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2017から18年度にかけ「要介護度改善」の方向にシフト、ADL維持等加算の拡大に期待—厚労省

2019.12.2.(月)

要介護度別の「軽度化した人の割合と重度化した人の割合の差」を2017年度と18年度で比較してみると、いずれの区分でも「軽度化(改善)の方向にシフト」していることが分かる。2018年度の前回介護報酬改定で通所介護サービスに導入された【ADL維持等加算】の影響も背景にあると考えられ、介護事業所・施設で「重度化防止」「ADL等の改善」に向けた取り組みを進めていると見られる―。

このような結果が、厚生労働省が11月28日に公表した2018年度の「介護給付費等実態統計」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

2021年度の次期介護報酬改定では、「要介護度改善のアウトカムを評価する加算」(ADL維持等加算)について、通所介護以外のサービスへの「拡大」が検討される可能性が高そうです。

1人の要介護者・支援者が、より多くの介護保険サービスを受給する傾向

介護給付費等実態統計は、1年度の介護レセプトをもとに、介護サービスの提供状況(利用状況)や給付費の状況などを把握するものです。2018年度から介護保険総合データベース(介護DB、介護レセプトと要介護認定情報を格納)のレセプトすべてに集計対象を拡大したことから、名称を従前の「実態調査」から「実態統計」に改めています(2017年度実態調査に関する記事はこちら、2016年度実態調査に関する記事はこちら)。

まず受給者の状況を見てみると、2018年度の累計受給者数は6070万9400人で、前年度に比べて28万5300人・0.5%の増加となりました。前年度には「要支援者の訪問・通所サービスの市町村総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)への全面移行」が行われ(2014年の介護保険制度改革の一環)たことから、受給者数が大幅に減少(マイナス3.0%)しましたが、2018年度からは受給者数増減からその影響がなくなりました。

また、同一人物を名寄せした実受給者数は597万3500人で、前年度にくらべて6万7700人・1.1%減少しています。実受給者数が減少する一方で累計受給者数が増えていることから、「1人がより多くのサービスを受給している」ことが伺えます。



サービス種類別の累計受給者数(あわせて前年度からの増減)・実受給者数(同)は次のとおりです。

▽介護予防訪問看護:▼累計受給者数90万1400人・11.7%増▼実受給者数12万3500人・8.7%増

▽介護予防通所リハ:▼累計200万5400人・6.3%増▼実23万9300人・4.9%増

▽介護予防支援:▼累計785万9100人・11.3%減▼93万人・18.8%減

▽訪問介護:▼累計1216万200人・0.5%増▼実145万6700人・0.1%減

▽訪問看護:▼累計543万3900人・6.8%増▼実70万1000人・5.9%増

▽通所介護:▼累計1393万2600人・2.2%増▼実160万4500人・1.6%増

▽通所リハ:▼累計529万人・0.8%増▼実62万1800人・0.7%増

▽短期入所生活介護:▼累計395万4900人・0.4%増▼実73万9100人・0.5%増

▽居宅介護支援:▼3225万8300人・1.9%増▼実358万1100人・1.4%増

▽小規模多機能型居宅介護(短期利用以外):▼累計117万5400人・4.5%増▼実14万1000人・3.9%増

▽認知症対応型共同生活介護(短期利用以外):▼累計244万9900人・2.8%増▼実25万5300人・2.5%増

▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護:▼累計27万9300人・19.5%増▼実3万6800人・17.9%増

▽看護小規模多機能型居宅介護(短期利用以外):▼累計12万5100人・32.9%増▼実1万7300人・31.7%増

▽特養ホーム(介護老人福祉施設):▼累計655万4300人・2.4%増▼実69万700人・2.7%増

▽老健施設:▼累計433万7700人・0.1%増▼実56万6200人・1.3%増

▽介護療養型医療施設:▼累計51万8800人・15.1%減▼実7万3000人・13.2%減

▽介護医療院:▼累計5万7900人▼実1万2400人

介護予防サービス種類別の受給者数(2018年度介護給付費等実態統計1 191127)

