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医療費助成対象となる指定難病、腎・泌尿器疾患の「ロウ(Lowe)症候群」を追加する方向で検討―指定難病検討委員会

2024.2.26.(月)

医療費助成の対象となる指定難病に、ロウ(Lowe)症候群を追加してはどうか—。

2月22日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」で、こうした点が概ね了承されました。

既存指定難病が要件を満たしているかの再チェックを2024年4月から順次実施

国の定めた以下の要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況に鑑みて、重症の場合に医療費助成が行われます(要件の整理明確化論議に関する記事はこちら)。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している

医療費助成対象となる指定難病の要件



「がん」「感染症」など他の施策・支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しませんが、「▼髄膜▼脳▼脊髄▼脳神経▼その他の中枢神経系―に発生した腫瘍は、良性であっても『がん登録』の対象となり(がん登録推進法施行令第1条第2項)、指定難病には該当しない」、「それ以外の部位に生じた腫瘍は、良性であれば『がん登録』の対象にならず、指定難病に該当する可能性がある(他の要件を満たすことが必要)」、「ウイルス等感染が原因となって発症する疾病については、原則として該当しないものとするが、一般的に知られた感染症状と異なる発症形態を示し、症状出現の機序が未解明なものなどには個別に検討する」など、判断基準の明確化が随時行われてきています(関連記事はこちら)。



疾病が指定難病の要件を満たすか否かは、研究班や学会の提出した情報・推薦をもとに、専門家で構成される指定難病検討委員会で判断されます(2015年1月実施分:110疾患、2015年7月実施分:196疾患(関連記事はこちら)、2017年4月実施分:24疾患(関連記事はこちら)、2018年4月実施分:1疾患(あわせて5疾患を他の指定難病と統合、関連記事はこちら)、2019年7月実施分:2疾患(関連記事はこちら)、2021年11月実施分:5疾患(関連記事はこちら)。

指定難病罹患者のうち、一定の重症基準を満たす患者については医療費助成が行われています。



現在、指定難病検討委員会において、研究班や関係学会から情報提供・推薦がなされた次の疾患を指定難病に追加するべきか否かが検討されています。

【神経・筋疾患】(12疾患)
▽LMNB1関連大脳白質脳症 ● 神経・筋疾患
▽COL4A1/COL4A2関連脳小血管病
▽神経核内封入体病Neuronal intranuclear Inclusion disease(NIID)
▽NMDA受容体抗体脳炎
▽MOG抗体関連疾患
▽スティッフパーソン症候群
▽痙攣性発声障害
▽遺伝子異常による発達性てんかん性脳症
▽視床下部過誤腫症候群
▽筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)
▽フォン・ヒッペル・リンドウ病 von Hippel-Lindau disease(VHL病)(染色体・遺伝子異常、消化器疾患、内分泌疾患、腎・泌尿器疾患、聴覚・平衡機能疾患、視覚疾患にも分類される)
▽PURA関連神経発達異常症(染色体・遺伝子異常にも分類される)

【循環器疾患】(3疾患)
▽完全型房室中隔欠損症(完全型心内膜床欠損症)
▽川崎病性巨大冠動脈瘤
▽ホルト・オーラム症候群(骨・関節疾患にも分類される)

【代謝疾患】(3疾患)
▽遺伝的インスリン抵抗症
▽極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(very long-chain acyl-CoA dehydrogenase;VLCAD)欠損症
▽中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)(循環器疾患にも分類される)

【免疫疾患】(2疾患)
▽乳児発症STING関連血管炎(染色体・遺伝子異常にも分類される)
▽原発性リンパ浮腫(循環器疾患、皮膚・結合織疾患にも分類される)

【消化器疾患】(6疾患)
▽原発性肝内結石症
▽原発性肝外門脈閉塞症
▽先天性胆道拡張症
▽Peutz-Jeghers症候群(染色体・遺伝子異常にも分類される)
▽巨大リンパ管奇形(呼吸器疾患、皮膚・結合織疾患、骨・関節疾患にも分類される)
▽青色ゴムまり様母斑症候群(呼吸器疾患、皮膚・結合織疾患、骨・関節疾患にも分類される)

