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難病・小児慢性特定疾病のデータも、仮名化情報での第三者提供、他のデータベースとの連結解析など可能に―難病対策委員会

2024.10.17.(木)

難病・小児慢性特定疾病分野についても医療DXを進めていき、例えば、より研究者等が利用しやすい形(仮名化情報)での第三者提供や、他のデータベース(公的データベース、電子カルテデータ、民間データベース等)との連結解析を可能とする—。

10月15日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「難病対策委員会」と、社会保障審議会・小児慢性特定疾病対策部会「小児慢性特定疾病対策委員会」との合同会議(以下、単に「合同会議」とする)で、このような方針が固められました。なお、合同会議では指定難病の「要件見直し」論議も行われています(関連記事はこちら)。

医療費助成申請のオンライン化なども進め、関係者の負担軽減図る

我が国では、公的医療保険制度・公的介護保険制度が整備されていることから、精度が高く、かつ広い範囲をカバーする健康・医療・介護データが存在します(例えばレセプトデータ)。これらのデータを有機的に結合し、分析することで、健康・医療・介護サービスの質を高めるとともに、かつ効率的な提供も可能になると期待されますのです(医療・介護DX)。

こうした動きを政府が一丸となって進めることとしており、昨年(2023年)6月2日に「医療DXの推進に関する工程表」を取りまとめ、例えば▼全国の医療機関で電子カルテ情報を共有可能とする仕組みを構築し、2024年度から順次稼働していく▼標準型電子カルテについて、2030年には概ねすべて医療機関での導入を目指す—などの具体的なスケジュールを示しています。

あわせて武見敬三厚生労働大臣は「近未来健康活躍社会戦略」の中で「医療・介護DX」を更に推進していく方針を明確にしています。

医療DX工程表の全体像



指定難病、小児慢性特定疾病においても、こうした医療DXの恩恵を患者・自治体・医療者が受けられるよう、難病法等に「難病・小児慢性特定疾病データベースを法律に位置付け、他のデータベース(NDB:National Data Baseや障害福祉関連データベースなど)との連結解析や第三者提供などの利活用規定を設ける」などの改正がすでに行われています(関連記事はこちらこちら)。

難病・小児慢性特定疾患対策の見直し(難病対策委員会1 230710)



10月15日の合同会議では、難病・小児慢性特定疾病において医療DXを進めることで、次の3つのメリットが生じることが確認されました((2)については次回以降の議題となる)。
(1)申請手続きの電子化
→スマートフォンからの申請、添付書類の省略を可能とすることで、申請者の負担を軽減する
→入力漏れの自動チェック機能や過去の診断書の読み出し機能などを備えた診断書のオンライン登録システムを活用することで、医療機関の入力負担軽減を図る

(2)オンライン資格確認と上限額管理票の電子化
→医療受給者証のオンライン資格確認と上限額管理票の電子化を進めることで、マイナンバーカード1枚での医療機関受診を可能とする
→医療受給者証の情報に加え、登録者証の情報と医療費情報を電子的に確認する仕組みを導入することで、指定難病患者のうち「受給者証の交付がされていない方」が、軽症高額者へ該当した場合に円滑に医療受給者証を交付できるようにする

(3)データの二次利用
→患者からの同意が得られた診断書情報を難病等データベースに登録し2次利用を可能とすることで、早期診断・治療法の確立、新薬の開発、未知の副作用の発見、効果的な政策の立案に役立てる

難病などにおける医療DX(難病対策委員会1 241015)

難病などにおける医療DXスケジュール(難病対策委員会2 241015)



このうち(1)については、現在「紙」ベースで行っている医療費助成の申請(患者)、臨床調査個人票(臨個票)の入力や認定(自治体、医療機関)などの負担を軽減を狙うものです。

この点、まずマイナポータルの「ぴったりサービス」機能を活用する(自治体に対する申請・届出をマイナポータルから行える仕組みの追加する)が行われます(2024年度中にスタート予定)が、システム上の許容量(10MB)を超えるデータ(詳細画像など)は郵送等が必要となってしまいます(オンラインでの申請等が完結しない)。

そこで、厚生労働省はマイナポータルに「自己情報取得」機能を追加し、すべての手続き(重いデータの送受信等)もオンラインで完結できる仕組みを構築する考えも示しています(2026年度中にスタート予定)。

