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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

「6月分」データ、2016年以降、在院日数の短縮に、新規患者獲得が追いつかず―病院報告、2018年6月分

2018.10.10.(水)

 「6月分」のデータを追いかけると、2013年から2016年にかけて「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを両立できる理想的な動きとなっていたが、2016年以降は病床利用率が低下しており、多くの病院で「在院日数の短縮に、新規患者の獲得が追いついていない」と考えられる―。

 こうした状況が、厚生労働省が10月9日に公表した2018年6月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2018年5月から6月にかけて、入院患者は微増、外来患者は大幅増

 厚労省は毎月、全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2018年5月分の状況はこちら、2018年4月分の状況はこちら、2018年3月分の状況はこちら)。

 今年(2018年)6月における(1)の「1日平均患者数」は、病院全体で入院123万6130人(前月比7342人・0.6%増)、外来136万1252人(同4万4571人・3.4%増)となりました。入院では微増、外来では大幅増という状況です。

医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:66万7616人(同7124人・1.1%増)▼療養病床:28万1919人(同812人・0.3%減)▼精神病床:28万4903人(同1042人・0.4%増)▼結核病床:1633人(同16人・1.0%減)―などという状況です。
病院報告(2018年6月)1 181009
  
 (2)の「平均在院日数」に目を移してみると、病院全体では27.2日で、前月と比べて0.9日短縮しました。病床種別に見ると、▼一般病床:15.6日(前月から0.5日短縮)▼療養病床:144.5日(同2.8日延伸)▼介護療養病床:323.3日(同11.1日延伸)▼精神病床:250.5日(同6.7日短縮)▼結核病床:66.7日(同0.2日短縮)―という状況で、医療療養・介護療養では延伸、他の病床では前月から短縮しています。
病院報告(2018年6月)2 181009
  
 さらに(3)の「月末病床利用率」を見てみると、病院全体では77.1%で、前月から2.0ポイント低下してしまいました。病床種別に見ると、▼一般病床:70.7%(前月比3.4ポイント低下)▼療養病床:86.7%(同0.6ポイント低下)▼介護療養病床:91.5%(同0.2ポイント向上)▼精神病床:85.8%(同0.2ポイント向上)▼結核病床33.6%(同0.7ポイント低下)―という状況です。
病院報告(2018年6月)3 181009
 

6月分のデータからも「多くの病院で新規患者獲得に苦労している」状況が見える

 次に、一般病床における「6月分」の平均在院日数の推移を見てみましょう。2012年以降、概ね短縮傾向にあります。

▼2012年:17.3日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日短縮)

▼2013年:17.2日(厚労省のサイトはこちら

(0.7日短縮)

▼2014年:16.5日(厚労省のサイトはこちら

(0.7日短縮)

▼2015年:15.8日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2016年:15.6日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日延伸)

▼2017年:15.7日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日短縮)

▼2018年:15.6日(厚労省のサイトはこちら

  
 一方、月末病床利用率は、2013年から16年にかけて向上傾向にありましたが、その後、大きく低下してしまっています。

▼2012年:71.0%(厚労省のサイトはこちら

(0.1ポイント低下)

▼2013年:70.9%(厚労省のサイトはこちら

(1.5ポイント向上)

▼2014年:72.4%(厚労省のサイトはこちら

(1.1ポイント向上)

▼2015年:73.5%(厚労省のサイトはこちら

(0.6ポイント向上)

▼2016年:74.1%(厚労省のサイトはこちら

(0.8ポイント低下)

▼2017年:73.3%(厚労省のサイトはこちら

(2.6ポイント低下)

▼2018年:70.7%(厚労省のサイトはこちら

 
メディ・ウォッチで繰り返しお伝えしていますが、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院における重症患者割合の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった、経営の質・診療の質の双方の向上につながります。

しかし、単に「在院日数」を短縮させるだけでは「空床」が発生し、経営を悪化させてしまうことになります。そこで、▼かかりつけ医等と連携した重症紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策を同時に採らなければなりません。

 これまで「10月分」から「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上(つまり新規入院患者の獲得)」との両立が実現できていましたが、「2月分」から「6月分」のデータでは、両立ができていません。平均在院日数の短縮が進む一方で、これに「新規患者の獲得」が追いついていない格好です。

2013年から16年にかけては「6月分」では、理想的な動き(在院日数短縮と病床利用率向上との両立)をしていましたが、その後は、利用率が2年連続で下がってしまいました。我が国は人口減少社会に入っており、地方によっては、すでに患者数そのものが減少し始めていることが、この背景にある可能性があります。近く、都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まることが確実であり、各病院におかれては「ダウンサイジング」(病床の削減)や共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を早急に進める必要があります(関連記事はこちら)。
 
  
 
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