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「10月」分データでも平均在院日数短縮と病床利用率向上とを両立―病院報告、2019年10月分

2020.1.31.(金)

「10月分」のデータを追いかけると、「9月分」に続いて、病院の一般病床では2012年以降、「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とをある程度「両立」できている―。

こうした状況が、厚生労働省が1月29日に公表した昨年(2019年)10月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2019年10月、前月に比べて在院日数が短縮し、病床利用率は向上

厚労省は毎月、日本全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を把握し、「病院報告」として公表しています(前月の記事はこちら)。

昨年(2019年)10月の(1)「1日平均患者数」は、病院全体で▼入院:121万9916人(前月と比べて7258人・0.6%減)▼外来:135万2085人(同5万5218人・4.3%増)―となりました。

医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:67万1130人(前月比2771人・0.4%減)▼療養病床:26万6445人(同2831人・1.1%減)▼精神病床:28万820人(同1614人・0.6%減)▼結核病床:1453人(同38人・2.5%減)―などという状況です。

2019年10月、前月に比べて入院患者は減少、外来患者は大きく増加した(病院報告(2019年10月)1 200129)



また(2)「平均在院日数」は、病院全体では27.1日で、前月から0.6日短縮しました。病床種別に見ると、▼一般病床:15.8日(前月から0.3日短縮)▼療養病床:133.9日(同5.3日短縮)▼介護療養病床:315.1日(同16.9日延伸)▼精神病床:262.4日(同5.5日短縮)▼結核病床:63.3日(同7.0日短縮)―となりました。介護療養を除き、前月からの短縮が実現しています。

2019年10月、一般病床の平均在院日数は、前月から短縮した(病院報告(2019年10月)3 200129)



さらに(3)「月末病床利用率」に目を移すと、病院全体では79.9%で、前月から1.0ポイント向上しました。病床種別に見ると、▼一般病床:76.0%(前月比1.8ポイント向上)▼療養病床:86.3%(同増減なし)▼介護療養病床:90.0%(同0.3ポイント向上)▼精神病床:85.4%(同0.3ポイント低下)▼結核病床:33.5%(同0.7ポイント低下)―という状況です。

2019年10月、一般病床の利用率は前月から向上した(病院報告(2019年10月)2 200129)

一般病床の10月分データ、平均在院日数短縮と病床利用率向上をある程度「両立」

次に「暦月の変動」を除外するために、一般病床における「10月分」の平均在院日数の動向を年を追って見てみましょう。若干の増減はあるものの、2012年から19年にかけて「概ね短縮」傾向にあると言えるでしょう。

▼2012年:16.9日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日短縮)

▼2013年:16.8日(厚労省のサイトはこちら

(0.5日短縮)

▼2014年:16.3日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2015年:16.1日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日延伸)

▼2016年:16.2日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2017年:16.0日(厚労省のサイトはこちら

(0.4日短縮)

▼2018年:15.6日(厚労省のサイトはこちら)↓
(0.2日延伸)

▼2019年:15.8日(厚労省のサイトはこちら



一方、月末病床利用率は、次のような状況です。やはり増減を繰り返していますが、2012年から19年にかけて徐々に向上していると見ることができそうです。

▼2012年:75.2%(厚労省のサイトはこちら

(0.9ポイント低下)

▼2013年:74.3%(厚労省のサイトはこちら

(0.8ポイント低下)

▼2014年:73.5%(厚労省のサイトはこちら

(3.1ポイント低下)

▼2015年:70.4%(厚労省のサイトはこちら

(3.6ポイント向上)

▼2016年:74.0%(厚労省のサイトはこちら

(1.0ポイント向上)

▼2017年:75.0%(厚労省のサイトはこちら

(0.1ポイント低下)

▼2018年:74.9%(厚労省のサイトはこちら)↓
(1.1ポイント向上)

▼2019年:76.0%(厚労省のサイトはこちら



このように「10月分」データだけを見ると、2012年以降、大きく見れば、「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」を一定程度、実現できていると考えることができそうです。

Gem Medで繰り返しお伝えしていますが、平均在院日数の短縮は▼急性期一般病棟(旧7対1・10対1一般病棟)等における「重症患者割合」(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」などのリスク低減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった「経営の質」「医療の質」双方の向上に直結します。

ただし、「在院日数の短縮」は▼空床の発生・増加 → ▼病床利用率の低下 → ▼病院経営の悪化―にも繋がる、両刃の剣であることも事実です(出来高・DPCのいずれにおいても入院料が「1日当たり」で設定されているため)。

このため、「在院日数の短縮」によって医療の質向上を図ると同時に「病床利用率を向上」させ、病院経営を安定させなければなりません。このためには、▼かかりつけ医等と密接に連携して紹介患者を確保する▼救急搬送患者を積極的に受け入れる―などし、「重症の新規入院患者」獲得に力を入れることが必要不可欠です。この点、「10月分」の状況を見れば両者を一定程度実現できており、「理想」的な状況にあることが分かります。

ただし、地域によっては人口減少モードに入っており(日本全国では人口減少が進んでいるが、大都市では増加しているところもある)、多くの地域で「患者数そのものの減少」が進んでいます。近い将来、大都市部でも多くで人口減少(=患者数減少)が始まります。そうした中では、「減少する患者を、多くの病院で奪い合う」状況が生じ、個別病院の「集患努力」が結実しないケースが多くなってきます。

客観的に▼地域の医療ニーズ▼競合病院の状況▼自院の機能やリソース―を分析し、病床の機能転換(急性期から回復期・慢性期)や、「ダウンサイジング」(病床の削減)、さらに共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども検討していく必要があります。厚労省は、公立病院・公的病院等の一部(424病院→440病院程度)について「再編統合の再検証が特に強く要請される」との考えを示しており(関連記事はこちら)、また2020年度予算では「医療法上の病床を稼働病床数の1割以上削減する」病院について、病床削減割合に応じた補助金(84億円)が創設されます(関連記事はこちらこちら)。こうした状況を踏まえて「自院の状況・地域の状況」を再確認してみることが重要です。



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