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「8月分」データ、2012年以降「在院日数の短縮」続くが、「病床利用率の向上」が追いつかず―病院報告、2018年8月分

2018.12.26.(水)

 「8月分」のデータを追いかけると、2012年以降、平均在院日数は一貫して短縮傾向にあるが、病床利用率は増減を繰り返しており、「在院日数の短縮と病床利用率の向上との両立」は実現できていない―。

 こうした状況が、厚生労働省が12月21日に公表した2018年8月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2018年7月から8月にかけて、入院患者・外来患者ともに増加

 厚労省は毎月、全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2018年7月分の状況はこちら、2018年6月分の状況はこちら、2018年5月分の状況はこちら)。

 今年(2018年)8月における(1)の「1日平均患者数」は、病院全体で入院125万3388人(前月比5269人・0.4%増)、外来135万7247人(同2万551人・1.5%増)となりました。入院・外来ともに前月から増加しています。

医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:68万3646人(同4023人・0.6%増)▼療養病床:28万1517人(同398人・0.1%増)▼精神病床:28万6524人(同865人・0.3%増)▼結核病床:1633人(同15人・0.9%減)―などという状況です。

  
 次に(2)の「平均在院日数」を見てみると、病院全体では26.8日で、前月から0.3日短縮しました。病床種別に見ると、▼一般病床:15.5日(前月から0.2日短縮)▼療養病床:142.3日(同1.4日短縮)▼介護療養病床:319.7日(同8.2日延伸)▼精神病床:260.4日(同2.0日短縮)▼結核病床:62.6日(同4.0日短縮)―という状況で、介護療養を除き短縮しています。

  
 一方、(3)の「月末病床利用率」に目を移すと、病院全体では79.6%で、前月から1.3ポイント低下してしまいました。病床種別に見ると、▼一般病床:74.6%(前月比2.4ポイント低下)▼療養病床:87.7%(同0.3ポイント向上)▼介護療養病床:91.5%(同0.5ポイント向上)▼精神病床:86.4%(同0.1ポイント低下)▼結核病床33.9%(同0.9ポイント低下)―という状況です。療養病床では医療・介護ともに向上しましたが、ほかの病床では低下してしまいました。

 

8月分のデータからは「多くの病院で新規患者獲得に苦戦している」状況が伺える

 次に、一般病床における「8月分」の平均在院日数の推移を見てみましょう。一貫して短縮傾向にあります。

▼2012年:16.9日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2013年:16.7日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2014年:16.5日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日短縮)

▼2015年:16.2日(厚労省のサイトはこちら

(0.4日短縮)

▼2016年:15.8日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2017年:15.6日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日短縮)

▼2018年:15.5日(厚労省のサイトはこちら

  
 一方、月末病床利用率は、次のように推移しています。低下と向上を繰り返しており、明確な傾向は現時点では確認できません。

▼2012年:74.3%(厚労省のサイトはこちら

(2.8ポイント低下)

▼2013年:71.5%(厚労省のサイトはこちら

(1.6ポイント低下)

▼2014年:69.9%(厚労省のサイトはこちら

(2.9ポイント向上)

▼2015年:72.8%(厚労省のサイトはこちら

(1.8ポイント向上)

▼2016年:74.6%(厚労省のサイトはこちら

(0.6ポイント向上)

▼2017年:75.2%(厚労省のサイトはこちら

(0.6ポイント低下)

▼2018年:74.6%(厚労省のサイトはこちら

  
メディ・ウォッチで繰り返しお伝えしているとおり、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院においては「重症患者割合」(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった経営の質・診療の質の向上に直結します。

しかし、単に「在院日数」を短縮させるだけでは「空床」が発生し、また出来高・DPCのいずれにおいても入院料が「1日当たり」で設定されているため経営を悪化させてしまいます。そこで、▼かかりつけ医等と連携した重症紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策を同時に採る必要があるのです。

 これまで「10月分」から「1月分」および「7月分」では、直近のデータから「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上(つまり新規入院患者の獲得)」との両立が実現できていましたが(関連記事はこちら(7月分)こちら(1月分)こちら(12月分)こちら(11月分)こちら(10月分))、「2月分」から「6月分」では、両立ができていませんでした(関連記事はこちら(6月分)こちら(5月分)こちら(4月分)こちら(3月分)こちら(2月分))。この点、「8月分」データからも、やはり「在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」との両立は実現できていないようです。もっとも、「8月分」については、▼平均在院日数は一貫して短縮している▼病床利用率は2016年以降、総体的には高い水準で推移している―ことから、両立まであと一歩と見ることもできそうです。今後の動きが注目されます。

なお、地方によっては、すでに人口減少によって「患者数そのもの」が減少し始めています。近く、都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まると推測され、各病院におかれては「ダウンサイジング」(病床の削減)や共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を早急に進める必要があるでしょう(関連記事はこちら)。

 
 
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