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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

オンライン診療での緊急避妊薬処方、産科医へのアクセス困難な場合に限定―オンライン診療指針見直し検討会

2019.6.3.(月)

 初診対面診療の例外として「オンライン診療での緊急避妊薬処方」を認めるが、▼地理的条件や犯罪被害などアクセスが困難な場合に限る▼処方可能な医師は産婦人科の専門医や研修を受けた医師に限定する▼3週間後の産婦人科受診を確実にする▼院内処方は認めず、薬局において1錠のみ調剤し、薬剤師の目の前で内服する―などの要件を定める。

 こういった方針が5月31日に開催された「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)で固められました(関連記事はこちらこちらこちら)。

 厚生労働省で「アクセスが困難な場合」を、指針にどのように記載するのか注目されます。

5月31日に開催された、「第5回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」

5月31日に開催された、「第5回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」

 

「初診対面原則」の例外として、緊急避妊薬のオンライン診療での処方を可能に

 昨年(2018年)3月末に、スマートフォンやタブレット端末などの情報通信機器を活用したオンライン診療を、安全かつ有効に実施するための指針が取りまとめられました。スマートフォン等の画像には、▼触診ができない▼匂いなどを覚知できない―といった限界があるため、オンライン診療においては、▼初診は対面で行わなければならない▼事前の対面診療で患者の情報等を十分に収集し、医師と患者の相談に基づいてオンライン診療を実施しなければならない―などの原則が定められています【初診対面原則】。

 この点、【初診対面原則】の例外として、「緊急避妊薬(アフターピル)のオンライン診療による処方を認めてはどうか」との要望が出ています。性交後72時間以内に服用することで8割程度の確率で「望まぬ妊娠」を避けることが可能ですが、例えばレイプ被害者などでは産婦人科受診を躊躇し、一方で▼正しい情報提供が十分でなく、服用を断念する女性も少なくない▼医師によらない不適切な医薬品の提供(偽薬も出回っている)―などの状況があります。これが、年間16万件にものぼる人工妊娠中絶にもつながっていると考えられます。そこで、「オンライン診療での処方」を認めることで、望まぬ妊娠の回避につなげられるのではないかと期待されているのです。

検討会では「ニーズがある」ことを確認したうえで、▼オンライン診療による処方のハードルをむやみに下げれば「薬害」に結びついてしまうこと▼妊娠の有無を事後に必ず確認する必要があること―などを踏まえ、「厳格な要件を設定する」方向で議論を進めており、今般、厚労省が次のように要件整理な考え方を提示しました。「対面受診」を原則としたうえで、例外的に「初診からのオンライン診療での処方」を可能とするものです。

【原則】
▽緊急避妊薬に対する正しい情報提供などを行い、インターネットや自治体などから「対面診療可能な医療機関」(地域の産婦人科医、研修を受けたかかりつけ医や産婦人科以外の医師)を紹介し、「対面診療における受診」を促す

【例外】
▽近くに受診可能な医療機関がない場合(地理的な要因のほか、性犯罪による対人恐怖がある場合)に限り、産婦人科医や研修を受けた医師によるオンライン診療での緊急避妊薬処方を認める
オンライン診療指針見直し検討会 190531の図表
 
 この点、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「何もなくとも(犯罪被害などでなくとも)、産婦人科受診にハードルの高さを感じる女性は少なくない。『産婦人科受診に精神的負担のあるとき』もオンライン診療を可能とすべき。諸外国では薬局で緊急避妊薬を購入できるところもある」と提案しました。

 山口構成員の提案の趣旨に多くの構成員は賛同しましたが、「『精神的負担のあるとき』との表現はあまりに広すぎる。諸外国と我が国では分化も異なる。対象が無制限に広がってはいけない」との指摘も多数でました(今村聡構成員:日本医師会副会長、黒木春郎構成員:医療法人社団嗣業の会理事長・日本オンライン診療研究会会長ら)。厚労省で、山口構成員の提案の趣旨を踏まえながら、一方で対象が広範になりすぎないような表現を検討することになっています。

緊急避妊薬処方に関する研修を受けた医師をリスト化し、厚労省が公表

 また、緊急避妊薬をオンライン診療で処方する際の具体的な要件としては、次のような項目が設定されることになります。

(1)処方する医師を産婦人科医師と研修受講医師に限定する(研修では、▼利用者が緊急避妊薬が必要か、あるいは既に妊娠していないか等を、月経等の情報から的確に判断し、緊急避妊薬の効果、成功率を伝達する▼利用者が性犯罪を受けた可能性がある場合、警察への相談を促すとともに、性犯罪・性暴力被害者支援のためのワンストップ支援センターや婦人相談所における相談支援があること等も伝達する▼18歳未満で性的虐待を受けた疑いがある場合は児童相談所に通報し、同時にカウンセリングを実施する▼性感染症のリスクを教え、問診でスクリーニングを行い、性感染症の疑いがある利用者には医療機関等の受診を適 切に促す▼特に複数回の利用者に対しては適切な避妊方法を推奨し、必要に応じて低用量ピルの使用を奨める―などの内容を盛り込む)こと

