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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

薬局薬剤師が専門性発揮し「経口の抗がん剤」処方内容チェックを―医療機能評価機構

2021.11.5.(金)

今年(2021年)1-6月に薬局から5万5759件のヒヤリ・ハット事例が報告され、(1)調剤関連:9849件(17.7%)(2)疑義照会や処方医への情報提供関連:4万5821件(82.2%)(3)特定保険医療材料等関連:41件(0.1%)(4)一般用医薬品等の販売関連:48件(0.1%)―という内訳である。うち(2)は薬剤師が患者の服用歴確認やコミュニケーションを通じ、また専門性を発揮して「処方内容が不適切である」点に気づけたものである―。

経口の抗がん剤を薬局で調剤・交付するケースが増加しているが、処方内容が不適切なケース(処方日数、休薬期間、投与量、用法、薬剤種類など)も少なくなく、薬剤師が専門知識・スキルを発揮し、処方内容をチェックすることが極めて重要である—。

こういった状況が、日本医療機能評価機構が11月2日に公表した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の第25回報告書(今年(2021年)1-6月が対象)から明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

薬剤師が服用歴や患者とコミュニケーション通じて、処方内容の適正性確認を

今年(2021年)1-6月に薬局から報告されたヒヤリ・ハット事例は5万5759件。その内訳は、(1)調剤関連:9849件(17.7%)(2)疑義照会や処方医への情報提供関連:4万5821件(82.2%)(3)特定保険医療材料等関連:41件(0.1%)(4)一般用医薬品等の販売関連:48件(0.1%)―となりました。

薬局ヒヤリ・ハット事例の内訳(薬局ヒヤリ25回報告書1 211102)



うち(1)の調剤関連について少し詳しく見ると、内容は▼計数間違い:1616件(全体の16.4%)▼規格・剤形間違い:1608件(同16.3%)▼異なる成分との取り違え:1097件(同11.1%)▼同成分との取り違え:1066件(同10.8%)―などが多くなっています。

不適切な調剤の内容(薬局ヒヤリ25回報告書2 211102)



また発生要因を見ると(複数回答)、▼判断誤り:4785件(全体の14.6%)▼慣れ・慢心:4279件(同13.1%)▼繁忙であった:3983件(同12.2%)▼焦り・慌て:2955件(同9.0%)▼医薬品の名称類似:1729件(同5.3%)▼手順不遵守:1647件(同5.0%)▼薬局内のルールや管理の体制・仕方:1513件(同4.6%)―などが多く、さまざまな要因が複合的に関係していることが伺えます。薬局において、改めて「ルールの確認」「ルールが十分か否かのチェック」「複数チェックの重要性確認」などの基本的な点を確認することが重要です。

不適切な調剤が発生した要因(薬局ヒヤリ25回報告書3 211102)



他方、最も事例の多い(2)の疑義照会関連とは、医療機関の処方内容などに不適切な部分があり薬局が疑義照会や情報提供を行ったものです。医療機関側の要因としては▼患者とのコミュニケーション不足・齟齬▼処方内容の確認不足―が多く、この2つで全体の半分を占めています。

不適切な処方が発生した要因(薬局ヒヤリ25回報告書4 211102)



また「不適切な処方である」と判断した理由として、▼薬局で管理している情報(薬剤服用歴など)との照合▼患者・家族から収集した情報との照合▼当該処方箋のみで判断▼お薬手帳との照合―が多く、薬局・薬剤師サイドの「薬剤の専門家としての知識・スキル」「患者とのコミュニケーション(信頼関係を得てかかりつけ患者となり、過去の服用歴情報などが把握されている点もここに含めて考えられる)」が、医療安全の確保において極めて重要であることを確認できます。

不適切な処方内容であると判断した理由(薬局ヒヤリ25回報告書5 211102)

経口抗がん剤を薬局で調剤・交付するケースも増加、薬剤師の専門性発揮を

第25回報告書では、(A)抗がん剤に関する疑義照会や処方医への情報提供を行った事例(B)薬剤交付後の患者の状況をもとに処方医へ情報提供を行った事例—について詳しく分析を行っています。

本稿では(A)に焦点を合わせ、少し詳しく分析内容を眺めてみましょう。医学・医療の進展により「通院で経口の抗がん剤治療を受ける患者」が増加しており、「抗がん剤に関する疑義照会・情報提供を薬局・薬剤師が行う」ケースも増えてきています。

今年(2021年)1-3月に報告されたヒヤリ・ハット事例のうち、(A)の抗がん剤に関する疑義照会等に該当したのは131件。抗がん剤の銘柄は非常にバラエティに富んでいますが、▼テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムの配合剤(エスワン、ティーエスワンなど):30件(全体の22.9%)▼カペシタビン(ゼローダ、カペシタビン錠):13件(同9.9%)▼ザイティガ錠:9件(同6.9%)▼タモキシフェンクエン酸(ノルバデックス、タモキシフェン錠):9件(同6.9%)—などが比較的多くなっています。

疑義照会等の内容をみると、▼処方日数・休薬期間:32件(同24.4%)▼投与量:27件(同20.6%)▼用法:18件(同13.7%)▼薬剤名:13件(同9.9%)▼重複:9件(同6.9%)—などが多くなっています。抗がん剤を処方する医師は薬剤の専門家ではないことから、添付文書に記載された内容を全て熟知しているとは限りません。また腫瘍内科医配置が十分でない現状では、抗がん剤の特性に詳しくない医師が抗がん剤を処方せざるを得ないケースも決して少なくありません。薬局薬剤師が、薬剤の専門家としてその知識を十分に発揮し、処方内容に不適切な部分がないかを確認することが非常に重要であることを再確認できる報告内容と言えます。

抗がん剤に関する疑義照会等の内容(薬局ヒヤリ25回報告書6 211102)



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