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指定難病の要件を見直し、既存疾患も「新要件を満たすか否か」を洗い直すが、要件非該当の場合には経過措置等も検討へ

2024.10.16.(水)

指定難病の要件のうち、【治療方法が確立していない】要件、【長期の療養が必要である】要件、【希少な疾病で、患者数が我が国で一定数に達していない】要件などについて見直しを行う—。

既存の指定難病についても、新たな要件を満たすか否かを審査し、その結果を2026年度から反映させる—。

10月10日に持ち回り開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」で、こうした要件見直し内容が固められました。

今後、新要件に沿って「医療費助成の対象となる指定難病」の見直し論議が進んでいきますが、難病制度改革論議を行う厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」等では「新要件をクリアせず、指定難病から除外された疾患についても配慮を十分に行うべき」旨の指摘が患者サイドから数多く出されており、今後の具体的な見直し論議(例えば経過措置の設定など)に注目する必要があります。

患者団体から「既存の指定難病が新要件を満たさない場合、配慮措置を設けよ」と要請

国の定めた以下の要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況に鑑みて、重症の場合に医療費助成が行われています。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している

医療費助成対象となる指定難病の要件



ある疾病(難病)が「医療費助成の対象となる指定難病」に該当するか(要件を満たすか)否かは、研究班や学会の提出した情報・推薦をもとに、専門家で構成される指定難病検討委員会で判断されます(2015年1月実施分:110疾患、2015年7月実施分:196疾患(関連記事はこちら)、2017年4月実施分:24疾患(関連記事はこちら)、2018年4月実施分:1疾患(あわせて5疾患を他の指定難病と統合、関連記事はこちら)、2019年7月実施分:2疾患(関連記事はこちら)、2021年11月実施分:5疾患(関連記事はこちら)、近く追加される7疾患)。

これら指定難病に罹患する患者のうち、一定の「重症基準」を満たす患者(重症患者)について医療費助成が行われています。



このように指定難病の該当性議論を積み重ねる中で、「要件の整理、明確化を図るべき」との議論も進められています。医療・医学は日々進展しており、個々の難病を取り巻く状況や患者の病状なども変化していきます。国の財源には限りがあるため、すべての難病治療を支援することは困難です。治療法が開発されたり、予後が改善されたりしたことなどが明らかになった場合には、指定難病の対象、つまり医療費助成の対象から除外し、その財源を「依然として治療法がない、予後が良くない」指定難病患者の支援に充てることが必要と考えられるのです。

昨年(2023年)12月27日に開催された指定難病検討委員会(社会保障審議会・小児慢性特定疾病対策部会・小児慢性特定疾病検討委員会との合同会議)では要件見直し案が厚労省から提示され、例えば▼「治療方法が確立していない」要件の明確化▼「長期の療養が必要である」要件の明確化—などが提案されていました。

その後も要件見直しの検討が厚労省内部を中心に進められ、今般、持ち回りで開催された指定難病検討委員会で次のような見直し方針が固められています。

●厚労省サイトはこちら(見え消し版)こちら(溶け込み版)



【発症の機構が明らかでない】要件
→見直しなし(原因不明・病態未解明な疾病、原因遺伝子等が判明していても病態の解明が明らかでない疾病など)

発症機構不明要件は見直しなし(指定難病検討委員会1 241010)



【治療方法が確立していない】要件
→次のように見直す
▽以下の場合には「該当しない」こととする
▼根治のための治療方法がある場合(ただし、仮に根治のための治療方法があっても必要に応じて当該治療方法の有効性・安全性等を考慮して、本要件に該当するか判断する。なお、機会が限定的であることから、臓器移植を含む移植医療や研究段階の治療方法は、現時点では根治のための治療方法には含めない)
▼対症療法や進行を遅らせる治療方法等により、一般と同等の社会生活を送ることが可能である場合

治療法要件は見直しあり(指定難病検討委員会2 241010)



【長期の療養が必要である】要件
→次のように見直す
▽以下の場合に「該当する」こととする
▼疾病に起因する症状が長期にわたって継続する場合で、基本的には発症してから治癒することなく生涯にわたり症状が持続・潜在する場合を該当するものとする。したがって、ある一定の期間のみ症状が出現し、その期間が終了した後は症状が出現しないもの(急性疾患等)は該当しない
▼軽症者の多い疾病は該当しないものとし、「長期の療養を必要とする」要件を満たすかどうかは、その疾病の全患者数のうち「重症度分類等で医療費助成の対象となる者の割合」を考慮する

※ただし、「既存の指定難病」の見直しにおいては、医療費助成による治療等の効果により軽症を維持している患者がいることを考慮する

長期療養要件は見直しあり(指定難病検討委員会3 241010)



【希少な疾病で、患者数が我が国で一定数に達していない】要件
→次のように見直す
▽「一定の人数」として規定している「おおむね人口の0.1%程度に相当する数」について、下記を参考にしつつ、指定難病検討委員会で議論を行う時点で入手可能な直近の情報に基づいて個別具体的に判断を行う
▼直近3年間の受給者数の平均値を計算する
▼当面の間「0.15%未満」を目安とすることとし、具体的には患者数が18万人(0.142%)未満であった場合には「0.1%程度以下」に該当するものとする