【血液疾患】(7疾患)
▽出血性線溶異常症
▽慢性活動性EBウイルス病(CAEBV)(免疫疾患、循環器疾患、消化器疾患、呼吸器疾患、皮膚・結合織疾患にも分類される)
▽サラセミア
▽不安定ヘモグロビン症
▽口唇赤血球症
▽ピルビン酸キナーゼ欠乏性貧血
▽グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症

【骨・関節疾患】(1疾患)
▽骨硬化性疾患

【腎・泌尿器疾患】(3疾患)
▽先天性低・異形成腎(Congenital hypoplastic-dysplastic kidney)
▽バーター症候群
▽ロウ(Lowe)症候群(視覚疾患、神経・筋疾患にも分類される)

【染色体・遺伝子異常】(5疾患)
▽8p23.1欠失/重複症候群
▽15q26過成長症候群
▽12q14微細欠失症候群
▽17q21.3微細欠失症候群
▽VEXAS症候群(免疫疾患、血液疾患、呼吸器疾患、皮膚・結合組織疾患、骨・関節疾患、視覚疾患にも分類される)

【皮膚・結合組織疾患】(5疾患)
▽薬剤性過敏症症候群
▽化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa)
▽壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)
▽穿孔性皮膚症
▽遺伝性掌蹠角化症



指定難病委員会では、これらの疾患について1つ1つ、上記要件を満たすか否かをチェックし、「指定難病の対象に追加するか否か」を検討しています。

2月22日の会合では、【骨・関節疾患】(1疾患)、【腎・泌尿器疾患】(3疾患)、【染色体・遺伝子異常】(5疾患)、【皮膚・結合組織疾患】(5疾患)について要件妥当性を確認し、「ロウ(Lowe)症候群」について「要件をクリアしており、指定難病の対象疾患に追加する」方向が概ね固められました。

ロウ(Lowe)症候群は、▼先天性白内障▼中枢神経症状(精神運動発達遅滞)▼Fanconi症候群(低分子タンパク尿、近位尿細管性アシドーシス、低リン血症など)—を3主徴とするX染色体連鎖型遺伝疾患で、進行性の腎障害があり、30-40代で末期腎不全に至ります(透析・腎移植が必要となる)。本邦の患者数は約120人で、患者の80%が重症に該当します。

他方、骨硬化性疾患については「教科書1章分ほどの疾患が包括され、結果、重症患者割合を下げている(重症患者割合が概ね60,70%以上であることが「長期療養が必要である」との要素となる)。疾患や診断基準などの再整理が必要である」との、▼8p23.1欠失/重複症候群▼15q26過成長症候群▼12q14微細欠失症候群▼17q21.3微細欠失症候群—の4疾患については「遺伝子診断技術などの進歩が著しく、疾患グループをつくれるようになってきているが、当該疾患の人数や全体像などが十分に明確になっていない。研究班での再整理や学会での承認などが必要である」との、さらにVEXAS症候群については「ここ数年で疾患像が確立してきているが、申請書では診断基準が詰め切れていないこと、重症度分類について『副腎皮質ホルモン剤を減量できない』など、治療内容となっており、明確化されていると言えない。そうした点を再整理すべき」とのコメント付きで、いわば「差し戻し」となっています。研究班での更なる研究を経て、再申請されることが期待されます。



なお、2月22日の指定難病検討委員会では、「既存の指定難病について、指定難病の要件を満たしているかのチェック」(医学・医療の進展で予後の改善などがないか)を「本年(2024年)4月から進めていく」こと、さらに、その結果、要件を満たさない疾患については「一定の経過措置を置いたうえで指定見直しを検討する」(2028年度以降)といったスケジュールが固められました。

治療法が開発された、予後が改善されたことなどが明らかになった場合には、指定難病の対象、つまり医療費助成の対象から除外し、その財源を「依然として治療法がない、予後が良くない」指定難病患者の支援に充てることが必要なための措置です。

既存指定難病の確認検討1(指定難病検討委員会1 240222)

既存指定難病の確認検討2(指定難病検討委員会2 240222)



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