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2020年4月の医療事故は19件、内科で3件、整形外科・循環器・産婦人科で各2件など―日本医療安全調査機構

2020.5.14.(木)

今年(2020年)4月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は19件。2015年10月の医療事故調査制度発足から累計1729件の医療事故が報告され、このうち81.4%で院内調査が完了している。一般国民へも制度が浸透してきているが、依然として「正しい理解」は道半ばのようだ―。

日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が5月13日に公表した「医療事故調査制度の現況報告(4月)」から、こうした状況を明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

2020年4月の医療事故報告件数、内科で3件、整形外科・循環器・産婦人科で各2件など

すべての医療機関等(病院、診療所、助産所)には、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告する義務が課せられています【医療事故調査制度、2015年10月スタート】。事故の原因や背景を調査・分析して「再発防止策」を構築。それを医療現場に広く共有することで、医療安全の確保を目指す制度です(制度創設に関する記事はこちら、制度改正に関する記事はこちらこちら)。

医療事故調査制度の大枠は、次のような流れです。

▽医療事故発生を確認した際、院長などの管理者は、速やかにセンターへ事故発生を報告する

▽事故が発生した医療機関が自ら事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▽当該医療機関は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する(調査結果報告書の提示までは義務付けられていない)

▽センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る

医療事故調査制度の概要



センターでは重大事故について詳細を分析し、再発防止策として提言を行っており、これまでに下記11本の提言が公表されています。
(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―
(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析
(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析
(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析
(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析
(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析
(7)一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析
(8)救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析
(9)入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析(関連記事はこちら
(10)大腸内視鏡検査等の前処置に係る死亡事例の分析
(11)肝生検に係る死亡事例の分析



さらに我が国唯一のセンターである日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を公表しています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。今年(2020年)4月には、新たに19件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は1729件となりました。報告数が少なくっている背景に新型コロナウイルス感染症の影響があるのか、今後の調査・分析が待たれます。

今年(2020年)4月に新たに報告された医療事故19件の内訳は、病院から17件、診療所から2件でした。制度発足(2015年10月、以下同)からの累計では、病院から1631件(事故全体の94.3%)、診療所から98件(同5.7%)となっています。

今年(2020年)4月に新たに報告された事故を診療科別に見ると、▼内科:3件▼整形外科:2件▼循環器内科:2件▼産婦人科:2件―などで多くなっています。制度発足からの累計では、▼外科:283件(事故全体の16.4%)▼内科:222件(同12.8%)▼整形外科:146件(同8.4%)▼循環器内科:140件(同8.1%)▼消化器科:136件(同7.9%)―などで多くなっています。

2020年4月の医療事故報告件数(医療事故の現況(2020年4月)1 200513)

センターへの相談件数は累計8874件、一般国民の正しい制度理解はまだ道半ば

センターへの報告が義務付けられるのは、医療機関内で生じたすべての死亡・死産事例ではありません。前述のとおり、死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が、『予期せず』かつ『医療に起因し、または起因すると疑われる』もの」に限定されます。

例えば、火災に巻き込まれ極めて重度の熱傷を負った被害者が救急搬送され、適切な治療が行われたにもかかわらず、残念ながら死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」されることからセンターへの報告は必要ないでしょう。もっとも、そうしたケースでも明らかな処置上のミスなどがあり通常の経過とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期しなかった」医療事故としてセンターへの報告が必要となってくるでしょう。

もちろん、どこまでが「予期された」医療事故なのかの判断は難しく、医療現場では「患者が死亡したが報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」という疑問が生じます。また、医療機関には「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といった疑問が生じることがあります。

一方、遺族の中には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故としていまだに報告されていないようだ。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念をもつ方もおられるでしょう。

こうした疑問・疑念に答えるために、センターでは相談対応を行っています。今年(2020年)4月には新たに90件の相談がセンターに寄せられ、制度発足からの累計では8874件となりました。今年(2020年)4月に新たに寄せられた相談の内訳は、▼医療機関から:48件▼遺族などから:36件▼その他・不明:6件―でした。

医療機関からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので31件(医療機関からの相談全体の57.4%)。次いで「院内調査に関するもの」14件(同25.9%)、「報告すべき医療事故か否かの判断」6件(同11.1%)などとなっています。医療現場に制度が正しく浸透していることが再確認できます。

一方、遺族などからの相談内容を見てみると、「医療事故に該当するか否かの判断」が33件(遺族などからの相談全体の91.7%)と圧倒的多数を占めています。また「制度開始前の事故事例」「生存事例」など、そもそも報告対象とならないものに関する相談件数も依然少なくなく、一般国民に対して「正しい理解」を促す取り組みが求められている状況は大きく変化していないようです。

2020年4月のセンターへの相談件数(医療事故の現況(2020年4月)3 200513)

センターへの調査依頼は新たに遺族から3件

医療事故調査制度の目的は、犯人捜しや特定個人等への責任追及ではなく、「再発防止策構築のための調査・分析」にあります。事故が生じた医療機関等が自ら事故の内容や背景を調査し、自院の体制・手続き・ルールなどに問題がなかったかを検証していく中で「自院の課題」を発見し、そこから「再発防止策構築」に繋げることが重要とされています。このために、「まず事故が発生した医療機関が自ら原因究明に向けた調査【院内調査】を行う」ことが求められているのです。

今年(2020年)4月に新たに院内調査が完了した事例は17件で、制度発足からの累計では1408件となりました。これまでに報告された全1729件の医療事故のうち81.4%(前月から0.1ポイント増)で院内調査が完了しています。院内調査のスピードが一段と高まっている状況が伺えます。

2020年4月の院内調査件数(医療事故の現況(2020年4月)2 200513)



もっとも、遺族側には「院内調査結果に納得がいかない」「院内調査が遅い。何かを隠そうとしているのではないか」との疑念が生じることがあるでしょう。一方で、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあります(医師会や病院団体、大学病院などが調査をサポートする体制が整えられている)。このためセンターでは「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制も敷いています。ただし、そこでは「センターが最初から調査する」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されたのか」という観点で調査を行うことになります。

今年(2020年)4月にセンターへ寄せられた調査依頼は3件あり、すべて遺族等からのものでした。制度発足からの累計調査依頼件数は124件(遺族から102件・82.3%、医療機関から22件・17.7%)となり、またセンター調査の進捗状況を見ると39件で調査が終了しています(前月から1件増加)。


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転倒・転落により頭蓋内出血等が原因の死亡事例が頻発、多職種連携で防止策などの構築・実施を―医療安全調査機構の提言(9)
「医療事故再発防止に向けた提言」は医療者の裁量制限や新たな義務を課すものではない―医療安全調査機構
大腸内視鏡検査前の「腸管洗浄剤」使用による死亡事例が頻発、リスク認識し、慎重な適応検討を―医療安全調査機構の提言(10)
「肝生検に伴う出血」での死亡事例が頻発、「抗血栓薬内服」などのハイリスク患者では慎重な対応を―医療安全調査機構の提言(11)



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