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「5月分」データから「在院日数短縮が進む一方で、新規患者獲得が進まない」状況が見える―病院報告、2018年5月分

2018.9.7.(金)

 「10月分」から「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とが両立できていたが、「2月分」から「5月分」のデータを見ると、両立できていない。多くの病院では、平均在院日数の短縮に「新規患者の獲得」が追いついていないと考えられる―。

 こうした状況が、厚生労働省が9月3日に公表した2018年5月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2018年4月から5月にかけて、入院患者は微減、外来患者は微増

 厚労省は毎月、全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2018年4月分の状況はこちら、2018年3月分の状況はこちら、2018年2月分の状況はこちら)。

 今年(2018年)5月における(1)の「1日平均患者数」は、病院全体で入院122万8788人(前月比1万6913人・1.4%減)、外来136万1681人(同1万9993人・1.5%増)となりました。入院では微減、外来では微増という状況です。

医療法上の病床種別に入院患者数を見ると、▼一般病床:66万492人(同1万4618人・2.2%減)▼療養病床:28万2731人(同2476人・0.9%減)▼精神病床:28万3861人(同137人・0.04%増)▼結核病床:1649人(同42人・2.6%増)―などという状況です。
病院報告(2018年5月)1 180903
  
 (2)の「平均在院日数」に目を移すと、病院全体では28.1日で、前月と比べて0.3日短縮しました。病床種別に見ると、▼一般病床:16.1日(前月から0.3日短縮)▼療養病床:141.7日(同0.1日短縮)▼介護療養病床:312.2日(同14.6日延伸)▼精神病床:257.2日(同12.3日短縮)▼結核病床:66.9日(同0.4日短縮)―という状況で、介護療養を除き、前月から短縮しています。
病院報告(2018年5月)3 180903
 
 さらに(3)の「月末病床利用率」を見てみると、病院全体では79.1%で、前月から2.1ポイント向上しました。病床種別に見ると、▼一般病床:74.1%(前月比3.6ポイント向上)▼療養病床:87.3%(同0.1ポイント低下)▼介護療養病床:91.3%(同増減なし)▼精神病床:85.6%(同増減なし)▼結核病床34.3%(同1.4ポイント向上)―という状況です。
病院報告(2018年5月)2 180903
 

2-5月分のデータから「多くの病院で新規患者獲得に苦労している」状況が伺える

 次に、一般病床における「5月分」の平均在院日数の推移を見てみると、2014年から15年にかけてやや上昇したものの、概ね減少傾向にあります。

▼2012年:17.6日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日短縮)

▼2013年:17.3日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2014年:17.1日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日延伸)

▼2015年:17.4日(厚労省のサイトはこちら

(0.5日短縮)

▼2016年:16.9日(厚労省のサイトはこちら

(0.5日短縮)

▼2017年:16.4日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日短縮)

▼2018年:16.1日(厚労省のサイトはこちら

  
 一方、月末病床利用率は、次のように上昇と低下を繰り返しています。

▼2012年:74.8%(厚労省のサイトはこちら

(0.9ポイント低下)

▼2013年:73.9%(厚労省のサイトはこちら

(3.4ポイント低下)

▼2014年:70.5%(厚労省のサイトはこちら

(0.9ポイント低下)

▼2015年:69.6%(厚労省のサイトはこちら

(3.7ポイント向上)

▼2016年:73.3%(厚労省のサイトはこちら

(1.8ポイント向上)

▼2017年:75.1%(厚労省のサイトはこちら

(1.0ポイント低下)

▼2018年:74.1%(厚労省のサイトはこちら

 
メディ・ウォッチで繰り返しお伝えしていることですが、平均在院日数の短縮には、▼急性期病院における重症患者割合の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった、経営の質・診療の質の双方を向上させる効果があります(関連記事はこちら)。

ただし、単に「在院日数」を短縮させるだけでは「空床」が発生し、経営を悪化させてしまうため、▼かかりつけ医等と連携した重症紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策を同時に行わなければなりません。

 これまで「10月分」から「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上(つまり新規入院患者の獲得)」との両立が実現できていましたが、「2月分」から「5月分」のデータでは、両立ができていません。全般的に平均在院日数の短縮は進んでおり、これに「新規患者の獲得」が追いついていない格好です。

我が国は人口減少社会に入っており、地方によっては、すでに患者数そのものが減少し始めていることが、両立(新規患者の獲得)を困難としている要因の1つとも考えられます。近い将来、都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まることが確実であり、各病院におかれては「ダウンサイジング」(病床の削減)や共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を進めていくことが重要でしょう(関連記事はこちらこちら)。

 
 
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