「7月分」データ、2016年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを両立―病院報告、2018年7月分
2018.12.6.(木)
「7月分」のデータを追いかけると、2016年以降、「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを両立できる理想的な動きとなった―。
こうした状況が、厚生労働省が12月5日に公表した2018年7月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。今後の動きが注目されます
2018年6月から7月にかけて、入院患者は増加、外来患者は減少
厚労省は毎月、全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2018年6月分の状況はこちら、2018年5月分の状況はこちら、2018年4月分の状況はこちら)。
今年(2018年)7月における(1)の「1日平均患者数」は、病院全体で入院124万8119人(前月比1万1989人・1.0%増)、外来133万6696人(同2万4556人・1.8%減)となりました。入院では増加、外来では減少という状況です。
医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:67万9623人(同1万2007人・1.8%増)▼療養病床:28万1119人(同800人・0.3%減)▼精神病床:28万5659人(同756人・0.3%増)▼結核病床:1648人(同15人・0.9%増)―などという状況です。
(2)の「平均在院日数」を見てみると、病院全体では27.1日で、前月から0.1日短縮しました。病床種別に見ると、▼一般病床:15.7日(前月から0.1日延伸)▼療養病床:143.7日(同0.8日短縮)▼介護療養病床:311.5日(同11.8日短縮)▼精神病床:262.4日(同11.9日延伸)▼結核病床:66.6日(同0.1日短縮)―という状況で、一般病床ではわずかながら延伸してしまっています。
さらに(3)の「月末病床利用率」を見てみると、病院全体では80.9%で、前月から3.8ポイント向上しています。病床種別に見ると、▼一般病床:77.0%(前月比6.3ポイント向上)▼療養病床:87.4%(同0.7ポイント向上)▼介護療養病床:91.0%(同0.5ポイント低下)▼精神病床:86.5%(同0.7ポイント向上)▼結核病床34.8%(同1.2ポイント向上)―という状況です。
7月分のデータからは「多くの病院で新規患者獲得に努力している」状況が強く伺える
次に、一般病床における「7月分」の平均在院日数の推移を見てみましょう。
▼2012年:17.2日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.6日短縮)
↓
▼2013年:16.6日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.3日短縮)
↓
▼2014年:16.3日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.4日短縮)
↓
▼2015年:15.9日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.2日延伸)
↓
▼2016年:16.1日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(増減なし)
↓
▼2017年:16.1日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.4日短縮)
↓
▼2018年:15.7日(厚労省のサイトはこちら)
一方、月末病床利用率は、次のように推移しています。
▼2012年:75.8%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.1ポイント低下)
↓
▼2013年:75.7%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(1.1ポイント低下)
↓
▼2014年:74.6%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.8ポイント低下)
↓
▼2015年:73.8%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(2.6ポイント低下)
↓
▼2016年:71.2%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(3.2ポイント向上)
↓
▼2017年:74.4%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(2.6ポイント向上)
↓
▼2018年:77.0%(厚労省のサイトはこちら)
メディ・ウォッチでは繰り返しお伝えしていますが、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院における重症患者割合の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった、経営の質・診療の質の向上につながります。
しかし、単に「在院日数」を短縮させるだけでは「空床」が発生し、経営を悪化させてしまうことになりかねません。そこで、▼かかりつけ医等と連携した重症紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策を同時に採る必要があるのです。
これまで「10月分」から「1月分」では、2015年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上(つまり新規入院患者の獲得)」との両立が実現できていましたが、「2月分」から「6月分」のデータでは、両立ができていませんでした。この点、「7月分」データからは、再び、2016年以降「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」との両立が実現できていることが分かりました。今後の動きが注目されます。
ただし、地方によっては、すでに患者数そのものが減少し始めています。近く、都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まると推測され、各病院におかれては「ダウンサイジング」(病床の削減)や共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を早急に進める必要があります(関連記事はこちら)。
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