「2月分」データでは、在院日数短縮と利用率上昇との両立ならず―病院報告、2018年2月分
2018.6.11.(月)
「10月分」「11月分」「12月分」「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とが両立できていたが、「2月分」データを見ると、必ずしも両立できていない―。
こうした状況が、厚生労働省が6月8日に公表した2018年2月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。
例年、2月は入院・外来ともに患者数が前月より大きく増加する
厚労省は毎月、病院の(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2018年1月分の状況はこちら、2017年12月分の状況はこちら、11月分の状況はこちら)。
今年(2018年)2月における(1)の1日平均患者数は、病院全体で入院129万5317人(前月比3万2604人・2.6%増)、外来135万6981人(同8万7243人・6.9%増)となりました。入院・外来ともに大きく増加しています。もっとも外来の大幅増は1月の大幅減の反動を受けた見かけ上のものと言えます(例年どおりの傾向)。
医療法上の病床種別に入院患者数の動向を見ると、▼一般病床:72万129人(同2万8971人・4.2%増)▼療養病床:28万8866人(同2961人・1.0%増)▼精神病床:28万4574人(同705人・0.2%増)▼結核病床:1622人(同31人・1.9%減)―などという状況です。結核病床をのぞき、入院患者数は増加しました。
(2)の平均在院日数に目を移すと、病院全体で28.3日となり、で前月と比べて1.4日の短縮となりました。病床種別に見ると、▼一般病床:16.7日(前月と比べて0.5日短縮)▼療養病床:138.1日(同10.9日短縮)▼介護療養病床:298.5日(同35.7日短縮)▼精神病床:268.2日(同21.1日短縮)▼結核病床:64.9日(同5.2日短縮)―となり、全病床種類で短縮となりました。
次に(3)の月末病床利用率を見てみると、病院全体では82.6%で、前月に比べて0.3ポイント低下してしまいました。病床種別に見ると、▼一般病床:79.7%(前月比0.8ポイント低下)▼療養病床:88.6%(同0.2ポイント上昇)▼介護療養病床:90.7%(同0.7ポイント上昇)▼精神病床:85.5%(同0.1ポイント上昇)▼結核病床30.7%(同0.4ポイント低下)―という状況です。
2月分データでは、「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とは両立できず
ここで、一般病床における2月分の平均在院日数の推移を見てみると、次のような状況です(厚労省のサイトはこちら、ページ下部に毎月の状況がまとめられています)。
▼2012年:17.9日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.2日短縮)
↓
▼2013年:17.7日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.2日短縮)
↓
▼2014年:17.5日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.5日短縮)
↓
▼2015年:17.0日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.5日短縮)
↓
▼2016年:16.5日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(増減なし)
↓
▼2017年:16.5日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.2日短縮)
↓
▼2018年:16.7日(厚労省のサイトはこちら)
2016年・17年で「底を打った」ように見えますが、今後の動向を注視していく必要があります。
一方、月末病床利用率は、次のように推移しています。
▼2012年:78.9%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.6ポイント低下)
↓
▼2013年:78.3%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(1.1ポイント低下)
↓
▼2014年:77.2%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(3.5ポイント低下)
↓
▼2015年:73.7%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(2.9ポイント上昇)
↓
▼2016年:76.6%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(1.2ポイント上昇)
↓
▼2017年:77.8%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(1.9ポイント上昇)
↓
▼2018年:79.7%(厚労省のサイトはこちら)
2015年に底を打ち、その後、上昇傾向にあるようです。
メディ・ウォッチでは度々お伝えしていますが、▼急性期病院における重症患者割合の向上▼DPC対象病院の「II群要件」の1つである「診療密度」向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—につながるなど、平均在院日数の短縮は全病床で実現すべきテーマです。
ただし、在院日数短縮は「空床」を生むことにもつながる(病床利用率が低下)ため、▼かかりつけ医等と連携した重症の紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策とセットで取り組むことが極めて重要です。
これまで「10月分」「11月分」「12月分」「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上(つまり新規入院患者の獲得)」とが両立した理想的な展開で進んでいることが分かりましたが、「2月分」からは、これらが必ずしも両立できていないようです。今後も、病院報告データをより長期的に俯瞰し、例えば病床利用率を見ながら「病院経営」の動向を、また平均在院日数を見ながら「医療の質」の向上度合いを見ていくことが必要でしょう。
なお我が国は人口減少社会に入っており、都市部を除く地方では、すでに患者数そのものが減少し始めています。こうした地域では新規入院患者の獲得努力にも限界があり、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を進めていくことが必要です(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
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