2020年1月分医療費、男性では高血圧、女性では乳がんがトップ―健保連
2020.10.13.(火)
今年(2020年)1月分医療費のトップ疾患を見ると、医療費全体では「男性が高血圧、女性が乳がん」、医科入院では「男性が心房細動、女性が乳がん」、医科入院外では「男性が高血圧、女性が喘息」となった—。
健康保険組合連合会(健保連)が10月9日に公表した「健保組合医療費上位30疾病に関する動向調査」結果から、こうした状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。
医療費全体のトップ疾患、男性では高血圧、女性では乳がん
健康保険組合(健保組合)は、主に大企業の従業員とその家族が加入する公的医療保険です。健保組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)は、さまざまな角度からレセプトを分析し各種提言を行うなど、従前よりデータヘルスに積極的に取り組んでいます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
今般、今年(2020年)1月診療分のレセプトをもとに、「健保組合加入者は、どのような疾患に多くかかり、医療費はどの程度なのか」を分析しました。調査対象は1186組合の加入者2413万6684人のデータです。
まず医科全体で見ると、医療費シェアトップ3は、(1)本態性(原発性<一次性>)高血圧(症):医科医療費全体の3.19%を占める(2)喘息:同2.91%(3)血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎<鼻アレルギー>:2.85%—となりました。上位3疾患で8.95を占めています。昨年(2019年)10月と比べて上位3疾患の顔ぶれに変わりはありませんが、シェアが若干さがっており(0.38ポイント減)、健保組合加入者がより広範な疾患に罹患していることが分かります。
また、男女別にみるとトップ3疾患は次のようになりました。
【男性】
▽本態性(原発性〈一次性〉)高血圧(症):男性医科医療費全体の4.06%
▽喘息:同2.73%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同2.72%
→上位3疾患で、男性医科医療費の9.51%を占める
【女性】
▽乳房の悪性新生物〈腫瘍〉:女性医科医療費全体の3.77%
▽喘息:同3.10%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同3.00%
→上位3疾患で、女性医科医療費の9.87%を占める
医科入院、男性では心房細動、女性では乳がんがトップ
次に医科入院に限定して医療費シェアトップ3を見ると、(1)心房細動および粗動:医科入院医療費全体の2.25%(2)脳梗塞:同2.08%(3)乳房の悪性新生物症〈腫瘍〉:同1.84%―で、上位3疾患で医科入院医療費の6.17%を示しています。ほぼ女性のみの疾患である「乳房の悪性新生物」がトップ3に名を連ねており、「乳がん患者が増加している」状況が伺えます。早期の治療が生存率向上にとって重要なことから、検診の適正受診、自己点検などを十分に進める必要があるでしょう。
男女別にみるとトップ3疾患は次のようになっています。
【男性】
▽心房細動および粗動:男性医科入院医療費全体の3.61%
▽脳梗塞:同2.62%
▽狭心症:同2.50%
→上位3疾患で、男性医科入院医療費の8.73%を占める
男性では、循環器系の疾患での入院が多いことから、生活習慣の改善や重症化予防が極めて重要であることを再確認できます。
【女性】
▽乳房の悪性新生物〈腫瘍〉:女性医科入院医療費全体の3.86%
▽子宮平滑筋腫:同3.06%
▽統合失調症:同2.34%
→上位3疾患で、女性医科入院医療費の9.26%を占める
前述のとおり、「乳がん」の早期発見に向けた取り組みを国・保険者・医療機関・患者自身が進める必要があります。
医科入院外、男性では高血圧、女性では喘息が医療費のトップ
医科入院外に目を移すと、医療費シェアトップ3は、(1)本態性(原発性〈一次性〉)高血圧(症):医科入院外医療費全体の4.02%(2)血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同3.75%(2)(3)喘息:同3.73%―となりました。上位3疾患で医科入院医療費の11.50%を占めています。医科全体・医科入院に比べてトップ3のシェアが大きく、「特定の疾患に患者が集中している」ことが分かります。
男女別にみるとトップ3疾患は次のようになっています。
【男性】
▽本態性(原発性〈一次性〉)高血圧(症):男性医科入院外医療費全体の5.15%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同3.57%
▽喘息:同3.50%
→上位3疾患で、男性医科入院外医療費の12.22%を占める
【女性】
▽喘息:女性医科入院外医療費全体の3.98%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同3.94%
▽乳房の悪性新生物〈腫瘍〉:同3.74%
→上位3疾患で、女性医科入院外医療費の11.66%を占める
医療費適正化に向けて、「生活習慣病対策の充実・強化」や「乳がん検診の充実による早期診断・早期治療」などが効果的であることを、ここからも再確認できます。
なお、健保連によるこの分析は、▼4月診療分▼7月診療分▼10月診療分▼1月診療分―の年度4回にわたって行われています。疾患には季節変動があります(例えば、4月診療では花粉症患者が多く、1月診療ではインフルエンザや風邪の患者が多いなど)が、新型コロナウイルス感染症の大流行により、手洗いやマスク着用などの衛生面向上(結果として季節性インフルエンザの激減など)、軽微疾患による医療機関受診の控え(患者の受療行動の適正化)、予定入院・手術の延期などが生じており、今後の疾患構成等に大きな変動が出てくる可能性もあります。
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