▽医療費助成の対象疾病ではない場合は、研究班や学会が収集した各種データを用いて総合的に判断する

患者数要件は見直しあり(指定難病検討委員会4 241010)



【客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している】要件
→次のように見直す
▽「客観的な指標」とは、血液等の検体検査、画像検査、遺伝子解析検査、生理学的検査、病理検査等の結果とともに、視診、聴診、打診、触診等の理学的所見とする
なお、「客観的な指標」の判断に当たっては、以下の事項に留意する
▼必要な検査を列挙し、満たすべき検査値などについても具体的に記載する
▼複数の検査や症状の組合せを必要とする場合は、一義的な解釈となるようにする
▼診断基準の中に不全型、疑い例等が含まれる場合については、それぞれの定義を明確にし、医学的に治療を開始することが妥当と判断されるものが認定されるようにする

▽「一定の基準」とは、以下に該当するものとする
▼関連学会等(国際的な専門家の会合を含む)による承認を受けた基準や、すでに国際的に使用され代表的な国際的教科書に掲載されている基準等、専門家間で一定の合意が得られているもの
▼上記には該当しないものの、専門家の間で一定の共通認識があり、客観的な指標により診断されることが明らかなもので、上記の合意を得ることを目指しているなどは上記に相当すると認められるもの
※この場合、関連学会等の取りまとめ状況を適宜把握し、指定難病検討委員会で指摘された日から原則として1年間以内に関連学会の承認を得る

診断基準要件は見直しあり(指定難病検討委員会5 241010)



このほか、指定難病の追加の検討に当たって「診断基準・重症度分類等について、研究班が整理した情報に基づき、原則として日本医学会分科会の学会の承認を得ている疾病を検討対象とする」旨が明示されました(従前は「望ましい」要件であった)。

認定基準(見直しなし)(指定難病検討委員会6 241010)

留意事項(指定難病検討委員会7 241010)



今後、この新要件に照らして、既存の指定難病についても「要件を満たすか否か」を洗いなおしていきます。

その際、「これまでは指定難病に該当し医療費助成が行われていたが、新要件を満たしていないことが判明した」場合に、当該疾病をどう取り扱うのか、すなわち「ただちに医療費助成をストップするのか」、「指定難病に関するデータベースをどうするのか」などの論点が浮上します。

制度を厳格に運用して「要件を満たさなくなった場合には指定難病から除外し、医療費助成をストップ」することとなれば、「患者の経済的負担が急騰→治療の中断→症状の悪化」が懸念されるとともに、「新たな患者データがデータベースに格納されなくなる→治療法等の研究進捗に支障が出る→原因究明・治療法開発などが進まない」という弊害も出てきそうです。このため、例えば既存の指定難病を除外する場合には「経過措置」を設けて一定期間医療費助成を継続する、データベースへのデータ格納を医療費助成とは別個に継続する、などの対応方法を検討する必要が出てきます。

このため、別に10月15日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「難病対策委員会」と、社会保障審議会・小児慢性特定疾病対策部会「小児慢性特定疾病対策委員会」との合同会議では、主に患者サイドから、例えば「指定難病検討委員会にも患者サイド委員参加を認めたり、難病対策委員会との合同会議で検討するべきではないか(福島慎吾委員:難病のこども支援全国ネットワーク専務理事、辻邦夫参考人:日本難病・疾病団体協議会 常務理事)、「医学医療の進展により重症患者割合が低下する→長期療養の必要性を満たさない→指定難病の要件を満たさない—と安易に判断しないように留意すべき」(辻参考人)、「既存の指定難病が新要件をクリアせず、指定難病から除外された場合、新規の診療データが格納されず研究もストップすることが懸念される。十分な配慮が求められる」(柏木明子委員:有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会ひだまりたんぽぽ代表)、「医学・医療の進展で患者の状態が変動している。その点も勘案して個別疾病の要件該当性などを判断すべき」(中山優季委員:東京都医学総合研究所難病ケア看護ユニットユニットリーダー)などの声が出ています。

頷ける部分も多い意見ですが、例えば「個別疾患の要件該当性審議そのものに患者代表委員が参画すれば、公平・公正な審議が阻害されかねない(患者代表委員は自分の罹患する疾患を強く推すことや、他の委員も患者代表委員の顔色を窺ってしまうことなどが考えられる)」という問題点もあります。このため、個別疾患の要件該当性審議にあたり「十分に患者の状態を把握し、その情報を専門家会議(指定難病検討委員会)に適切に報告する」ことなどが重要となるでしょう。

今後、指定難病検討委員会で個別疾患の新要件該当性を洗い直し(本年(2024年)12月予定)、その審議結果を「2026年度以降に反映させる」ことになります。

指定難病の新要件適用スケジュール(指定難病検討委員会8 241010)



その中で、仮に「●●疾病は新要件を満たさない。指定難病から除外する」などの結論が出される場合には、上述のような「経過措置をどう考えるか」「データベースへの情報格納をどう考えるか」などを難病対策委員会等で検討していきます。今後の動きに注目する必要があります。



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