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がんの遺伝子検査(マイクロサテライト不安定性検査)、保険診療の中で「すべての固形がん」に実施可―厚労省

2021.9.2.(木)

がん遺伝子検査の1つである「マイクロサテライト不安定性」検査について、保険診療の中で「すべての固形がん」を対象に実施することを認める―。

厚生労働省は8月25日に通知「検査料の点数の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(8月25日)から適用されています(厚労省のサイトはこちら)。

マイクロサテライト不安定性=がんになりやすい状態、抗がん剤選択で重要ポイント

ヒトの細胞は常に分裂を繰り返しています。分裂は、▼細胞内のDNAの2本鎖がほどける→ ▼1本になった鎖の「対」となる形で新しい鎖がつくられる → ▼元の1本鎖と新しい1本鎖とが結びつき、2つの2本鎖となる―という工程で進みます。この新しい鎖を作る際にエラー(ミス)が生じることがあります。多くの場合、エラー(ミス)は修復されますが、修復機能が衰えていることがあり、その場合「がんになりやすい」状態と言えます。このエラー修復機能が衰えている状態を「マイクロサテライト不安定性」と呼びます。

「●●遺伝子に変異がある場合、●●抗がん剤が奏功する」という知見が明らかになってきており(がんゲノム医療)、保険診療の中でも「悪性腫瘍遺伝子検査」として実施が認められてきています(徐々に拡大されてきている)。例えば画期的な抗がん剤(免疫チェックポイント阻害剤)のオプジーボ(ニボルマブ(遺伝子組み換え))は高頻度のマイクロサテライト不安定性をもつ結腸がん・直腸がんに、キイトルーダ(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))は高頻度のマイクロサテライト不安定性を持つ固形がんなどへの効能効果が認められており、抗がん剤選択においてマイクロサテライト不安定性などの遺伝子検査が極めて大きな意味を持つことが分かります。

マイクロサテライト不安定性検査については、従前、▼局所進行または転移が認められた標準的な治療が困難な固形がん▼手術後の大腸がん―において実施することが認められていました。今般、この対象に関する縛りを解き、「すべての固形がん」に対して、マイクロサテライト不安定性検査を実施することが保険診療の中で認められました

具体的には、D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「イ 処理が容易なもの」のうち「(1)医薬品の適応判定の補助等に用いるもの」(2500点)にについて、従前、次の検査が該当することが示されていますが、このうち(iv)を見直すものです。

(i)肺がんにおけるEGFR遺伝子検査、ROS1融合遺伝子検査、ALK融合遺伝子検査
(ii)大腸がんにおけるRAS遺伝子検査、BRAF遺伝子検査
(iii)乳がんにおけるHER2遺伝子検査
(iv)局所進行または転移が認められた標準的な治療が困難な固形がん、または手術後の大腸がんにおけるマイクロサテライト不安定性検査

(iv) 固形がんにおけるマイクロサテライト不安定性検査

(i)から(iii)は従前どおりで、また使用目的・効果に関して「医薬品の適応を判定するための補助等に用いるもの」と薬事承認・認証を得ている体外診断用医薬品・医療機器を用いて、これらの検査を▼リアルタイムPCR法▼PCR-rSSO法▼マルチプレックスPCRフラグメント解析法▼次世代シーケンシング―によって行った場合に、本検査点数(2500点)の算定が可能である点、これら以外の方法で、▼肺がんにおけるEGFR遺伝子検査▼大腸がんにおけるRAS遺伝子検査―を行った場合には、2022年3月31日までは、D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「イ 処理が容易なもの」のうち「(2)その他のもの」(2100点)が算定可能である点にも変更はありません。



これに伴い、D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」に課する算定ルールも見直されます。

本検査の点数は、従前は次のように算定することとなっていました。

(A:原則)固形腫瘍の腫瘍細胞を検体とし、悪性腫瘍の詳細な診断・治療法選択を目的として悪性腫瘍患者本人に対して行った、▼処理が容易なもののうち「医薬品の適応判定の補助等に用いるもの」(肺がんにおけるEGFR遺伝子検査や乳がんにおけるHER2遺伝子検査、固形がんにおけるマイクロサテライト不安性検査など)▼ 処理が容易なもののうち「その他のもの」(肺がんにおけるK-ras遺伝子検査、大腸がんにおけるEGFR検査など)▼処理が複雑なもの(肺がんにおけるBRAF遺伝子検査、悪性黒色腫におけるBRAF遺伝子検査など)―について、患者1人につき1回に限り算定する

(B:例外1)肺がんにおけるEGFR遺伝子検査は、「再発や増悪により、2次的遺伝子変異等が疑われ、再度治療法を選択する必要がある場合」にも算定できる

(C:例外2)マイクロサテライト不安定性検査は、▼「リンチ症候群」の診断補助を目的とする場合▼「局所進行もしくは転移が認められた標準的な治療が困難な固形がん」の抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的とする場合▼「手術後の大腸がん」のの抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的とする場合―に、「当該検査の実施後に、もう一方の目的で当該検査を実施した場合」にも、別に1回に限り算定できる

(D)早期腸がんにおけるリンチ症候群の除外を目的としてBRAF遺伝子検査を実施した場合は、▼K-ras遺伝子検査▼RAS遺伝子検査―を併せて算定できず、マイクロサテライト不安定性検査を実施した年月日をレセプトの摘要欄に記載する



今般の通知では、このうち(C:例外2)の規定(マイクロサテライト不安定性検査を2回実施できる例外規定)について、▼「リンチ症候群」の診断補助▼「固形がん」の抗悪性腫瘍剤による治療法選択―を目的として実施可能(点数算定が可能)なことを明らかにしました。

従前の「局所進行」「転移あり」「標準的治療が困難」「手術後の大腸がん」といった縛りがなく、すべての固形がんについて、マイクロサテライト不安定性検査を行い、より適切な抗がん剤治療が保険診療の中で可能になると期待されます。がん患者・がん治療医にとって心強い見直しと言えるでしょう。



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