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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

医療費助成対象となる指定難病、原発性肝外門脈閉塞症や出血性線溶異常症を追加する方向で検討―指定難病検討委員会・小慢検討委員会(2)

2024.2.8.(木)

医療費助成の対象となる指定難病に、原発性肝外門脈閉塞症や出血性線溶異常症を追加してはどうか—。

2月6日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」と社会保障審議会・小児慢性特定疾病対策部会「小児慢性特定疾病検討委員会」との合同会議で、こういった議論も行われています。さらに議論を続け「追加疾病」を詰めていきます(同日の小児慢性特定疾患の新規追加に関する記事はこちら)。

小児慢性特定疾患の罹患理事が成人に移行した場合の医療費助成など難しい課題も

国の定めた以下の要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況に鑑みて、重症の場合に医療費助成が行われます(要件の整理明確化論議に関する記事はこちら)。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している

医療費助成対象となる指定難病の要件



「がん」「感染症」など他の施策・支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しませんが、「▼髄膜▼脳▼脊髄▼脳神経▼その他の中枢神経系―に発生した腫瘍は、良性であっても『がん登録』の対象となり(がん登録推進法施行令第1条第2項)、指定難病には該当しない」、「それ以外の部位に生じた腫瘍は、良性であれば『がん登録』の対象にならず、指定難病に該当する可能性がある(他の要件を満たすことが必要)」、「ウイルス等感染が原因となって発症する疾病については、原則として該当しないものとするが、一般的に知られた感染症状と異なる発症形態を示し、症状出現の機序が未解明なものなどには個別に検討する」など、判断基準の明確化が随時行われてきています(関連記事はこちら)。



疾病が指定難病の要件を満たすか否かは、研究班や学会の提出した情報・推薦をもとに、専門家で構成される指定難病検討委員会で判断されます(2015年1月実施分:110疾患、2015年7月実施分:196疾患(関連記事はこちら)、2017年4月実施分:24疾患(関連記事はこちら)、2018年4月実施分:1疾患(あわせて5疾患を他の指定難病と統合、関連記事はこちら)、2019年7月実施分:2疾患(関連記事はこちら)、2021年11月実施分:5疾患(関連記事はこちら)。

指定難病罹患者のうち、一定の重症基準を満たす患者については医療費助成が行われています。



現在、指定難病検討委員会において、研究班や関係学会から情報提供・推薦がなされた次の疾患を指定難病に追加するべきか否かが検討されています。

【神経・筋疾患】(12疾患)
▽LMNB1関連大脳白質脳症 ● 神経・筋疾患
▽COL4A1/COL4A2関連脳小血管病
▽神経核内封入体病Neuronal intranuclear Inclusion disease(NIID)
▽NMDA受容体抗体脳炎
▽MOG抗体関連疾患
▽スティッフパーソン症候群
▽痙攣性発声障害
▽遺伝子異常による発達性てんかん性脳症
▽視床下部過誤腫症候群
▽筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)
▽フォン・ヒッペル・リンドウ病 von Hippel-Lindau disease(VHL病)(染色体・遺伝子異常、消化器疾患、内分泌疾患、腎・泌尿器疾患、聴覚・平衡機能疾患、視覚疾患にも分類される)
▽PURA関連神経発達異常症(染色体・遺伝子異常にも分類される)

【循環器疾患】(3疾患)
▽完全型房室中隔欠損症(完全型心内膜床欠損症)
▽川崎病性巨大冠動脈瘤
▽ホルト・オーラム症候群(骨・関節疾患にも分類される)

【代謝疾患】(3疾患)
▽遺伝的インスリン抵抗症
▽極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(very long-chain acyl-CoA dehydrogenase;VLCAD)欠損症
▽中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)(循環器疾患にも分類される)

【免疫疾患】(2疾患)
▽乳児発症STING関連血管炎(染色体・遺伝子異常にも分類される)
▽原発性リンパ浮腫(循環器疾患、皮膚・結合織疾患にも分類される)

