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「10月分」データから、2016年以降、在院日数短縮と新規患者獲得を両立―病院報告、2018年10月分

2019.2.18.(月)

 「10月分」のデータを追いかけると、病院の一般病床では、2016年以降、難しい「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを一定程度、両立できている―。

 こうした状況が、厚生労働省が2月13日に公表した2018年10月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2018年9月から10月にかけて、入院患者は微減、外来患者は大幅増

 厚労省は毎月、全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2018年9月末の状況はこちら、2018年8月末の状況はこちら、2018年7月末の状況はこちら)。

 昨年(2018年)10月における(1)の「1日平均患者数」は、病院全体で入院123万1127人(前月比1703人・0.1%減)、外来140万1137人(同15万1835人・12.2%増)となりました。入院は微減、外来は大幅増という状況です。

医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:66万9151人(同2626人・0.4%増)▼療養病床:27万6574人(同2343人・0.8%減)▼精神病床:28万3759人(同1948人・0.7%減)▼結核病床:1580人(同34人・2.1%減)―などとなっています。
病院報告(2019年10月)1 190213
 
  
 また(2)の「平均在院日数」を見てみると、病院全体では27.0日で、前月から1.7日短縮しています。病床種別に見ると、▼一般病床:15.6日(前月から0.9日短縮)▼療養病床:137.5日(同13.0日短縮)▼介護療養病床:312.4日(同21.3日短縮)▼精神病床:256.7日(同21.9日短縮)▼結核病床:63.7日(同8.9日短縮)―となり、すべての病院病床種別で短縮が実現できています。
病院報告(2019年10月)3 190213
 
  
 一方、(3)の「月末病床利用率」に目を移すと、病院全体では79.4%で、前月から2.5ポイント向上しています。病床種別に見ると、▼一般病床:74.9%(前月比4.3ポイント向上)▼療養病床:86.6%(同0.3ポイント向上)▼介護療養病床:90.5%(同0.4ポイント低下)▼精神病床:85.6%(同0.3ポイント低下)▼結核病床32.7%(同0.6ポイント低下)―という状況です。一般病床や療養病床では向上しています。
病院報告(2019年10月)2 190213
 

10月分のデータからは、2015年以降、多くの病院で理想的な動きを一定程度実現

 ここで、一般病床における「10月分」の平均在院日数の推移を見てみましょう。2013から16年にかけて、わずかに延伸してしまいましたが、2012年以降、概ね「短縮」傾向にあると見てよさそうです。

▼2012年:16.9日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日短縮)

▼2013年:16.8日(厚労省のサイトはこちら

(0.5日短縮)

▼2014年:16.3日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2015年:16.1日(厚労省のサイトはこちら

(0.1日延伸)

▼2016年:16.2日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2017年:16.0日(厚労省のサイトはこちら

(0.4日短縮)

▼2018年:15.6日(厚労省のサイトはこちら

  
 一方、月末病床利用率は、次のように推移しています。2012年から15年にかけて低下が続きましたが、その後、16年以降は向上に転じ、17年から18年にかけては「横ばい」(0.1ポイント低下)と言えそうです。

▼2012年:75.2%(厚労省のサイトはこちら

(0.9ポイント低下)

▼2013年:74.3%(厚労省のサイトはこちら

(0.8ポイント低下)

▼2014年:73.5%(厚労省のサイトはこちら

(3.1ポイント低下)

▼2015年:70.4%(厚労省のサイトはこちら

(3.6ポイント向上)

▼2016年:74.0%(厚労省のサイトはこちら

(1.0ポイント向上)

▼2017年:75.0%(厚労省のサイトはこちら

(0.1ポイント低下)

▼2018年:74.9%(厚労省のサイトはこちら

 
 「10月分」の平均在院日数と病床利用率の動向を組み合わせて見てみると、▼2012年から15年にかけて「平均在院日数の短縮」が進む一方で、「病床利用率の向上」はできていない▼2016年以降は、「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」を一定程度実現できている―状況が伺えます。

  
メディ・ウォッチで繰り返しお伝えしているとおり、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院においては「重症患者割合」(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった経営の質・診療の質の向上に直結します。

ただし、単に「在院日数」を短縮させるだけでは「空床」が発生し、また出来高・DPCのいずれにおいても入院料が「1日当たり」で設定されているため経営を悪化させてしまいかねません。そこで、▼かかりつけ医等と連携した重症紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策を同時に採る必要があるのです。

 「10月分」の状況をみると、2016年以降、この難しい両者を一定程度、実現できていると考えることができます。新規患者獲得に向けて「地域の中小病院や診療所、介護施設・事業所等との連携」や「救急患者の積極的な受け入れ」を進めていると考えられるでしょう。

もっとも、地方によっては、すでに人口減少によって「患者数そのもの」が減少し始め、また都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まります。各病院におかれては、やはり「ダウンサイジング」(病床の削減)や共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を早急に進める必要があります(関連記事はこちら)。

 
 
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