2014-17年では在院日数短縮と新規患者獲得を両立できたが、18年にかけて病床利用率は低下―病院報告、2018年11月分
2019.3.8.(金)
「11月分」のデータを追いかけると、病院の一般病床では、2014から17年にかけて、「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを両立できていたが、18年にかけては残念ながら「平均在院日数の短縮」に新規患者獲得が追いつかず、病床利用率は低下してしまった―。
こうした状況が、厚生労働省が3月6日に公表した2018年11月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。
2018年10月から11月にかけて、入院患者は微増、外来患者は微減
厚労省は、全国の病院の(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として、毎月、公表しています(2018年10月末の状況はこちら、2018年9月末の状況はこちら、2018年8月末の状況はこちら)。
昨年(2018年)11月における(1)の「1日平均患者数」は、病院全体で▼入院:123万8590人で前月比7463人・0.6%増▼外来:139万3236人で同じく7481人・0.5%減―となりました。入院は微増、外来は微減という状況です。
医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:67万7876人(前月比8725人・1.3%増)▼療養病床:27万6009人(同2343人・0.2%減)▼精神病床:28万3060人(同699人・0.2%減)▼結核病床:1577人(同3人・0.2%減)―などとなっています。
次に(2)の「平均在院日数」を見てみると、病院全体では27.1日で、前月から0.1日とわずかですが延伸してしまっています。病床種別に見ると、▼一般病床:15.8日(前月から0.2日延伸)▼療養病床:136.7日(同0.8日短縮)▼介護療養病床:303.3日(同9.1日短縮)▼精神病床:264.3日(同7.6日延伸)▼結核病床:62.8日(同0.9日短縮)―となり、一般病床と精神病床では延伸してしまっています。
一方、(3)の「月末病床利用率」に目を移すと、病院全体では79.6%で、前月から0.2ポイント向上しました。病床種別に見ると、▼一般病床:75.2%(前月比0.3ポイント向上)▼療養病床:86.9%(同0.3ポイント向上)▼介護療養病床:90.6%(同0.1ポイント向上)▼精神病床:85.6%(同増減なし)▼結核病床33.5%(同0.8ポイント向上)―という状況です。多くの病床種別で向上しています。
11月分のデータ、2014から17年にかけて多くの病院で理想的な動き
ここで、一般病床における「11月分」の平均在院日数の推移を見てみましょう。2012年から14年にかけて動きはありませんでしたが、その後、順調に「短縮」が進んでいることが分かります。2012年以降、概ね「短縮」傾向にあると見てよいでしょう。
▼2012年:17.0日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(増減なし)
↓
▼2013年:17.0日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(増減なし)
↓
▼2014年:17.0日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.5日短縮)
↓
▼2015年:16.5日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.3日短縮)
↓
▼2016年:16.2日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.1日短縮)
↓
▼2017年:16.1日(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.3日短縮)
↓
▼2018年:15.8日(厚労省のサイトはこちら)
一方、月末病床利用率は、次のように推移しています。2012年から14年にかけて低下が続きましたが、その後、15から17年にかけて「向上」に転じ、17年から18年にかけては残念ながら低下してしまいました。
▼2012年:76.0%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(3.2ポイント低下)
↓
▼2013年:72.8%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(1.3ポイント低下)
↓
▼2014年:71.5%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(3.0ポイント向上)
↓
▼2015年:74.5%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(1.9ポイント向上)
↓
▼2016年:76.4%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(0.6ポイント向上)
↓
▼2017年:77.0%(厚労省のサイトはこちら)
↓
(1.8ポイント低下)
↓
▼2018年:75.2%(厚労省のサイトはこちら)
注目すべきは、2014から17年にかけて「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを見事に達成できている点です。
メディ・ウォッチで繰り返しお伝えしているとおり、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院においては「重症患者割合」(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」のリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった経営の質・診療の質の向上に直結します。
もっとも、単に「在院日数」を短縮させるだけでは「空床」が発生・増加し、また出来高・DPCのいずれにおいても入院料が「1日当たり」で設定されているため経営の悪化につながってしまいます。そこで、▼かかりつけ医等と連携した重症の紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策を同時に採る必要があるのです。
「11月分」の状況をみると、2014-17年にかけては、この難しい両者を実現できていましたが、17年から18年にかけて、残念ならが「平均在院日数の短縮」に新規患者獲得などが追いつかず、病床利用率は低下してしまいました。
新規患者獲得に向けて、さらに「地域の中小病院や診療所、介護施設・事業所等との連携」や「救急患者の積極的な受け入れ」を進めることが求められます。ただし、地方によっては、すでに人口減少によって「患者数そのもの」が減少し始め、また都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まり、新規患者の獲得が難しく(病院間で患者の奪い合いが激化する)なってきます。各病院におかれては、やはり「ダウンサイジング」(病床の削減)や共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を早急に進める必要があります(関連記事はこちら)。
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