介護サービス種類別の受給者数(2018年度介護給付費等実態統計2 191127)



2012年度に創設された▼看護小規模多機能型居宅介護(看多機)▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護―では大きく利用者数が伸びており、サービスの整備や利用者・ケアマネジャーへの制度浸透が伺えます。介護療養の受給者数減は「介護医療院への移行」(2018年度に新たな転換先として▼介護▼医療▼住まい―の3機能を併せ持つ介護医療院が創設された)等が進んでいることによるものです。

いずれの要介護度でも「軽度化」の方向にシフト、ADL維持等加算の拡大に期待

次に2018年度の1年間「継続してサービスを受給した人」について、2018年4月から今年(19年)3月にかけて要介護度がどのように変化したのかを見てみましょう。

いずれの要介護度区分でも、変化のない「維持」の割合が最も多く7-9割程度となっており、状況は従前から変わっていません。

また、「要支援2」から「要介護3」では、改善(軽度化)よりも悪化(重度化)の割合がはるかに高くなっていますが、「要介護4」では、改善(軽度化)と悪化(重度化)の割合がほぼ同程度となっています。前年度と同じ傾向で、重度者に対する「機能改善に向けた努力」を各事業所・施設が行っていることが分かります。

この点、かねてより「要介護度の改善に向けたインセンティブ」が重要な検討課題の1つになっていましたが、2018年度の前回介護報酬改定(診療報酬との同時改定)で、通所介護において【ADL維持等加算】が創設されました。要介護度の改善度合いが高い事業所において経済的なインセンティブを付与する極めて画期的な加算です。

改善(軽度化)と悪化(重度化)の差(軽度化-重度化)を、加算導入の前後(2017年度・18年度)で比較してみると、次のようになりました。

▽要支援2:2017年度・マイナス17.0ポイント→18年度・マイナス10.9ポイント(6.1ポイント改善)

▽要介護1:2017年度・マイナス22.0ポイント→18年度・マイナス20.6ポイント(1.4ポイント改善)

▽要介護2:2017年度・マイナス10.5ポイント→18年度・マイナス10.0ポイント(0.5ポイント改善)

▽要介護3:2017年度・マイナス8.6ポイント→18年度・マイナス8.3ポイント(0.3ポイント改善)

▽要介護4:2017年度・マイナス0.4ポイント→18年度・プラス0.1ポイント(0.5ポイント改善)

2017年度(下グラフ)から18年度(上グラフ)にかけて、要介護度が改善する方向にシフトしている(2018年度介護給付費等実態統計3 191127)



「要支援1から自立へ移行」した人の割合は明らかにされていませんが、要支援1では重度化の割合が2017年度の35.5%から18年度には24.1%となっており「11.4ポイント改善した」と見ることができるでしょう。また要介護5からの軽度化割合は2017年度の11.3%から18年度には11.5%となっており「0.2ポイント改善した」と見ることができそうです。

経年的に追いかけていく必要がありますが、2017年度・18年度の状況を見る限り「要介護度の改善」に向けた努力を介護事業所・施設全体で行っていると見ることができます。この背景には【ADL維持等加算】があると考えられ、2021年度の次期介護報酬改定で「要介護度の改善を評価する加算」の拡大が検討される可能性が高そうです。

利用者1人当たりの「単価」、依然「西高東低」の傾向

次に受給者1人当たりの費用額に目を移すと、2019年4月審査分(2019年3月のサービス提供分)では、▼介護予防サービス:2万8000円(前年度比500円増)▼介護サービス:19万4600円(同400円増)―となりました。
 
サービス種類別に見ると、次のような状況です。

▽介護予防訪問看護:3万2100円(同1200円減)

▽介護予防支援:4600円(同増減なし)

▽訪問介護:7万5500円(前年比600円減)

▽訪問看護:4万7000円(同1100円減)

▽訪問リハ:3万7800円(同1200円減)

▽通所介護:9万600円(同2100円減)

▽通所リハ:7万7900円(同5500円減)

