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介護分野のさらなる文書負担軽減に向け取り扱い明確化、将来「指定申請・報酬請求ガイドライン」策定へ―介護文書負担軽減専門委員会

2021.3.17.(水)

介護事業所・施設における「文書負担」の軽減をさらに進めるため、変更届や類似の新サービスに関する申請届などについて、考え方を明確にし、将来的には「指定申請・報酬請求に関する運用指針」(ガイドライン)としてとりまとめる―。

3月17日に開催された、社会保障審議会・介護保険部会の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(以下、専門委員会)でこういった議論が行われました。

ガイドライン策定により、報酬算定の不明瞭・バラつきの解消効果も

2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達することから、今後、急速に医療・介護ニーズが増加していくことが確実です。その後、2040年度にかけて高齢者の増加ペースそのものは鈍化するものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していきます。「少なくなる支え手」で「多くの高齢者」を支えなければならず、公的医療保険・介護保険制度の財政基盤はもちろん、提供体制そのものが非常に脆くなっていくのです。

介護分野では「人材確保・定着」がとりわけ大きな問題となっていますが、介護現場からは「提出文書作成の負担が大きく、これを軽減してほしい」との強い要望が出されていました。厚労省は、専門委員会を設置し、下図のように段階的に文書の簡素化・標準化・ICT化を図っていく方針を明確にし(専門委員会中間報告)(関連記事はこちら)、順次、対応が図られてきています(関連記事はこちら)。

介護文書負担軽減に向けたスケジュール(介護文書負担軽減専門委員会1 200330)



例えば、2021年度の介護報酬改定では、▼利用者への説明・同意等について「電磁的記録による対応」を認める▼従業員の「員数」を「○人以上」と記載すること、「従業者の職種、員数及び職務の内容」の変更届け出は年1回でよいことを明確化する▼介護サービス事業者における諸記録の保存、交付等について、適切な個人情報の取り扱いを求めた上で「電磁的な対応」を認める―などの対応が図られました。この見直しの効果を検証するための調査も行われます。

こうした文書負担軽減に向けた取り組みは「継続実施」することが極めて重要です(常に「軽減できないか」をチェックし、実行に移す)。3月17日の検討会では、「簡素化・標準化」などをさらに進めるための論点が厚生労働省から提示されています。

「簡素化・標準化」に向けては、(1)変更届の頻度等の取り扱い(2)更新申請時に求める文書の簡素化(3)併設事業所や複数指定を受ける事業所に関する簡素化(4)従業者の勤務体制・勤務形態一覧表の簡素化・標準化(5)実地指導等の時期の取り扱い(6)様式例の整備(総合事業)(7)様式例の整備(加算の添付書類等)(8)ガイドライン、ハンドブック等の効果的な周知方法―に関する方向性が議論されました。

まず(1)の変更届に関しては、上述のように「届け出は年1回で良い」ことが介護報酬改定の中で措置済です。加えて今般、「標準添付書類」が厚労省から示されるとともに、「やむを得ない場合には、事業所の名称や所在地に変更があった場合でも、遅延理由の提出を求めない」(通常は10日以内の届け出が必要)取り扱いなどが示されました。

変更届の標準添付書類(訪問介護の場合)(介護文書負担軽減専門委員会1 210317)



また(2)の更新申請に関しては、▼変更のないときは、特段の事情のない限り「申請書の記載、書類の提出」を省略するよう指定権者(市町村や都道府県など)に周知するともに、今後、法制面での対応も検討する(現在は「省略させることができる」となっている)▼「変更なきために提出を省略している」書類であることを確認できるよう、様式例の付表(別添)に 「変更なし(添付省略)」の確認欄を設ける(チェックリスト)―方向が示されました。ただし後者については「チェッ クリスト添付が負担増になる」場合もあり、指定権者(市町村や都道府県など)の判断となります。

更新時提出文書の確認欄を新設(介護文書負担軽減専門委員会2 210317)



また(3)の併設事業所等については、例えば、「すでに訪問看護の指定を受けている事業所が、介護予防訪問看護を新たに指定申請する」ような場合について、提出書類を省略可能である旨などを通知で示すとともに、「重複書類の一本化」などの検討が行われることになります。

一方(4)ではサービス毎の「勤務体制・形態一番表」が示されています。

勤務体制・形態一覧表の必須項目(その1)(介護文書負担軽減専門委員会3 210317)

勤務体制・形態一覧表の必須項目(その2)(介護文書負担軽減専門委員会4 210317)



また(5)では、▼実地指導等の頻度にメリハリをつける▼老人保険施設の監査について、適正な運営が確保されている場合には「3年に1度」に緩和する(通常は1年に1度)―方針が示されました。



さらに(6)では、「様式例が存在しておらず、地域でバラバラである」と指摘される総合事業について、介護給付様式を参考に国から提示する考えが示されています。



また(7)では、各種加算の添付書類などについて「2021年度介護報酬改定の結果も踏まえて整理し、簡素化・標準化に向けて対応を検討する」方向が示されています。



他方、(8)では、今後、自治体・事業者からの意見を踏まえながら、最終的な簡素化・標準化の検討を行い、その結果を「指定申請・報酬請求に関する運用指針」(ガイドライン)としてとりまとめる方向が示されています。不明確・バラつきがある算定ルールや解釈の幅が狭まり、「明確になる」ことに期待が集まります。



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