さらに、既に民間事業者が自治体と連携したアプリケーション開発を進めており、これらの活用も可能とする方向です(2025年度開始予定のサービスあり)。

難病などにおける医療費助成申請のオンライン化に向けた3つの仕組み(難病対策委員会3 241015)



他方、医療費助成申請の際に必要となる臨床調査個人票(臨個票)については、従前「医師が紙ベースで作成し、それを自治体に郵送し、自治体職員が患者の同意を得てデータベースに入力する」という運用が取られてきましたが、現在では「患者の同意を得て、医師が直接データベースに入力する」運用も可能となっています。後者の運用が拡大することで自治体の負担軽減が図られる・入力ミスが大幅に減少するなど医療DX推進が加速するメリットがありますが、現時点では後者が選択されるケースは少なく、厚労省は「何がボトルネックになっているのかを把握し、改善につなげていく」方針を明らかにしています。

臨床調査個人票のオンライン登録(難病対策委員会4 241015)



また(3)のデータ2次利用に関しては、すでに「医療・介護データの2次利用」に関する方針(様々なデータを一元的に利活用可能な情報連携基盤の構築、電子カルテ情報の2次利用も可能とする、難病などのデータベースも含めた公的データベースについて仮名化情報の提供を可能とする(現在の匿名化情報よりも利活用の幅が広がると期待される)など)が固められています(関連記事はこちらこちら)。

医療・介護情報の2次利用方針(難病対策委員会5 241015)



難病等のデータベースに格納されたデータも、こうした2次利用を進めることで、患者・家族が切望する原因究明や治療法開発につながると期待され、厚労省は次のような方針案を提示しました。

▽難病等データベース情報について、利用・提供に当たって審査を行うとともに、厚生労働大臣(DBの管理運営の委託を受けた者を含む)・利用者(研究者等)が遵守すべき保護措置等を定めた上で「仮名化情報の利用・提供」を可能としてはどうか

▽仮名化した難病等データベース情報について、▼他の公的DBの仮名化情報▼次世代医療基盤法の認定作成事業者データベースの仮名加工医療情報▼新たに構築する電子カルテ情報データベースの仮名化情報—との連結解析を、適切な保護措置・運用管理法の下で可能としてはどうか

(保護措置)

難病データ利活用における保護措置(難病対策委員会6 241015)



(審査体制等)

難病データ利活用における審査体制等(難病対策委員会7 241015)



仮名化情報の連結解析によって、新たな知見が得られ原因究明屋治療法開発などにつながっていくと期待され、この方針に異論・反論は出ていません。

もっとも、委員からは▼患者サイドの同意(入力・利活用の双方で必要)について、仮名化情報の利活用に向けて適切な在り方を考えていく必要がある(佐原博之委員:日本医師会常任理事)▼データベースは療養・生活支援の充実に向けても利活用を進めるべき(春名由一郎委員:高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター副統括研究員)▼利用者・家族の負担軽減につながる仕組みを構築してほしい(福島慎吾委員:難病のこども支援全国ネットワーク専務理事、竹内勤委員:埼玉医科大学学長)▼個人特定がなされないような配慮を十分に行ってほしい(辻邦夫委員:日本難病・疾病団体協議会常務理事)▼医療DX推進にあたっては国民・患者サイドの理解・納得が極めて重要であり、その点への配慮を十分に行ってほしい(家保英隆委員:高知県理事(保健医療担当)兼健康政策部医監)▼データの紐づけ精度の向上も重要である。せっかくのデータが無駄なく利用されるようにすべき(盛一享德委員:国立成育医療研究センター小児慢性特定疾病情報室長)—などの注文がついています。

こうした意見も踏まえて、医療DX推進に向けた取り組みが難病・小児慢性特定疾病分野でも進められます。

なお、医療DXにおいては「すべての患者データが格納され、利活用可能となる」ことが重要です(歯抜けのデータでは十分な効果が得られない)。この点、難病等についてはデータの格納・利活用の両方の場面で患者同意が必要となりますが、「不同意」事例が一定程度あることが分かっています(医療費助成の件数とデータベース登録数とに乖離がある)。この点について実態把握などを行い、「データ入力等に同意しない理由」などを明らかにしたうえで、改善策を検討・実施していくことが重要でしょう。もっとも、その際、患者サイドの心情等に十分な配慮が必要となることは述べるまでもありません。



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