(2)研修受講者を厚労省ホームページで公表する(オンライン診療で緊急避妊薬を処方可能な医師をリスト化し、国民が探せるようにしておく)

(3)薬剤師の前での「1錠のみ」の「内服」等ルールを整備する(「院外処方→薬局での調剤」のみとし、「院内処方→薬剤の郵送」は不可とする)

(4)薬剤師に対する産婦人科研修を強化する

(5)内服後3週間後には産婦人科を受診することを担保する

(6)インターネットパトロール等を通じた不適切広告への指導を徹底する

これらの要件は、オンライン診療による緊急避妊薬処方の流れとも合致するものです。具体的には▼患者が産婦人科医・研修受講医をオンラインで受診する → ▼医師は問診等を行い、緊急避妊薬処方の必要性等を十分に確認し、処方を行い、処方箋を郵送等する。併せて3週間後に産婦人科を受診するよう促す → ▼処方箋を受療した患者が、薬局に赴き、薬剤師が「1錠」のみを調剤する。薬剤師の目の前で内服する → ▼患者は3週間後に産婦人科を受診し、妊娠していないことを確認してもらい、必要があれば処置等を受ける―というものです。

(1)や(3)の「産婦人科医以外への研修」や「薬剤師への研修」がどのような内容になるのかはこれから検討されますが、日本産科婦人科学会や日本産婦人科医会は「積極的に協力する」考えを示しています。

また実効性を持たせるためには、(2)の「オンライン診療で緊急避妊薬を処方できる医師」(つまりオンライン診療を行う産婦人科医、あるいは研修受講医)のリストが非常に重要となります。例えば北海道や沖縄県の患者が近隣の「オンライン診療医療機関」が分からずに、東京の医師が実施するオンライン診療を受けた場合、処方箋の郵送期間がかかり、場合によっては「72時間以内の内服」が困難になることもあります。「近隣でオンライン診療を実施している産婦人科等はどこか」が分かるように、分かりやすいリストが整理されることが期待されます。なお、こうしたケース(遠方などのケース)について今村構成員は「72時間以内の内服が必要なことを十分に説明し、それが難しい場合には近隣の産婦人科を直接受診するよう勧めることが重要である」とコメントしています。

さらに重要となるのが、「薬局での緊急避妊薬の備蓄」でしょう。処方箋を持って薬局に行ったにもかかわらず「当局には在庫がありません」となったのでは、72時間以内の内服が困難になります。しかし、すべての薬局に「緊急避妊薬を備蓄せよ」と依頼することも非現実的です。そこで地域の「薬局ネットワーク」などを活用し、「この薬局で緊急避妊薬を取り扱っている」旨などを明らかにし、情報提供していくことなどが考えられそうです。改訂指針策定後などに、具体的な検討が行われることになるでしょう。

3週間後の産婦人科受診、オンライン診療システムで相当程度担保可能

また(5)の「3週間後の産婦人科受診」は、避妊薬の効果を確認するために、また患者の心身の安全を確保するために極めて重要な要件です。検討会では「緊急避妊薬服用後に出血があったとしても、『出血=月経』ではない。『妊娠に伴う不正出血』というケースもあり、、妊娠(とくに子宮外妊娠など)に気づかず患者が危険な状態に陥ってしまうこともある」とし、3週間後の受診をいかに確実なものとするかが検討されています。

この点について金丸恭文構成員(フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長・グループCEO、欠席のため参考人が代理出席)は、オンライン診療システムの中には▼一定の時間(ここでは3週間)経過後に患者にアラートする機能▼医師から患者に「産婦人科を受診してください」などのメッセージを送る機能▼産婦人科医院がQRコードなどを発行し、対面受診をしたか否かを確認できる機能―などが備わっているものもあり、「システム上で相当程度担保可能である」(少なくとも受診したか否かを確認できる)ことが紹介されました。

この点に関連して、厚労省は「当面、数年間は、オンライン診療での緊急避妊薬を処方した全症例について調査を行う」(例えば処方医に対し、「どういった説明を行ったのか」「3週間後の産婦人科医受診は確実に行われたのか」などを報告してもらうなど)考えを示しています。この調査結果によって、「処方医はルールを遵守している」ことが分かれば要件の緩和が、逆に「ルールが遵守されていない」ことが分かれば要件の厳格化が検討されることになるでしょう。

 
なお、「緊急避妊薬の存在そのものを知らない」女性には、オンライン診療も直接の対面診療も促すことはできません。このため構成員から「性教育の重要性」を説く声が多数でており、厚労省医政局医事課の佐々木健課長は「全省をあげて、臨床研修医に対する研修項目の追加、薬剤師に対する性教育等の研修強化、学校教育への外部講師等の派遣充実など行い、さまざまな機会を通じて、性教育を充実していく」考えを強調しています。

 
  
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