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医療費助成対象となる指定難病、原発性肝外門脈閉塞症、出血性線溶異常症、乳児発症STING関連血管炎など7疾患追加へ―指定難病検討委員会

2024.4.1.(月)

医療費助成の対象となる指定難病に、LMNB1関連大脳白質脳症、原発性肝外門脈閉塞症、出血性線溶異常症、ロウ症候群、PURA関連神経発達異常症、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症、乳児発症STING関連血管炎の7疾患を追加してはどうか―。

3月28日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」で、こうした点が概ね了承されました。

また、指定難病検討委員会では、既存の指定難病について、最新の研究結果等を踏まえた「診断基準」「重症度分類」の見直し論議も始めています。

既存指定難病の診断基準・重症度分類の見直し論議もスタート

国の定めた以下の要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況に鑑みて、重症の場合に医療費助成が行われます(要件の整理明確化論議に関する記事はこちら)。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している

医療費助成対象となる指定難病の要件



「がん」「感染症」など他の施策・支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しませんが、「▼髄膜▼脳▼脊髄▼脳神経▼その他の中枢神経系―に発生した腫瘍は、良性であっても『がん登録』の対象となり(がん登録推進法施行令第1条第2項)、指定難病には該当しない」、「それ以外の部位に生じた腫瘍は、良性であれば『がん登録』の対象にならず、指定難病に該当する可能性がある(他の要件を満たすことが必要)」、「ウイルス等感染が原因となって発症する疾病については、原則として該当しないものとするが、一般的に知られた感染症状と異なる発症形態を示し、症状出現の機序が未解明なものなどには個別に検討する」など、判断基準の明確化が随時行われてきています(関連記事はこちら)。



疾病が指定難病の要件を満たすか否かは、研究班や学会の提出した情報・推薦をもとに、専門家で構成される指定難病検討委員会で判断されます(2015年1月実施分:110疾患、2015年7月実施分:196疾患(関連記事はこちら)、2017年4月実施分:24疾患(関連記事はこちら)、2018年4月実施分:1疾患(あわせて5疾患を他の指定難病と統合、関連記事はこちら)、2019年7月実施分:2疾患(関連記事はこちら)、2021年11月実施分:5疾患(関連記事はこちら)。

指定難病罹患者のうち、一定の重症基準を満たす患者(重症患者)については医療費助成が行われています。



現在、指定難病検討委員会において、研究班や関係学会から情報提供・推薦がなされた疾患を指定難病に追加するべきか否かが検討されており、3月28日の会合では、これまでの議論を踏まえて次の7疾患を「指定難病に追加する」方針を概ね固めました。

(1)LMNB1関連大脳白質脳症
→中枢神経系の大脳白質を病変の主座とする神経変性疾患、常染色体顕性(優性)遺伝性疾患。40歳代・50歳代に発症が多く、発達に異常はない(発症前の社会生活は通常正常)。初発には自律神経障害や錐体路徴候が多いが、認知機能障害で発症する例もある。主症状は自律神経障害、錐体路徴候、失調、認知機能障害で、発熱や感染症の合併などにより一過性に症状増悪を来すことがある。本邦の患者数は100人未満で、重症者割合は約70%

(2)原発性肝外門脈閉塞症
→肝門部を含めた肝外門脈の閉塞により門脈圧亢進症に至る症候群で、重症度に応じ易出血性食道・胃静脈瘤、異所性静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、腹水、肝性脳症、 出血傾向、脾腫、貧血、肝機能障害などの症候を示す。小児においては成長障害をきたしている例が多く、鼻出血を契機に診断されることがある。本邦の患者数は770人で、重症者割合は約67%

(3)出血性線溶異常症
→遺伝子変異により線溶抑制活性不全が生じ、重篤な出血を来す疾患で、月経時の超大量出血、流産、外科治療後の後出血や創傷治癒遅延な創傷治癒遅延などが生じる。本邦の患者数は100人未満で、重症者割合は100%

(4)ロウ症候群
→▼先天性白内障▼中枢神経症状(精神運動発達遅滞)▼Fanconi症候群(低分子タンパク尿、近位尿細管性アシドーシス、低リン血症など)—を3主徴とするX染色体連鎖型遺伝疾患で、進行性の腎障害があり、30-40代で末期腎不全に至る(透析・腎移植が必要となる)。本邦の患者数は約120人で、重症患者割合は約80%

(5)PURA関連神経発達異常症
→遺伝子の病原性変異を原因とする重度の知的・運動発達の遅れを特徴とする先天異常症候群。筋緊張低下、低体温、傾眠、摂食障害、吃逆過多、無呼吸や、てんかん・非てんかん性の異常運動(ジストニアなど)、視覚障害を認める。本邦の患者数は約100人で、重症患者割合は100%

(6)極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症
→脂肪酸 代謝異常症の代表的な疾患の一1つで、エネルギー需要の多い脳や、脂肪酸β酸化が盛んな心臓、骨格筋、肝臓などが障害されやすい。発熱や運動などのエネルギー需要が増大した時や、下痢・嘔吐・飢餓などのエネルギー摂取が低下した際に重篤な低血糖や横紋筋融解症などを来すことが多い。本邦の患者数は1340人で、重症患者割合は60%

(7)乳児発症STING関連血管炎
→自然免疫の制御異常による過剰な炎症性サイトカインの産生を特徴とする疾患で、、一般的に乳児期早期から全身性の炎症が遷延し、様々な組織や臓器病変を呈す。本邦の患者数は10人未満で、重症患者割合は約90%



今後、所要の手続き(パブリックコメントなど)を経て、医療費助成の対象となる指定難病に追加される見込みです。



また、指定難病検討委員会では、既存の指定難病について、最新の研究結果等を踏まえた「診断基準」「重症度分類」の見直し論議も始めました。下表の85疾患について、1つ1つ研究班からの「新診断基準案、新重症度分類案」の妥当性を精査していきます。

3月28日の会合では、▼神経有棘赤血球症▼シャルコー・マリー・トゥース病▼先天性筋無力症候群▼進行性多巣性白質脳症▼遠位型ミオパチー▼マリネスコ・シェーグレン症候群▼ペリー病▼先天性無痛無汗症▼アイカルディ症候群▼片側巨脳症▼限局性皮質異形成▼ドラベ症候群▼ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん▼レノックス・ガストー症候群▼ウエスト症候群▼大田原症候群▼早期ミオクロニー脳症▼遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん▼片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群▼睡眠時棘徐波活性化を示す発達性てんかん性脳症およびてんかん性脳症▼ランドウ・クレフナー症候群▼進行性ミオクローヌスてんかん▼弾性線維性仮性黄色腫▼サルコイドーシス▼リンパ管腫症/ゴーハム病▼巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)▼先天性気管狭窄症/先天性声門下狭窄症—について新基準案・分類案をチェックしています(概ね新案を了承)。今後も精査が継続されます。

既存の指定難病のうち85疾患について、最新研究成果に基づいて診断基準・重症度分類を見直す1(指定難病検討委員会1 240328)

既存の指定難病のうち85疾患について、最新研究成果に基づいて診断基準・重症度分類を見直す2(指定難病検討委員会2 240328)

既存の指定難病のうち85疾患について、最新研究成果に基づいて診断基準・重症度分類を見直す3(指定難病検討委員会3 240328)



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