既存指定難病の全身性強皮症やベーチェット病、再生不良性貧血など28疾患、診断基準や重症度分類をアップデート―指定難病検討委員会
2024.5.2.(木)
最新の研究結果等を踏まえて、すでに指定難病に指定されている「原発性抗リン脂質抗体症候群」や「全身性強皮症」、「ベーチェット病」、「遺伝性自己炎症疾患」、「特発性拡張型心筋症」、「再生不良性貧血」、「自己免疫性後天性凝固因子欠乏症」、「ライソゾーム病」など28疾患について、診断基準や重症度分類などの見直しを行う—。
4月25日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」で、こうした点が概ね了承されました。
さらに、「診断基準」「重症度分類」の見直し論議が続きます。
最新研究を踏まえ、既存指定難病の診断基準・重症度分類の見直し論議続く
国の定めた以下の要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況に鑑みて、重症の場合に医療費助成が行われます(要件の整理明確化論議に関する記事はこちら)。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している
「がん」「感染症」など他の施策・支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しませんが、「▼髄膜▼脳▼脊髄▼脳神経▼その他の中枢神経系―に発生した腫瘍は、良性であっても『がん登録』の対象となり(がん登録推進法施行令第1条第2項)、指定難病には該当しない」、「それ以外の部位に生じた腫瘍は、良性であれば『がん登録』の対象にならず、指定難病に該当する可能性がある(他の要件を満たすことが必要)」、「ウイルス等感染が原因となって発症する疾病については、原則として該当しないものとするが、一般的に知られた感染症状と異なる発症形態を示し、症状出現の機序が未解明なものなどには個別に検討する」など、判断基準の明確化が随時行われてきています(関連記事はこちら)。
疾病が指定難病の要件を満たすか否かは、研究班や学会の提出した情報・推薦をもとに、専門家で構成される指定難病検討委員会で判断されます(2015年1月実施分:110疾患、2015年7月実施分:196疾患(関連記事はこちら)、2017年4月実施分:24疾患(関連記事はこちら)、2018年4月実施分:1疾患(あわせて5疾患を他の指定難病と統合、関連記事はこちら)、2019年7月実施分:2疾患(関連記事はこちら)、2021年11月実施分:5疾患(関連記事はこちら)。さらに、3月28日の会合では(1)LMNB1関連大脳白質脳症(2)原発性肝外門脈閉塞症(3)出血性線溶異常症(4)ロウ症候群(5)PURA関連神経発達異常症(6)極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(7)乳児発症STING関連血管炎—を指定難病に追加する方針が固められています(関連記事はこちら)。
これら指定難病に罹患する患者のうち、一定の「重症基準」を満たす患者(重症患者)については医療費助成が行われています。
4月25日の会合では、既存の指定難病のうち次の28疾患について、最新の研究成果などを踏まえて「診断基準」や「重症度分類」などの見直しを行うことが了承されました。例えば、中條・西村症候群では、最新研究により原因となる遺伝子変異が明らかにされたことを踏まえ、診断基準のアップデート等がなされています。もっとも、委員からは「さらなる記載の明確化」を求める声なども出ており、今後、厚生労働省と研究班とで最終調整が行われます。
【免疫疾患】
▽原発性抗リン脂質抗体症候群
▽皮膚筋炎/多発性筋炎
▽全身性強皮症
▽シェーグレン症候群
▽ベーチェット病
▽TNF受容体関連周期性症候群
▽家族性地中海熱
▽中條・西村症候群
▽IgG4関連疾患
▽遺伝性自己炎症疾患
【循環器疾患】
▽特発性拡張型心筋症
▽拘束型心筋症
▽肥大型心筋症
▽巨大静脈奇形(頚部口腔咽頭びまん性病変)
▽巨大動静脈奇形(頚部顔面又は四肢病変)
▽クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
▽ウィリアムズ症候群
【血液疾患】
▽再生不良性貧血
▽自己免疫性溶血性貧血
▽発作性夜間ヘモグロビン尿症
▽特発性血小板減少性紫斑病
▽後天性赤芽球癆
▽自己免疫性後天性凝固因子欠乏症
【代謝系疾患】
▽ライソゾーム病
▽副腎白質ジストロフィー
▽ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを除く)
▽ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症
▽大理石骨病
●見直し案はこちら(記載の修正がなされる可能性あり)
今後も、内分泌疾患や遺伝子疾患などについて、診断基準等のアップデートに関する審査が継続されます。
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