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医療事故調査制度スタートから丸4年、累計1500件の医療事故が報告される―日本医療安全調査機構

2019.10.11.(金)

今年(2019年)9月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は28件。2015年10月の医療事故調査制度発足から丸4年間で累計1500件の医療事故が報告され、このうち77.9%の1168件で院内調査が完了している。一般国民へも制度が相当浸透してきているが、「正しい理解」が依然として重要課題である―。

日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が10月9日に公表した「医療事故調査制度の現況報告(9月)」から、こうした状況を明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

2019年9月の医療事故報告件数、内科で6件、脳神経外科で4件

2015年10月から、すべての医療機関等(病院、診療所、助産所)には、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告する義務が課せられました【医療事故調査制度】。事故の原因・背景を調査・分析して「再発防止策」を構築し、医療現場に広く共有し、医療安全を確保することを目指す制度です。

医療事故調査制度の概要を眺めると、大きく次のように整理できます。
▼医療事故の発生を確認した管理者(院長など)は、速やかにセンターへ事故発生を報告する

▼事故が発生した医療機関で、自ら事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▼当該医療機関は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する(調査結果報告書の提示までは義務付けられていない)

▼センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る

医療事故調査制度の概要



センターでは重大事故について詳細を分析した結果を、これまでに以下の9つの提言としてまとめています)。
(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―
(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析
(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析
(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析
(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析
(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析
(7)一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析
(8)救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析
(9)入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析



さらに、我が国唯一のセンターである日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を公表しています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。丸4年を経過したことになる今年(2019年)9月には、新たに28件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は1500件となりました。

今年(2019年)9月に新たに報告された医療事故28件の内訳は、病院から27件、診療所から1件でした。制度発足からの累計では、病院から1415件(事故全体の94.3%)、診療所から85件(同5.7%)となっています。

今年(2019年)9月に新たに報告された事故を診療科別に見ると、▼内科:6件▼脳神経外科:4件▼外科:3件▼泌尿器科:3件―などで多くなっています。制度発足からの累計を見ると、▼外科:249件(同16.6%)▼内科:189件(同12.6%)▼整形外科:123件(同8.2%)▼消化器科:120件(同8.0%)▼循環器内科:118件(同7.9%)―などで多くなっています。

2019年9月には新たに28件の医療事故が報告された(医療事故の現況(19年9月)1 191009)

センターへの相談件数は累計7751件、一般国民の正しい理解にはまだ時間がかかる

センターへの報告が義務付けられている医療事故は、医療機関内で生じたすべての死亡・死産事例ではありません。

前述のとおり、死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が、▼予期せず▼医療に起因し、または起因すると疑われる—もの」に限定されます。例えば、火災に巻き込まれ、重度の熱傷を負った被害者が救急搬送され、適切な治療の甲斐もなく死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」されることから、センターへの報告は必要ないでしょう。ただし、そうしたケースでも、明らかな処置上のミスなどがあり通常の経過とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期しなかった」医療事故としてセンターへの報告が必要となってきます。

もちろん、どこまでが「予期された」医療事故なのかの判断は難しいところがあり、医療現場では「患者が死亡したが報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」という疑問、また「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といったケースも生じることがあると思われます。

一方、遺族の中には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていないようだ。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念をもつ方もいらっしゃるでしょう。

こうした疑問・疑念を放置することは許されないため、センターでは相談対応を行っています。今年(2019年)9月には、新たに168件の相談がセンターに寄せられ、制度発足からの累計では7751件となりました。

今年(2019年)9月に新たに寄せられた相談の内訳は、▼医療機関から:73件▼遺族などから:78件▼その他・不明:17件―でした。

医療機関からの相談内容を見ると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので50件(医療機関からの相談全体の57.5%)。次いで「院内調査に関するもの」17件(同19.5%)、「報告すべき医療事故か否かの判断」7件(同8.1%)などとなっています。医療現場において制度が正しく浸透していることが伺えます。

一方、遺族などからの相談内容を見てみると、「医療事故に該当するか否かの判断」が67件(遺族などからの相談全体の82.7%)と大多数を占めています。ただし、「制度開始前の事故事例」「生存事例」など、そもそも報告対象とならないものに関する相談も含まれており、一般国民の「正しい理解」は依然として重要な課題のままです。

2019年9月には新たに168件の相談が寄せられた(医療事故の現況(19年9月)1 191009)

センターへの調査依頼は新たに遺族から2件、医療機関から1件

前述のとおり、医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあります。効果的な再発防止のためには、事故が生じた医療機関等自らが事故の内容や背景を調査し、自院の体制・手続き・ルールなどに問題がなかったかを検証する中で「自院の課題」を発見し、そこから防止策構築に繋げることが重要と考えられています。このため、「まず事故が発生した医療機関が自ら原因究明に向けた調査【院内調査】を行う」ことが求められています。

今年(2019年)9月に新たに院内調査が完了した事例は35件で、制度発足からの累計では1168件となりました。これまでに報告された全1500件の医療事故のうち77.9%(前月から0.9ポイント増加)で院内調査が完了しており、院内調査のスピードがさらに上がっていることが分かります。

なお、遺族側には「院内調査結果に納得がいかない」「院内調査が遅すぎる。何かを隠しているのではないか」との思いが生じることがあるかもしれません。一方で、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあると思われます(医師会や病院団体などの支援団体によるサポート体制あり)。

そこでセンターでは、「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制を整備しています。ただし「センターが最初から調査する」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されたのか」という観点で調査を行うことになります。

今年(2019年)9月に、センターに寄せられた調査依頼は遺族等からの2件、医療機関からの1件で、合計3件でした。制度発足からの累計調査依頼件数は105件(遺族から85件・81.0%、医療機関から20件・19.0%)となり、またセンター調査の進捗状況を見ると26件で調査が終了しています(前月から3件増加)。

2019年9月には新たに35件の院内調査報告が終了した(医療事故の現況(19年9月)1 191009)

 
 
 
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