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「介護職員の処遇改善」加算取得促進に向けた支援を!介護業務の魅力等向上も重要―社保審・介護給付費分科会

2022.4.8.(金)

介護職員の処遇改善を目的とする加算について、いまだに取得できていない事業所・施設がある―。

加算取得促進に向けて「事務負担の軽減」「算定要件の見直し(例えば対象職種を看護職員やケアマネジャーに広げるなど)」などを検討していく必要がある―。

また介護職員の離職防止に向けては、給与増にとどまらず、介護業務の「やりがい」「魅力アップ」が極めて重要である点を忘れてはならない―。

4月7日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会に、2021年度の「介護従事者処遇状況調査結果」が報告され、こういった議論が行われました(関連記事はこちら)。

【処遇改善の状況に関する資料】
全体像(ポイント)
概要
詳細版

2021年度の介護従事者処遇状況調査結果のポイント(介護事業経営調査委員会1 220324)

事務負担の軽減、加算算定対象職種の拡大などを検討してはどうか

少子高齢化が進展する中で「介護提供体制を確保するための介護人材の確保・定着」が非常に大きな課題となっています。介護分野では他産業に比べて賃金・給与が低いと指摘されており、厚生労働省は▼介護職員処遇改善加算(2012年度改定で、介護職員処遇改善交付金を受けて創設され、その後、順次拡充)▼特定処遇改善加算(2019年度改定で創設、主に勤続年数の長い介護福祉士の処遇改善を目指す)―という2つの加算を設けるとともに、さらなる処遇改善(ベースアップ)を目指し、この2月から9月に補助金、10月以降に新加算(介護職員等ベースアップ等支援加算)が設けられます(関連記事はこちら)。

介護職員等ベースアップ等支援加算を含めた、3つの処遇改善加算の全体像(介護給付費分科会(3) 220228)



介護給付費分科会および下部組織である介護事業経営調査委員会では「こうした加算が、実際にどれほど介護職員の賃金・給与増に結び付いているのか」を調査・分析し、制度改善につなげています。3月24日に介護事業経営調査委員会に結果報告がなされ、今般、親組織である介護給付費分科会に報告されました。

詳細は関連記事に譲りますが、 例えば次のような状況が明らかになっています。

▽一昨年(2020年)9月から昨年(2021年)9月にかけて「特定処遇改善加算(I)(II)取得事業所・施設に勤務する介護職員」(月給・常勤)の平均給与は7780円増加し、32万3190円となった―。

▽2012年度から稼働している【介護職員処遇改善加算】の(I)―(III)を取得する事業所・施設は全体の93.8%で前年度調査から1.1ポイントの増加にとどまるが、このうち【特定処遇改善加算】を取得する事業所・施設は72.8%で前年度調査から9.5ポイント増加した―。

▽特定処遇改善加算を届け出ていない理由について、「事務作業が煩雑」「職種間・介護職員間の賃金バランスがとれなくなる」など―。



こうした結果を踏まえ介護給付費分科会委員からは「加算取得促進に向けた支援を強化する必要がある」との声が多数出ています。

上述のように加算取得が進んでいますが、▼介護職員処遇改善加算(I)-(III)を取得できていない事業所・施設が全体の6.3%▼特定処遇改善加算を取得できていないところが、介護職員処遇改善加算(I)-(III)取得事業所・施設の27.2%—あります。

加算を取得しない・できない理由としては、▼賃金改善の仕組みを設けるための事務作業が煩雑▼職種間・介護職員間の賃金バランスが確保できなくなる―といったところが多くなっています。

前者の事務作業に関しては、長内繁樹委員(全国市長会、大阪府豊中市長)や河本滋史委員(健康保険組合連合会理事)、及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)、小林司委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)らは「事務負担の効率化」「個別事業所・施設の相談に応じる」などの支援を強化していくべきと強調。また小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会副会長)は「2012年度に創設されてから、いまだに6.3%が介護職員処遇改善加算(I)-(III)を取得できていない。要件の見直しなども考えていくべきではないか」とコメントしています。

この点、今年(2022年)10月からは新加算(介護職員等ベースアップ等支援加算)が始まるため、介護職員の処遇改善に向けて(1)介護職員処遇改善加算(2)特定処遇改善加算(3)介護職員等ベースアップ等支援加算―の3種類の加算が動くことになり、事業所・施設サイドはもちろん、自治体サイドの負担が大きくなります(もちろん重複事務は効率化可能)。「事務負担の軽減」が非常に重要になってきます。



また後者の「賃金バランス」とは、例えば「介護医療院や介護療養において、介護職員の賃金改善には加算財源を充てられるが、看護職員の賃金改善に充てることはできず、賃金バランスが崩れてしまうために加算を取得しない」といった事例が代表的です。

この点に関連して、田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)や濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)らは「介護事業所に勤務する看護職員や、介護支援専門員(ケアマネジャー)についても加算対象に加えることを検討してほしい」旨の要望を改めておこないました。また病院経営者である江澤委員も「スタッフ間の賃金バランス確保には皆(病院経営者など)、頭を悩ませている」と現場の苦悩を吐露しています。

なお濵田委員は「介護職員処遇改善加算(すべて)を取得する事業所・施設において職種別の給与水準を見ると、介護支援専門員(ケアマネジャー)の給与は36万円超と高水準になっている。しかし、ケアマネは勤続年数が長いために『給与水準が高く』見えるにすぎず、40歳以下ではケアマネジャーと介護職員とで給与逆転が生じている」とコメントしています。

介護支援専門員の給与水準は高く見えるが・・・(介護給付費分科会 220407)



なお、河本委員や井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)は「職員の処遇改善は、本来『経営努力』『労使交渉』の中で行うもので、加算では『継続的・安定的な処遇改善』を行うことはできない。処遇改善の在り方、手法などについて、今後、改めて議論すべき」とも付言しています(関連記事はこちら)。

介護業務のやりがい、魅力発信も最重要事項

さらに、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)や江澤委員は「離職防止のためには『やりがい』が極めて重要である」と改めて強調しました。従前より「給与水準は、重要であるが『最重要要素』ではない。『職場環境』や『やりがい』こそが離職防止に最も重要である」と指摘されます(「給与水準はそれほど高くないが、非常に働きやすいことから、長く働き続けられる」職場は決して少なくない)(関連記事はこちら)。

例えば東委員は「介護業務について『厳しい』『しんどい』とのイメージがあることがそもそも好ましくない。介護福祉士は専門的な業務に集中し、周辺業務は介護助手(元気な高齢者などを活用)に担ってもらうといった業務の整理を行い、介護が『やりがいのある仕事』『魅力的な仕事』というイメージにつながるようにすることが最も重要ではないか」と指摘しました。



介護職員の処遇改善は、2024年度の次期介護報酬改定に向けても「最重要論点の1つ」になることは間違いありません。今後の議論にも要注目です。



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