【消化器疾患】(6疾患)
▽原発性肝内結石症
▽原発性肝外門脈閉塞症
▽先天性胆道拡張症
▽Peutz-Jeghers症候群(染色体・遺伝子異常にも分類される)
▽巨大リンパ管奇形(呼吸器疾患、皮膚・結合織疾患、骨・関節疾患にも分類される)
▽青色ゴムまり様母斑症候群(呼吸器疾患、皮膚・結合織疾患、骨・関節疾患にも分類される)

【血液疾患】(7疾患)
▽出血性線溶異常症
▽慢性活動性EBウイルス病(CAEBV)(免疫疾患、循環器疾患、消化器疾患、呼吸器疾患、皮膚・結合織疾患にも分類される)
▽サラセミア
▽不安定ヘモグロビン症
▽口唇赤血球症
▽ピルビン酸キナーゼ欠乏性貧血
▽グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症

【骨・関節疾患】(1疾患)
▽骨硬化性疾患

【腎・泌尿器疾患】(3疾患)
▽先天性低・異形成腎(Congenital hypoplastic-dysplastic kidney)
▽バーター症候群
▽ロウ(Lowe)症候群(視覚疾患、神経・筋疾患にも分類される)

【染色体・遺伝子異常】(5疾患)
▽8p23.1欠失/重複症候群
▽15q26過成長症候群
▽12q14微細欠失症候群
▽17q21.3微細欠失症候群
▽VEXAS症候群(免疫疾患、血液疾患、呼吸器疾患、皮膚・結合組織疾患、骨・関節疾患、視覚疾患にも分類される)

【皮膚・結合組織疾患】(5疾患)
▽薬剤性過敏症症候群
▽化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa)
▽壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)
▽穿孔性皮膚症
▽遺伝性掌蹠角化症



指定難病委員会では、これらの疾患について1つ1つ、上記要件を満たすか否かをチェックし、「指定難病の対象に追加するか否か」を検討しています。

例えば、2月6日の会合では、【免疫疾患】(2疾患)、【消化器疾患】(6疾患)、【血液疾患】(7疾患)について要件妥当性を確認し、▼原発性肝外門脈閉塞症▼出血性線溶異常症—の2疾患について「要件をクリアしており、指定難病の対象疾患に追加する」方向が概ね固められています。また「乳児発症STING関連血管炎」については、「重症度分類の精緻化」「成人症例数の確認」などを研究班にすることとなっています。

他方、「慢性活動性EBウイルス病」(CAEBV)については、▼これまでに「腫瘍」や「感染症」であるとの理由で要件を満たさない(上述した「他施策での支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しない」点に該当する)として対象疾患に追加されてこなかったが、「一般に知られた感染症状と異なる発症形態を示し、症状出現の機序が未解明なもの」として個別検討すべきではないか▼小児慢性特定疾患の対象に含まれており、成人にも罹患者がいる。我が国が治療法をリードすべき疾患であり、指定難病にも含める方向で検討すべき—といった意見・要望が小児疾患研究者である委員(主に小児小児慢性特定疾病検討委員会の委員)から強く出されました。

指定難病検討委員会の水澤英洋委員長(国立精神・神経医療研究センター理事長特任補佐・名誉理事長)も、こうした意見を重視し「今クールの中で改めて指定難病の対象とするか否かを検討する」考えを示しています。

このように2月6日には「指定難病検討委員会」と「小児慢性特定疾患検討委員会」とが合同開催され(議決はそれぞれの委員会委員のみで実施)、「成人対象とする指定難病」の施策体系と、「小児慢性特定疾患」の施策体系の違いなどを確認しながらの議論が行われています。医学・医療の進展により小児慢性特定疾患時が成人となるケースも増えてきています。そのした中で「小児期には小児慢性特定疾患として医療費助成が行われていたが、成人期には指定難病に指定されておらず医療費助成が行われない」といった事態も生じえます。

しかし、財源には限りがあるため医療費助成を行う疾患を安易に増やしていくことはできず、対象疾患の追加はエビデンスを元に慎重に検討されあす。限られた財源を多くの疾患・多くの患者に分ければ、1人当たりの助成額などが少なくなり、患者支援という本来目的を実現できなくなってしまうためです。

こうした問題をどう考えていくかも難病対策に関する将来の大きな課題となり、「指定難病検討委員会」と「小児慢性特定疾患検討委員会」との合同開催には非常に大きな意味があると考えられます。



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