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有床診の減少スピードにやはりブレーキ、2018年度改定の効果か―医療施設動態調査(2018年10月)

2018.12.25.(火)

 有床診療所の減少スピードは、今年(2018年)9月分・10月分の状況をみると、「鈍化している」にように見える。ただし現在の減少ペースが続けば、来年(2019年)11月末にはベッド数が9万床を割り、翌12月末には施設数が6500施設を割ってしまう計算である(前月の計算よりも1か月伸びている)—。

 こうした状況が、厚生労働省が12月20日に公表した医療施設動態調査(2018年10月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
 

有床診、1か月当たりの減少ペースは確実にダウン

 厚生労働省は、毎月末の病院・診療所数、ベッド数を「医療施設動態調査」として集計・公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。

 今年(2018年)10月末の状況を見ると、全国の医療施設は計17万9142施設で、前月末から51施設増加しています。このうち病院の施設数は、前月末から7施設減少し、8365施設となりました。病院の種類別に見てみると、▼一般病院:7308施設(前月から6施設減)▼精神科病院:1057施設(同1施設減)—などとなりました。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3729施設で前月末から7施設減少、「地域医療支援病院」は571施設で前月末から変わりありません。

 一方、医科診療所は10万2163施設で、前月末から59施設増加しています。ただし、このうち有床診療所は、前月から25施設減少し、6909施設となりました。
 
 有床診療所は、2年前(2016年10月末)には7605施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年10月末)には7261施設(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年10月末から17年10月末までの1年間で344施設、さらに今年(2018年)10月末までの1年間で352施設減少しています。有床診療所の施設数は、2017年10月末以降、次のように推移しています。

▼2017年10月末:7261施設

 ↓(25施設減)

▼2017年11月末:7236施設

 ↓(18施設減)

▼2017年12月末:7218施設

 ↓(24施設減)

▼2018年1月末:7194施設

 ↓(28施設減)

▼2018年2月末:7166施設

 ↓(21施設減)

▼2018年3月末:7145施設

↓(50施設減)

▼2018年4月末:7095施設

 ↓(21施設減)

▼2018年5月末:7074施設

 ↓(78施設減、再集計後)

▼2018年6月末:6996施設(再集計後)

 ↓(28施設減)

▼2018年7月末:6968施設

 ↓(20施設減)

▼2018年8月末:6948施設

 ↓(14施設減)

▼2018年9月末:6934施設

 ↓(25施設減)

▼2018年10月末:6909施設

 
 この1年間は、1か月当たり29施設強のペースで減少が続いており、減少スピードはやはり、少し落ちているようにも見えます。仮のこのペースが続くとすれば、6500施設を割るのは、来年(2019年)12月末となる計算です(先月までよりもさらに1か月延びた)。

有床診のベッド数減少スピードも鈍化

 次に医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。

 医療施設全体のベッド数は、今年(2018年)10月末には163万9694床で、前月末から1774床の大幅減となりました。うち病院の病床数は154万5132床で、前月末から1422床の大幅減少となっています。病床種類別に見てみると、▼一般病床:89万775床(前月末から63床増)▼療養病床:31万8603床(同903床減)▼精神病床:32万9110床(同582床減)—などという状況です。療養病床の大幅減が続く背景には、2018年度から新設された「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換などが大きく関係していると考えられます。

 また、有床診療所の病床数は前月末から352床減少し、9万4501床となりました。2年前(2016年10月末)には10万3104床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2017年10月末)には9万8843床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2016年10月末から2017年10月末までの1年間で4261床、さらに今年(2018年)10月末までの1年間で4342床減少しています。2017年10月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。

▼2017年10月末:9万8843床

 ↓(306床減)

▼2017年11月末:9万8537床

 ↓(149床減)

▼2017年12月末:9万8388床

 ↓(277床減)

▼2018年1月末:9万8111床

 ↓(380床減)

▼2018年2月末:9万7731床

 ↓(217床減)

▼2018年3月末:9万7514床

 ↓(658床減)

▼2018年4月末:9万6856床

 ↓(276床減)

▼2018年5月末:9万6580床

 ↓(969床減、再集計後)

▼2018年6月末:9万5611床(再集計後)

 ↓(296床減)

▼2018年7月末:9万5315床

 ↓(286床減)

▼2018年8月末:9万5029床

 ↓(176床減)

▼2018年9月末:9万4853床

 ↓(352床減)

▼2018年10月末:9万4501床

 
 この1年間で、1か月当たり361床強のペースで減少が続いており、やはり減少ペースは若干、落ちているように見えます。仮にこのペースが継続したと考えれば、9万床を切るのは来年(2019年)11月末となりそうです(先月に比べて、やはり1か月伸びている)。

 
 厚労省は、有床診療所を大きく(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、とくに(2)の「地域包括ケア型」については「過疎地などで入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」という課題に直面していることを重く見ています。

 このため2018年度の診療報酬・介護報酬改定では、(2)地域包括ケア型・有床診の課題を解決し、経営を下支えするために、次のようの見直しが行われました(関連記事はこちらこちらこちら)。
 
▽診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診療所では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに、要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
 
▽介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているとみなす
 
 2018年9月分・10月分のデータからは、有床診の減少に「若干のブレーキ」がかかったようにも見えます。さらに注視を続け、「2018年度診療報酬・介護報酬の効果」の有無を見極めていく必要があるでしょう。

  
 なお、有床診の維持が難しい理由の1つに、「後継者不足」問題があります。この点については、報酬改定での直接対応は困難であり、別の角度(承継税制など)からのさらなる分析と対応策の構築が必要になってくるでしょう。

病院病床は急激に減少している

療養病床数も減少が続いている

 
 
 
 
病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

 

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