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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

外来機能分化、患者・国民目線に立ち地域特性を十分に踏まえた慎重な検討を―日病・相澤会長

2021.10.25.(月)

外来機能報告制度をはじめ「外来医療の機能分化」論議が行われているが、「地域特性の十分な考慮」「ゲートキーパー機能の明確化」が重要ではないか―。

あわせて外来を受診する「患者・国民」の目線に立った議論が必要不可欠である―。

こうした点を無視して強制的な外来機能分化を進めれば、例えば「大病院が門前に『外来専門のクリニック』を設置する」などの本末転倒な事態、地域医療提供体制の崩壊につながりかねない―。

日本病院会幹部の間ではこういう点で意見が一致していることが、10月25日に定例記者会見に臨んだ相澤孝夫会長から明らかにされました。

10月25日にオンライン記者会見に臨んだ日本病院会の相澤孝夫会長

外来機能分化、地域特性を十分に踏まえ、まずゲートキーパー機能から議論すべきでは

入院医療に関しては「2025年度の地域医療構想実現」という目標を掲げ、各地域で医療機能の分化・連携の強化が進められています(高度急性期・急性期・回復期・慢性期等の患者ニーズにマッチするように、地域のベッド数を調整していく)。

外来医療においても機能分化の重要性が指摘されています。機能分化をせず高機能の大病院に軽症患者が殺到すれば「病院勤務医の負担が過重になる」「真に高機能外来が必要な患者の医療アクセスが阻害される」などの問題点があるためです。

このため特定機能病院・200床以上の地域医療支援病院には、「紹介状を持たない外来受診患者からは、初診5000円・再診2500円以上の特別負担を徴収する」義務が課されていますが、特定機能病院でも外来患者の半数程度は紹介状なしというのが現状です。

このため医療法・健康保険法等が改正され、例えば(1)まず「かかりつけの医療機関」を受診し、高機能な大病院の外来には、そこから紹介を受けて受診する(2)紹介状なしに高機能な大病院外来を受診した場合の特別負担額を引き上げ、あわせて医療保険財政からの余分な支出を行わない仕組みとする―こととなりました。具体的には、次のような仕組みが構築されます。

(A)「一般病床・療養病床を持つ医療機関」(病院・有床診療所)に外来診療に係るデータを都道府県に報告することを義務付ける【外来機能報告制度】

(B)提出された外来診療データや病院等の意向などをもとに、各地域で紹介中心型病院となる「『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化する

(C)重点外来基幹病院へは、かかりつけ医等からの紹介受診を原則とする(紹介状を持たずに受診した場合には特別負担徴収を義務化)

特別負担徴収義務を拡大していく方向そのものに異論は出ていない(医療保険部会(1)1 201126)

特別負担額を引き上げ、初・再診料相当額を保険から控除する方向が示されている(医療保険部会 201202)



外来機能報告制度の来年(2022年)4月スタートに向け、外来機能報告等ワーキンググループで(A)(B)の詳細を年内に固め、(C)の詳細は主に中央社会保険医療協議会で議論することになっています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。



しかし、日本病院会をはじめ病院関係者からは、当初から「この仕組み、議論に違和感を覚える」との意見が相次いでいます。日本病院会でも、会長・副会長・常任理事といった幹部の集まりでこの点を改めて議論し、次の2点を整理したことが相澤会長から明らかにされました。

▼地域によって医療機関の分布、医療機関の機能は千差万別である。一定の目安を基盤に、地域ごとに議論を進めて、地域ごとの「あるべき外来医療提供体制の姿」を決めていかなければならない。外来機能報告で集積されたデータ(外来医療データ)をまず分析・整理することを中心に議論していくべきである

▼「緩やかなゲートキーパー機能」の必要性を疑うものではない。ゲートキーパー機能を持つ医療機関と、地域の他の医療機関がどう連携し、どう役割分担していくかを地域で検討する必要がある。ただし、ゲートキーパー機能をどの医療機関が担うのかは地域ごとにまったく異なる(医療資源の少ない地域では基幹病院がその機能を担うこともあり得る)



日病幹部は、「こうした点を無視して医療提供体制改革を強制的に進めれば、地域の医療提供体制が歪み、崩壊してしまう。例えば、大病院が門前に『外来専門のクリニック』を設置するなどの本末転倒の事態が生じてしまうかもしれない」とも危惧しています。

また、「かかりつけ医機能を果たすことも期待される在宅療養支援病院は最大240床(医療資源の乏しい地域、正確には239床)まで認められるが、改正医療法・健康保険法では200床以上の『医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関』において、紹介状なし患者から特別負担を徴収するとしている。診療報酬上の整合性がとれていないのではないか」との指摘も出ているようです。

患者・国民に「外来機能分化の必要性、議論のベース」など説明しコンセンサス得るべき

さらに相澤会長は、こうした議論を「患者目線」で行い、患者・国民の間で一定のコンセンサスを得ることも重要であると強調します。

例えば、「かかりつけ医の制度化」を唱える声もありますが、かかりつけ医のイメージは患者によってまちまちです。例えば、白内障で眼科に通う患者は、その眼科の医師を「かかりつけ医」と感じることでしょう。しかし、当該眼科医は、医療制度における、いわゆる「かかりつけ医」には合致ないケースが多そうです。

こうした患者視点を無視して「かかりつけ医の制度化」を進め、また外来機能報告の中で議論される「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」をがちがちに制度化すれば、「患者が困ることになろう」と相澤会長は警鐘を鳴らします。

また、そもそも「医療資源」とは何かを理解できる一般国民・患者は少なく、「『医療資源とは何か』、『医療資源を重点的に活用する外来とは何か』などを国が患者・国民に分かりやすく説明すべきである。その説明を病院に押し付けられるのは困る」という声も日病幹部から出ています。

上記の(A)(B)(C)に沿えば、再来年(2022年)3月末には各地域で「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」が誕生し、うち200床以上の病院では紹介状なしに受診した場合に初診時7000以上の特別負担が発生します。その際、医療機関の窓口では「なぜ7000円を支払わなければならないのか?先月まではそういった負担はなかったはずだ」と訴える患者が現れる可能性があります。その際、患者に「医療資源云々」と説明しても、理解を得ることが難しいのではないか、そういったトラブルをどう収めればよいのか、という心配も病院サイドにはあります。



厚生労働省の外来機能報告等ワーキンググループでは、「外来機能報告」や「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」設定論議などが進んでいますが、上記のような議論が改めて行われる可能性もありそうです。



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