180705
  
 次に(3)の月末病床利用率を見てみると、病院全体では77.6%で、前月から5.0ポイント低下してしまいました。病床種別に見ると、▼一般病床:71.4%(前月比8.3ポイント低下)▼療養病床:87.8%(同0.8ポイント低下)▼介護療養病床:90.0%(同0.7ポイント低下)▼精神病床:85.2%(同0.3ポイント低下)▼結核病床31.0%(同0.3ポイント上昇)―という状況です。
病院報告(2018年3月)3 180705
 

2月に続き、3月分データでも平均在院日数短縮と病床利用率向上を両立できず

 ここで、一般病床における「3月分」の平均在院日数の推移を見てみると、次のような状況です。

▼2012年:17.9日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2013年:17.7日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日短縮)

▼2014年:17.4日(厚労省のサイトはこちら

(0.8日短縮)

▼2015年:16.6日(厚労省のサイトはこちら

(0.5日短縮)

▼2016年:16.1日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2017年:16.3日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日延伸)

▼2018年:16.4日(厚労省のサイトはこちら

2017年まで一貫して短縮傾向にありましたが、2018年にかけてわずかに延伸しており、今後の動向を注視していく必要があります。

 
 一方、月末病床利用率は、次のように推移しています。

▼2012年:72.4%(厚労省のサイトはこちら

(1.4ポイント低下)

▼2013年:71.0%(厚労省のサイトはこちら

(1.8ポイント向上)

▼2014年:72.8%(厚労省のサイトはこちら

(0.7ポイント向上)

▼2015年:73.5%(厚労省のサイトはこちら

(0.9ポイント向上)

▼2016年:74.4%(厚労省のサイトはこちら

(0.4ポイント低下)

▼2017年:74.0%(厚労省のサイトはこちら

(2.6ポイント低下)

▼2018年:71.4%(厚労省のサイトはこちら

 2016年以降、悪化傾向にあります。

 
 メディ・ウォッチでも度々お伝えしていますが、平均在院日数の短縮は▼急性期病院における重症患者割合の向上▼DPC対象病院の「II群要件」の1つである「診療密度」向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—につながる、非常に重要なテーマです。

 ただし、在院日数短縮は「空床」を生むことにもつながる(病床利用率が低下)ため、▼かかりつけ医等と連携した重症紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策とセットで取り組まなければいけません。

 これまで「10月分」「11月分」「12月分」「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上(つまり新規入院患者の獲得)」とが両立した理想的な展開で進んでいることが分かりましたが、「2月分」「3月分」からは、両立できていません。「3月分」データからは平均在院日数の短縮が進んでいるので、「新規患者の獲得」に課題があることが分かります。病院報告データをより長期的に分析していく必要があります。なお我が国は人口減少社会に入っており、地方によっては、すでに患者数そのものの減少が始まっています。また近い将来、都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まることが確実であり、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を進めていくことも求められます(関連記事はこちらこちらこちら)。
 
 
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