▽短期入所生活介護:10万9600円(同800円増)

▽居宅介護支援:1万4500円(同300円増)

▽短期利用以外の特定施設入居者生活介護:21万9100円(同2200円増)

▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護:16万5200円(同増減なし)

▽短期利用以外の小規模多機能型居宅介護:21万4200円(同1600円増)

▽短期利用以外の看護小規模多機能型居宅介護:26万9700円(同5600円増)

▽特養ホーム:28万7400円(同6500円増)

▽老健施設:30万7300円(同6800円増)

▽介護療養型医療施設:38万8100円(同1000円減)

▽介護医療院:42万2100円

介護サービス種類別の利用者・入所者単価(2018年度介護給付費等実態統計4 191127)



サービスの種類によって1人当たり費用額、つまり「利用者単価」の増減状況が大きく異なっていることが分かります。「加算の算定状況」「利用者の要介護度の状況の変化(重度者が増えたのか、軽度者が増えたのか)」など、さまざまな切り口での詳細な分析を期待したいところです。



受給者1人当たり費用額を都道府県別に比較すると、介護サービスでは、沖縄県が最も高く21万1700円(前年度から900円減)。次いで鳥取県20万9800円(同1900円増)、石川県20万8600円(同500円増)で高くなっています。

逆に、最も低いのは福島県の18万4800円(同1000円減)で、次いで北海道の18万5600円(同1800円増)、埼玉県の18万7000円(同1200円増)、次いで京都府18万7500円(同1900円増)で低い状況です。

最高の沖縄県と最低の福島県との間には1.15倍の格差がありますが、前年度(沖縄県と北海道で1.16倍)に比べて格差はわずかですが縮小しています。また医療と同様に「西高東低」の傾向があることが一目瞭然です。

介護サービス利用者の「単価」には西高東低の傾向がある(2018年度介護給付費等実態統計5 191127)

介護療養・介護医療院では「要介護4・5」の入所者が8割超

さらに、「2019年4月審査分」のレセプトからサービスの利用状況を見てみると、次のような状況が分かります。

▽訪問介護の内容類型は、要介護度が高くなるにつれ「身体介護」の利用度合いが高くなる。身体介護に引き続き生活援助を行うケースは3割程度だが、要介護度が高くなるにつれ、緩やかに低くなる(前年度と同様の傾向)

要介護度が重くなるにつれ、訪問看護における「身体介護」の利用が多くなる(2018年度介護給付費等実態統計6 191127)



▽地域密着型サービスでは、サービス種類別に利用者の要介護度が大きく異なり、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護では飛び抜けて要介護4・5が多く、夜間対応型訪問介護や地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用以外)、看護小規模多機能型居宅介護(短期利用以外)で要介護4・5が比較的多い

地域密着型サービスの種類によって、利用者の要介護度構成は異なっている(2018年度介護給付費等実態統計7 191127)



▽施設サービスにおける「要介護4・5の割合」はサービス種類別に異なっており、▼介護療養:87.5%(前年度に比べて2.5ポイント低下)▼介護医療院:82.0%▼特養ホーム:70.2%(同2.1ポイント低下)▼老健施設:44.8%(同3.7ポイント低下)―という状況である。

介護保険施設の種類によって入所者の要介護度構成は異なり、介護療養と介護医療院では要介護4・5が8割超となっている(2018年度介護給付費等実態統計8 191127)



▽施設入所者の1人当たり費用額(つまり単価)は、概ね「特養ホーム<老健施設<介護療養<介護医療院」となっている。

介護保険施設の単価は、概ね「特養ホーム<老健施設<介護療養<介護医療院」となっている(2018年度介護給付費等実態統計9 191127)



介護医療院や介護療養は「要介護度が高く、かつ医療必要度が高い入所者の受け入れ施設」、特養ホームは「要介護度が高い入所者の『終の棲家』機能を持つ施設」、老健施設は「比較的要介護度が低い人向けの在宅復帰促進施設」という区分けがここからも見て取れます。
 
 
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